太陽光が当たるだけでセルフクリーニング!?光触媒とは？をわかりやすく解説

光触媒とは

触媒とは、物体そのものの変化はありませんが、化学反応を速く進めることができるもののことで、光触媒とは、太陽光などの光を吸収することで化学反応を起こしやすくする（触媒作用）素材のことを言います。光触媒の作用を起こす物質はいくつか種類がありますが、そのなかでももっとも生活に身近なものが「酸化チタン」です。

なお、酸化チタンは「二酸化チタン」や「チタニア」とも言われ、食品添加物として白い着色料としても用いられたり、紫外線を吸収するので化粧品のファンデーションにも使われていたりします。

光触媒の効果

酸化チタンを光にあてることで起きる光触媒の主な効果は「酸化分解」と「親水性」です。

酸化分解のしくみ

酸化チタンに光があたると、電子と正孔が発生します。そうすると、空気中の電子と酸素、水と正孔が各々に反応し、酸化チタンの表面にスーパーオキサイドアニオンラジカル、水酸化物ラジカルという分解力を持った活性酸素が発生。これによって、抗菌、ニオイの除去、汚れの分解ができるのです。

親水性のしくみ

酸化チタンに紫外線があたることで、酸化チタンを構成している酸素と空気中にある水が反応し、酸化チタンの表面に水と馴染みの良い親水基（-OH）ができます。親水基ができた表面は水に濡れやすくなりますが、水が汚れの下に入り、汚れを浮き上がらせるので、汚れが落ちやすくなるのです。

光触媒のおもなはたらき

1️⃣空気をきれいにする

強い酸化能力を持つ特性から、大気中の窒素酸化物や硫黄酸化物などの有害物質を酸化分解します。

2️⃣汚れを浮かす

光触媒には有機物質を分解する効果があります。塗装した表面に付着した汚れを浮かして、水と一緒に洗い流しやすくする働きがあります。

3️⃣においを取り除く

酸化チタンに光が当たると、強い酸化力が生まれてにおい成分を酸化分解します。

4️⃣曇りを防止する

親水性の高さを利用して、ミラーやガラスの表面を曇りにくくする効果があります。

5️⃣除菌や抗菌の効果がある

光触媒が加工された表面に光が当ると光触媒反応により酸化力の高い活性酸素種が生じます。

6️⃣水質の浄化ができる

光触媒に太陽光が当たると、表面で化学反応を促す作用が起きます。そこで発生した活性酸素が有機物などを分解し、水を浄化します。

光触媒はいつ発見されたの？

光触媒のもとになる効果が発見されたのは1967年のことです。当時、東京大学の大学院生だった藤嶋昭氏と本多健一助教授が、酸化チタンと白金を電極にして電解液に浸し、紫外線を照射する実験を行なっていたところ、水が酸素と水素に分解される現象を発見しました。この現象は「本多-藤嶋効果」と名付けられ、1972年に学術誌「Nature」に掲載、1974年には朝日新聞の一面トップを飾りました。当時はオイルショックの真っ只中で、世界中が石油にかわるエネルギーを探していたこともあり、大きな注目を集めることになったのです。しかし、太陽光のうち、紫外線のみ有効活用となる方法であったため、大量生産することができず、さらにコストもかかるため研究は停止状態に…。

その後、1989年に転機が訪れます。研究室へ新たに加わった橋本和仁氏が汚れたトイレの便器を見て、「光触媒の酸化チタンには強い酸化作用・分解作用がある。これをトイレの黄ばみとなる原因菌も分解できないだろうか」と考えました。そこから、ツテをたどり、TOTO株式会社（当時は東陶機器株式会社）との共同研究が始まったのです。

研究開発を続ける中で、1993年には、抗菌作用を持った光触媒タイルの実用化に成功し、さらに光触媒の効果を発見します。それが「超親水性」という現象です。これは、酸化チタンに紫外線を照射すると表面に水酸基が生成され、水に馴染みやすくなり、水をかけると薄い膜となって流れるというもの。この現象によって、汚れが水膜に浮かび、簡単に洗い流せるセルフクリーニング効果を発揮するのです。この技術は、六本木にある東京ミッドタウンのガラス天井や東京駅八重洲口にあるグランルーフなどにも採用されています。

生活に身近な光触媒の使用例

⚫︎洗濯用洗剤
光触媒は建材や空気清浄機など幅広く利用されていますが、もっとも身近なものといえば洗剤だと言えるでしょう。光触媒を含む洗濯用洗剤は、衣服を洗濯して太陽の光のもとで干すと、ニオイや化学物質、ウイルスなどを分解し、高い抗菌効果を発揮します。

⚫︎ストッキングやインナーウェア
光触媒を応用したインナーやストッキングも。抗菌や消臭などの効果で快適に着用できます。なお、酸化チタンは無害ですので身体に触れても問題はありません。

⚫︎空気清浄機や冷蔵庫など、家電類
ウイルスや有害物質などを酸化分解したり、無害化したりする性質を利用し、空気清浄機にも活用されています（製品により異なります）。また、冷蔵庫内を光触媒でコーティングすることで、消臭や防カビができ、食品の鮮度を保つことができる効果も。

光触媒と私たちの生活のこれから

窓ガラスやミラー、建物の外壁、家電や衣類に至るまで、幅広いシーンで使用されている光触媒。最近では、光触媒で水を分解して水素をつくる研究が進められており、環境問題の課題解決になるのではと期待されています。2024年には、光触媒で脱炭素エネルギーの水素を効率的につくる光触媒システムを開発した信州大学の堂免一成特別特任教授が、ノーベル賞の登竜門とも言われている英国クラリベイト引用栄誉賞を受賞しました。光触媒を使った技術は今後さらに進化を遂げ、私たちの生活を支えていく重要な技術になっていくのではないでしょうか。

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