呼吸法で筋肉・内臓・心を整えよう

呼吸法で筋肉・内臓・心を整えよう

呼吸をエリアで分けるという考え方があります。最大に息を吸った状態(最大吸気点)をエリア1、その手前をエリア2、ほどよく力が抜けた状態の呼吸をエリア3、これ以上吐けないという状態(最大呼気点)をエリア4とします。体調や体質の管理を図る上で最も重要なポイントは、ふだんの呼吸の中心がどの呼吸エリアにあるのか、ということです。


はじめに

人間は息を吸えば体が膨らむ力が生じ、息を吐けば体がしぼむ力を生じます。体調を崩す人のうちかなりの数がエリア2や1、つまり吸気優位(息を吸う力が強くなっている)の状態で息を吸ったり吐いたりしているのです。

緊張したときに息を吸いますか、それとも吐きますか? 痛いときに息を吸いますか、吐きますか?あるいは戦闘モードになったときは?危険を感じたときはどうでしょう。

つまり人間は、緊張する状態のときには息を吸うという習性を持っているのです。とくに現代のような緊張を強いられる機会の多い社会では、同時に息を吸ってしまう機会が多い社会、とも言い換えることができます。息を吸うと体には膨らむ力が働きます。常に膨らむ力が働くと弊害を生んでしまうのです。

エリア3の状態を呼吸のニュートラル状態ともいいます。ニュートラルな状態は、筋肉や関節、神経の働き、内臓の働き、免疫、循環、精神状態を調和状態へと戻す働きをし、その人のちょうどよいところに治まるようにする力が発揮できるところです。

筋肉、関節、内臓などを一つひとつ見るというよりも、それらを包括した存在である呼吸という視点から全体をマネジメントしていくことが、呼吸を整えるということの特徴です。

筋肉について

体が内側から外側へと張られるような膨らむ力が生じ続けている状態で筋肉を働かせようとすると、筋肉は常に膨らむ力の干渉を受けてしまい、正常に伸びたり縮んだりという運動ができなくなってしまいます。正常に運動ができなくなると筋肉は硬くなりやすくなり、また使えない筋肉が増えてしまい筋力も落ちてしまいます。

ギックリ腰や首の寝違えなど頻繁に突発的な筋肉の痛みに襲われる人、寝ても疲れが取れない人、快復力が遅い人などは、この状態に陥っているおそれがあります。わかりやすくイメージすると、動こうとしているのに後ろから服を常に引っぱられている状態です。その状態でいると動きづらく不安定で、ストレスを感じてしまうでしょう。

関節について

筋肉が正常に伸びて縮むという運動ができなくなると、当然質の悪い筋肉になります。関節というのは筋肉によって動かされていますので、質の悪い筋肉では質のよい関節の動きができません。つまり、関節の動きもぎこちなくなってしまいます。

呼吸と関節というのがどうしても結びつかない人も多いと思いますが、ふだんの呼吸状態が吸気優位になり、常に体に膨張する力がかかってしまうと関節の動きも低下してしまうのです。

神経について

筋肉が正常に運動できなくなり、関節の動きもぎこちなくなると、同時に神経の動きも低下します。神経も興奮状態が続き、とくに重要なのは痛みを感じやすくなるということです。不特定多数の場所にいつも痛みを感じていたり、あるところの痛みが治まったと思えば、違うところが痛み出すというような人は、この状態にあたるおそれがあります。

内臓について

内臓は呼吸の膨らむ・しぼむという動きに影響されて、直接的に運動をさせられていますし、内臓自体も動いてその働きを自動的に補正する役割があります。その内臓にも膨らむ力が常にかかってしまうと、その力が内臓の働きへの干渉となり、思うように運動できなくなってしまいます。

内臓の中でもとりわけ腸は、免疫と深い関係があるといわれています。膨らむ力が常にストレスとしてかかり、腸が適切な運動ができないと、腸の働きが低下し、結果として免疫力も低下してしまいます。

精神について

体の働きが総合的に低下すると、体に余裕がなくなります。体に余裕がなくなれば、精神にも余裕がなくなってしまいます。仕事において集中力がもたない、発想力がなくなった、焦りや不安などが常に強いというような場合には、体に余裕がなくなっているおそれがあります。

以上のように呼吸状態によって膨らむ力がかかり続けるというのは、筋肉・関節・神経・内臓・免疫・精神というように、人間に関わるほとんどの働きに極めて重要な要素として影響していることがわかります。体調が悪い、集中力がもたないといった体の悩みの多くは呼吸が深く関係しているのです。

人は不調な部分しか見ませんが、そのベースには呼吸という問題があります。呼吸をいかに改善していくかが、軽くて楽な体を手に入れるための秘訣なのです。

息を吸う方が優位になり膨らむ力が問題となるならば、吐く息が優位になりしぼむ力がかかり続ける場合はどうでしょうか。実は人間は息を吸いたいという生命維持に関わる根源的な欲求が強いため、吐く息が優位になることはまずないのです。

吐く力とお腹の癖

不調を抱える人たちの呼吸を見ると、共通点があることがわかります。それは息を吐くときのお腹の動きです。本来は息を吐くと、呼吸エリアの3,4で息を吐ききろうとします。胃の部分が柔らかく、下腹部がへこむ動きが出るのが通常なのです。しかし慢性的に不調な人は、息を吐ききろうとすると胃の部分に力が入り、下腹部が膨らむ動きが出るのです。

下腹部がうまく使えない人は、胃の部分を緊張させる癖をもっているということになります。ためしに深呼吸をしてみましょう。吐ききるときに胃に力が入りませんか。下腹部が膨らんでいませんか。この癖があると日常的に少し動くだけで息が止まりやすくなります。するとスポーツなどでも力みが出て、疲れやすくもなってしまうのです。

女性の場合、女性特有の症状につながるおそれもあります。お腹は女性にとって重要な部分です。男性以上に注意が必要となるのです。

チェックするには深呼吸したときに自然に下腹部がへこむかを確認してください。不調を繰り返す人は下腹部を膨らませることはできますが、へこませることができない特徴を持っています。ぜひ一度、お腹が息を吐くときの癖をチェックしてみることをおすすめします。



元記事「呼吸法で筋肉・内臓・心を整えよう」は2017年2月7日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。

呼吸法で筋肉・内臓・心を整えよう | ビジネスライフ(BUSINESS LIFE)

https://business-life.jp/mental/2961

「なにもしていないのに調子がいい」(著:森田敦史)より ストレスから現代人は息でパンパンに膨らんでいる 呼吸をエリアで分けるという考え方があります。最大に息を吸った状態(最大吸気点)をエリア1、その手前をエリア2、ほどよく力が抜けた状態の呼吸をエリア3、これ以上吐けないという状態(最大呼気点)をエリア4とします。体調や体質の管理を図る上で最も重要なポイントは、ふだんの呼吸の中心がどの呼吸エリアにあ

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