有資格者が簡単に解説する「電験三種」の試験の中身

有資格者が簡単に解説する「電験三種」の試験の中身

電気保安には欠かせない国家資格である「電験三種」。名前は聞いたことがあっても、試験の内容までは知らない方も多いかもしれません。今回は、有資格者の僕が、なるべくわかりやすく解説します。


そもそも電験三種とはどんな資格?


第三種電気主任技術者試験は略して電験三種と呼ばれ、電験三種を保有している人を電気主任技術者と言います。工場やビルなどのように大きな電気を受電している施設には、電気保安の責任者として電気主任技術者が基本的には必ず必要です。また、電気事業法第43条第5項(電気に関する法律)でも、「事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、電気主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない」と定められています。この内容から電気主任技術者がとても強い権限を持ち、責任のある立場であることがわかるのではないでしょうか。

電験三種の試験の中身

電験三種を取得するには、「試験」か「認定」の2通りの方法がありますが、ここでは試験に関して説明します。
電験三種は誰でも受験可能な資格で、理論・電力・機械・法規の4科目を3年以内にすべて合格すれば資格を取得できます。マーク方式5五肢択一方式で、100点満点中60点以上で合格です(ただし年度により合格点数に変動がある可能性があります。)。それでは4科目についての内容をもう少し詳しく説明します。

理論
クーロンの法則などの物理学のような内容が主です。
それ以外に電気回路や半導体部品の原理なども出題されます。数式が多く並んでおり、数学が苦手な方は最初拒否反応を示してしまうかもしれません。大学でもこれらの内容は必修科目として多く取り上げられます。僕も学生時代、RLC回路やスターデルタ回路などにすごく苦しめられた記憶があります…。

電力
発電所の発電や送電原理が主です。この科目を勉強すれば、電気がどのような原理で作られているのか、送られているのかについて理解ができます。水力・火力・原子力など一般的に知られているものでイメージもしやすいことから、4科目の中では勉強の着手がしやすい内容の科目です。

機械
モーターや変圧器の電気的構造に関しての内容が主です。電磁力がモーター内でどのように働くか、そのイメージがつきづらく僕はとても苦戦しました…。さらに化学や情報関係など、少し基本の電気工学とは異なった内容の項目も試験範囲として含まれています。4科目の中でも一番広範囲の勉強が必要です。
そのことから一般的に電験三種の「鬼門」科目とも呼ばれ、恐れられる科目です。

法規
大きな電気を使う上で必要な法律に関しての内容が主です。もちろん法律ですので、市販されている分厚い法律が記載された書物の中から問題が出題されます。これを覚えるのは本当に大変な努力が必要です…。ですから、多くのひとは過去問や参考書に出題されている内容を覚えて試験に臨んでいるかと思います。また、そのほか電気保安の業務で実際利用する内容(電気設備の試験条件、設備に電気がどれくらい流れるかの計算など。)も出題されます。
法規科目は、4科目の中で一番実務に直結する科目です。

まとめ

電験三種の試験内容を簡単にご紹介しました。まずは日常の電気に興味を持ってからでも大丈夫です。そこでさらに勉強してみたいと感じた際にはぜひこちらの資格にトライしてみてください。

プロフィール

どわーふ

私立大学大学院(博士前期課程)卒業後、大手メーカーで電気部品の開発業務に従事。現在はとある施設にて電気主任技術者として高圧電気保安業務を担当している。また、フリーライターとして「電気主任技術者が運営する就活転職応援サイト」を運営中。」Twitterのアカウントはこちら

この記事のWriter

私立大学大学院(博士前期課程)卒業後、大手メーカーで電気部品の開発業務に従事。現在はとある施設にて電気主任技術者として高圧電気保安業務を担当している。
また、フリーライターとして「電気主任技術者が運営する就活転職応援サイト」を運営中。
サイトはこちら → https://denken.site/

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