若手職員が“先生”に!生徒と一緒に電気を学ぶ「特別講座」をちょっぴりのぞいてみた!

更新日:2024.02.18投稿日:2024.02.18

若手職員が“先生”に!生徒と一緒に電気を学ぶ「特別講座」をちょっぴりのぞいてみた!

日本電気協会中部支部では、年に6回、電気業界で働く若手職員が高等学校で教鞭をとり、「電気の魅力を伝える」ための特別講座を実施しています。2023年12月18日、愛知県にある岡崎北高校で特別講座が実施されると伺い、WattMagazine編集部も参加させていただくことに!和気あいあいとした教室で行われた電気の魅力たっぷりの講義内容をレポートします。

先生は若手社員。電気の魅力を伝える講義に編集チームも参加!

日常の中でとても身近なはずなのに、意外と知らないことも多い「電気」と「電気のお仕事」。

日頃から目に触れている電線はどんな役割を担っているの? 電気はどのようにして手元に届くの?そうした小さな疑問について、中部電力パワーグリッド株式会社(以下、中部電力PG)と日本ガイシ株式会社、それぞれの企業で活躍中の若手職員さんが、愛知県立岡崎北高校を訪れ、放課後に興味を持って集まってくれた理系志望の高校生20人に向けて特別講座を行いました。

テーマは3つ。普段はなかなか触れることがない、そして教科書にはない電気の世界のはなし。あなたも少し、覗いてみませんか?

1時間目〜中部電力PG・野村先生による講義「電力の系統運用とは」

はじめに登壇したのは、中部電力パワーグリッド株式会社で系統運用部に所属する、金属12年目の野村先生です。野村先生はなんと、岡崎北高校のOBなのだそう。和やかな雰囲気の中、1限目が始まりました。

野村先生
「山から海、街から村まで、北は北海道から南は沖縄まで。電気がつながっているネットワーク全てを、私たちは電力の系統と呼んでいます。電気は非常に高圧ですが、日常生活の中で安全に利用するには、100Vまで落とさなくてはなりません。

電気回路は高速道路に例えるとわかりやすいんです。たとえば、名古屋から大阪に行きたいとしましょう。目的地近辺で高速道路のインターチェンジを降り、一般道を走って、小路を通って目的地に到着。これを電圧視点で話すと、高速道路は非常に高い電圧(特別高圧)でインターチェンジを降りたら電圧が変わって一般道(高電圧)に入り、最後は小路(低電圧)に入って、電柱の上を通っている線路から目的地(各ご家庭、施設など)へ電気が届くイメージです。

電力系統には非常に多くのスイッチが付いております。もし、どこかで電気が止まった場合、このスイッチの入り切りによって異常のある個所を切り離すことで別の正常なルートを確立し、再度、利用できる状態にします。私が所属する系統運用部では、このように電気を遠隔でコントロールして流れを変えるのがお仕事です。

電力を安定して供給するには、周波数を一定の状態に保つ必要があります。この作業を継続的に続けるのが電気の系統運用の仕事のひとつです。電力の系統運用では、次の3つを行っています。

  1. 電力の流れを調整する・・送電ルートと電力量の管理、停電をはじめ、故障発生時の対応
  2. 電力の品質(周波数)を保つ・・停電を防ぐために周波数を一定に保つ
  3. 電力の品質(電圧)を保つ・・電圧が高くなると機器の故障、感電の可能性があり、低すぎると機器が停止するため、一定に保つ

雷が発生すると停電が起きやすくなるのは、なんとなく予想できますよね。雪も送電線に積もるのでこの時期は大敵です。様々な危険を伴いながら、電力が手元に届いているのです。
また、停電が発生した際は次のような5つの流れで電気の流れを調整します。

電気は基本となる60Hz(中部エリア)の周波数をもとに、常に需要と供給のバランスを保たなくてはなりません。周波数は天秤にたとえることが多く、次のようなイメージです。

天秤のほかによく例えられるのが自転車。自転車は平面で漕いでいると一定のスピードで進みますが、上り坂だと力が必要になってスピードが遅くなります。それは負荷がかかっているということ。つまり、エネルギーが強くなるため、回転が遅くなる。それは電気で例えると、周波数が低いということなんです。電気としては、非常に品質が悪い状態になります。

