現場インタビュー
関西電気保安協会の若手ホープが語る、「25歳の僕が見つめる電気業界の未来」
「電気業界で働く人は40代や50代が多そう…」なんとなくですが、そんなイメージを持っている人も少なくないのでは。しかし、そんなことはありません! 毎年、多くの若手がこの世界の扉を叩き、切磋琢磨しながら働いているからです。その一人が関西電気保安協会の“若手ホープ”里本樹さん(25歳)。18歳で入社し、今年で8年目。今回は里本さんに、電気業界の現在、そして未来について伺いました。実務経験を積む中で気付いた、働く上で大切なこととは?
目次
入社して一番の困難は「電験三種」の資格試験。先輩の支えで難関を突破!
――里本さんは現在、関西電気保安協会で電気主任技術者として働いてらっしゃいますが、具体的な仕事内容について教えていただけますか?
「現在は、『自家用電気工作物』の点検業務を担当しています。自家用電気工作物とは、600Vを超える電圧を受電して電気を使用する設備を指し、学校や工場などの大きな建物に電気を供給するうえで必要なものです。この電気設備に故障や欠陥があると、事故が起きる原因となるため、定期的に点検をしなければいけません。つまり私の仕事は、みなさんが安心して電気を使えるよう、電気設備を見守ることです」
――縁の下の力持ちというお仕事ですね。入社から現在まで、どのような軌跡を歩まれたのでしょう。
「2013年に工業高校の電気科を卒業し、18歳で関西電気保安協会に入りました。自家用電気工作物を扱う電気主任技術者になるためには、『第三種電気主任技術者(電験三種)』という資格が必要ですが、この資格試験は“電気の司法試験”と呼ばれるほど難しいもの。そのため、入社してか働きながら必死になって試験勉強をしました。そして、4年目で念願の合格を勝ち取りました!!」
――おめでとうございます!
「ただ、資格だけ取得すれば良いわけではなく、実務経験も必要となります。僕の場合、5年の経験を積まなければならず、この期間は先輩の補助員として、経験を積みました。そして、2019年には担当できる設備限定付きの保安業務従事者に、そして本年2020年には限定解除の保安業務従事者に昇格。これにより自家用電気工作物の保安管理ができるようになりました。僕らの世界では『保安業務従事者』になって、やっと電気主任技術者として一人前のスタートが切れるという認識です」
――入社して8年目(2020年9月時点)でやっと一人前。長い道のりでしたね。その間、一番の苦労は?
「やっぱり、電験三種の試験勉強は辛かったです…。しかし、資格の取得は先輩方も歩んできた道でもあるので、避けては通れません。勉強は本当に大変でしたが、周囲の応援がとにかくありがたかったですね。会社に残って勉強していたら、先輩の1人が勉強に付き合ってくれたことも。あっ、試験で思い出しましたが、試験1週間前に、先輩から『ここは試験に出やすいから覚えておくように』とアドバイスをもらったら、実際にその問題が出たんです! そういう支えがあったからこそ、乗り切ることができたんだと思います」
18歳で社会に出て、それなりに経験を積み、一人前の男になった。
――感動的なエピソードですね! その他に、仕事に関して思い出深いエピソードはありますか?
「これは入社4~5年目の出来事ですが、当時、高低圧の絶縁監視装置を多数設置しているお客さまを担当していた時に、お客さまからある日、予算見直しのため契約を解除したいと言われてしまって…。契約が解除されてしまうと、関西電気保安協会としては大きな痛手になってしまう。これはピンチ!ということで、まずは課長や係長に相談しました。そこで上司から、先輩とタッグを組むよう言われ、2人でお客さまの元へ何度も足を運び、『さらに高度な装置を使ってみてはどうでしょう?』といった提案や説明を地道に続けた努力が実って、契約を更新していただくことができたのです」
――自分を成長させてくれる経験でしたね。それはおいくつの時でしたか?
「22、23歳の時ですね。高い金額の契約でしたのでめちゃくちゃ緊張しました。この頃はまだ経験も少ないですし、自分の引き出しの中身もほぼゼロに等しい状態。ただ、交渉中に話が止まってしまうとダメだと知っていたので、交渉材料をしっかりと準備して臨みました。そうすることで相手に『この人なら安心』という印象を与えられますから。そのおかげもあって、最後は『わかった』と言っていただくことができました。この経験を通して、『お客さまの要望に応えていくこと』『懇切丁寧に説明すること』がどれだけ大切かということを実感しましたね。」
――その若さで自分の足りない部分を冷静に見極め、判断するなんて素晴らしいですね。
「18歳から社会に出て、それなりに経験を積んできました。それが役に立ったのかなと思います」
――(隣に座っている)川村さんにもお伺いしますが、里本さんの良さって何だと思いますか?
「里本くんは若手のホープと言える存在。真摯に仕事と向き合い、先輩の背中を見ながら一人前になりたいという強い思いを抱いて日々働いています。そんな彼を見ていると、責任ある仕事を任せても安心だなと思いますね。実は私にも同い年の息子がいますが、息子と比べると、本当にしっかりしているな~と感心しちゃいます」
近い未来、最新テクノロジーを使った保安管理業務へとシフトする。でも大切なものは変わらない
――里本さんが思う、この仕事の魅力って何だと思いますか?
「お客さまが喜ぶ顔が見られることです。僕の場合、同じお客さまのところへ定期的に訪問点検をしています。定期的に点検していると顔を覚えてもらえますし、点検後に『今日も異常ありませんでした!』と報告すると、お客さまから『安心した』という言葉をいだけます。これが仕事のやりがいにつながっているんです」
――お話が少し変わりますが、オフの日は何をされていますか?
「身体を動かすことが好きなので、ランニングや水泳をしてリフレッシュしています。あと、休日は子どもと遊びに出かけることも。2人目が生まれたばかりなので、仕事が休みの時は料理や家事もこなします。ワークライフバランスに点数をつけるなら? そうだな〜90点かな。ほぼほぼ満足していますが、休みの日もついつい仕事のことを考えてしまうので、完全にオフモードに入っているとは言えません。裏を返せばそれだけこの仕事が好きということですが。そこはマイナス10点かな」
――里本さんが思う、「電気業界が抱える問題点」とは何でしょう。
「年配の人が働いているイメージが強いことですね。僕がお客さんのところへ行くと、『20代の人が働いているとは知らなかった!』と驚かれることもあります。でも実際には、多くの20代が活躍していますから、もっと新鮮で若々しいイメージを伝わるように変えていきたいですね」
――電気業界の未来はどんな風になると思いますか?
「最近はAIやロボット、IoTなど新しいテクノロジーが注目されていますよね。そのうち、電気設備にもそうした先端のテクノロジーを導入して保安管理していく未来が到来すると思います。その未来に向けて、僕たち技術者も勉強しなくてはなりませんが、『お客さまに安心を届ける』という目的はこの先もずっと変わりません」
――最後の質問になります。里本さんにとって“電気”とは?
「“気難しいやつ”ですね。電気って目に見えないですし、危険な存在でもある。触ったら感電しますし、漏電火災など事故の原因にもなります。ですが同時に、生活になくてはならない存在でもある。そんな気難しいやつと一緒に付き合っていかないといけないんだなって思っています。経験を積みつつ、時代が変わる中で電気と一緒に成長していきたいですね」
<里本樹さんプロフィール>
関西電気保安協会所属。2013年入社。電気主任技術者として、自家用電気設備の点検業務を担当。多忙な日々を送る中、課題に対して積極的に取組む姿勢が評価され、周囲からの信頼の厚い若手の有望株。プライベートでは、2児のパパとしての顔も。所有資格は、第3種電気主任技術者、第1種電気工事士、2級電気工事施工管理技士。
<取材・執筆>
野田綾子