家庭で利用できる電圧は100V、200Vと決められていますので、時間や季節によって変動する電圧を機器で下げて調整します。系統運用の仕事は電気を安全かつ安定的に使えるようにするという、非常に重要な任務を担っているのです」

2時間目〜日本ガイシ・林先生による「マニアックな高電圧と絶縁の世界」

次の講義は日本ガイシ株式会社の林先生による「マニアックな高電圧と絶縁の世界」について。林先生は入社3年目、送配電設計グループに所属しています。

林先生
「電圧は『電気を送る力』、電流は『電気の流れる量』、電力は『単位時間あたりのエネルギー量(電圧×電流)』。それでは、高電圧とは具体的にどのようなものでしょうか? 高電圧は国の技術基準で交流600V以上7,000V以下、直流では750V以上7,000V以下と定められています。

身近なモノだと、スマホの充電器(USB)が5V、家庭用コンセントが100V、AEDが1,200〜2,000V。何となく想像はできるでしょうか? 高電圧は危険というイメージが強いのですが、ホコリを集める集塵機やガソリン車のエンジン点火装置、電力の送電など、生活に欠かせないものに多く利用されています。

高電圧には問題点が2つあります。意図しないところに電気の道ができてしまう=放電すること、一つが電気の通り道を遮断すること(絶縁)、そしてもう一つが絶縁できなくなり、電気が流れること(絶縁破壊)です。

日本の送電線の電圧は66,000V〜500,000V。電気は何本もの電線を伝って私たちの元に届くのですが、それを支えているのが鉄塔や電柱です。しかし、そのまま電線がつながっていると、高圧電流が鉄塔や地表に流れてしまい、非常に危険。それを防止するという重要な役割を果たしているのが「がいし」です。鉄塔にがいしを取り付けることで、電線と鉄塔の間に電気が通るのを防ぎ、次の電線に電気を伝えることができるのです。がいしは、用途に応じてさまざまな形がありますので、皆さんも街中で少し空を見上げて、電線を観察してみてくださいね」

3時間目〜日本ガイシ・馬場先生による「電力用蓄電池でいい未来が見えてきた」

本日最後の講義は日本ガイシ株式会社の馬場先生による「電力用蓄電池でいい未来が見えてきた」について。入社2年目の馬場先生は、ES事業部技術部システム設計グループに所属し、NAS電池システムの設計に携わっています。

馬場先生
「いま、地球規模で気候変動の問題に直面しています。温室効果ガスが温暖化の原因となり、地球の気温に影響を与えているのですが、2100年には今より5度も平均気温が高くなると予想されています。再生可能エネルギーは二酸化炭素の排出量が圧倒的に少ないことがメリットですが、環境に左右されてしまううえ、欲しい時に足りなかったり、不要な時に余ってしまったりするという欠点も持ち合わせているんです。

そこで、これらの課題を解決し、持続可能なエネルギー開発を行うために、2002年、日本ガイシが初めて商用販売したのが大容量の2次電池『NAS電池』です。2次電池とは、何度も繰り返し利用できる電池のことで、800kWのNAS電池であれば、1日約500世帯の電気を蓄積することができます。

電力の供給が多い時はNAS電池に電気を貯めることができますし、貯めた電気は必要な時に使うことができます。NAS電池があることで、不安定な自然エネルギーの出力を安定化させることができるのです。

わたしはまだ 2 年目ですが、このような様々な技術を日々、体感しながら、安心・安全・安定して電気を供給できるしくみづくりに携わっています」

「疑問に思っていたことを知ることができた。電気って面白い!」

学生さんたちは、今回の特別講座で初めて耳にする話も多かったようで、みなさん、真剣に話を聞いていました。今まで電気にはあまり興味を持っていなかったという学生さんからは「電気がどのように供給されているかや、存在すら知らなかったガイシについて知ることができてとても面白かった。」との感想もいただきました。

普段から当たり前のように利用している電気は、このような企業、技術者によって安全に届けられていること、そして、未来に向けてさまざまな技術が開発され続けていること…。電気の話は知れば知るほど興味深く、編集チームも学生さんたちに混ざりながら「すごいなあ、かっこいいなあ」と感嘆の声を漏らしていました。この簡易レポートで、少しでも電気の世界に触れ、そして興味を持っていただければ幸いです。

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