家電王が伝授する 「家電を買うコツ」と 「電気業界で求められるスキル」

家電王が伝授する 「家電を買うコツ」と 「電気業界で求められるスキル」

2002年に『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝し、“家電王”の異名を持つ中村剛さんは、東京電力エナジーパートナーの社員。今までのお仕事で培ってきた家電の知識を活かし、動画マガジン「くらしのラボ」で家電の使い方を伝えたり、イベントに登壇したり、メディアの取材を受けたりと、さまざまな場所で活動されています。その背景には、みんなの暮らしを豊かにしたいという切実な思いがあったのです。このインタビューでは、中村さんの電気と家電への思いとともに、電気業界で働く人へのエールを語っていただきました。


家電の使い方を教えるショールームを開設し、家電王になるまで

――中村さんは、東京電力エナジーパートナーの社員として幅広く活動されていますが、電気業界で働こうと思われたきっかけはなんだったのでしょう。

 

「もともと大学では理工学部管理工学科で、数学、統計学を中心に学んでいました。その頃から技術的知識を活かし、社会の役に立てる電力業界でインフラの仕事をしたいと考えるようになり、東京電力を就職先として選びました。まだ技術営業と言う言葉が一般的では無い時代に、技術知識を活かした営業職を希望して入社したのですが、当初は技術職の研修を受ける流れでした。

 

それでも、配置先は問わないので営業職をやりたいと強く主張したところ、山梨県の身延町にある小規模な営業所へ配属されました。結果として良かったのは、小さな営業所だったため、さまざまな業務を経験できたことです。メインの仕事は電気工事店から受け付けた新築住宅の電気工事の申込に係る業務で、図面の確認、工程管理を行いました。さらに普通は、繁忙となることを理由に、この仕事と兼務することが少ない、電柱の移設業務にも同時に携わりました」

 

――山梨県・身延町の事業所の後は、どのようなキャリアを?

 

2年半ほど身延町で勤務し、それから甲府市の営業所へ異動。そして1年後、本店に配属されました。本店では市場調査課という部署に在籍し、そこで『電気をどのように売っていくか? 電気はどう売れたか?』という、いわゆるマーケティング業務を担当。およそ10数年間、試行錯誤を繰り返していましたね。

 

そしてその間、会社の制度を利用して、大学院修士課程へ進学。エネルギー・環境を対象とするシステム工学の専門家として著名な茅 陽一(かや・よういち)先生が東京大学を退官されて、慶応義塾大学大学院湘南藤沢キャンパスで環境テクノロジーグローバルシステムを教えていることを知っていたので、ピンポイントでそちらを目指しました。ちょうど、地球温暖化防止京都会議(COP3)が開催される年でもあり、先生の下でCOP3にも関係するCO2の排出削減に係ることを研究しました。研究の結果、産業用や業務用のCO2は規制等で削減できますが、家庭用のCO2削減はハードルが高いことがシミュレーションで分かったのです。

 

CO2を削減するには、省エネ(省エネルギーの略。限りある資源を大事にするために、エネルギーを効率よく使うこと)が必須。ただ、環境には良いとわかっていても、省エネって我慢を強いること。こまめに電気を消したり、何かの使用を制限したり…我慢ってなかなか持続するのが厳しいじゃないですか。家庭用のCO2を工夫一つで減らすことはできないかなと考え、思い至ったのが、家電をテーマにしたサービス提供を行うことでした」

――具体的に、どのようにして家電や電気の使い方を教えたのでしょう?

 

「銀座に東京電力のPR館があったので、そこを家電の使い方を教える場所に改築したのです。そしてリニューアルしたこのショールームを『くらしのラボ』と名付けて、家電の体験型ショールームとして家電の選び方や使い方を伝授する活動を続けました。ちょうどその頃、『TVチャンピオン』(テレビ東京)というあらゆる分野の達人たちが真剣勝負を繰り広げる番組で、家電の王者を決めると知りまして。「くらしのラボ」の活動を認知してもらう絶好のチャンスだと、思い切ってエントリー。そして、運よく優勝したのです」

 

――優勝なんて、すごいです!

 

「ありがとうございます。それから、引き続き銀座のショールームで2年勤め、埼玉県に異動。埼玉は新規住宅着工が多かったため、オール電化を勧める重要なエリアでした。

オール電化には興味が無いお客さまがほとんどですが、そこで、家電の知識を活かして、その地域、その家に住まう人たちの生活を想像し、ライフスタイルにフィットする提案をしたのです。たとえば、はじめから『台所で火を使う時、電気がいいですか?ガスがいいですか?』と聞くと、だいたいガスと言われてしまって、話が止まってしまうでしょう?

だから、私はそこで家電の話をするのです。みなさん家電には興味を持っていますので、耳を貸してくださるんですよ。たとえば、『家にエアコンありますか?』と聞くと、必ず『ある』と答えてくれます。そこからどんどん深掘りする会話を進めていくのです。

 

そうした話を加味しつつ、『台所でガスの火を使うと、室内気温が上がってしまいますよ、換気も余分にしないといけないですし』と伝えるんです。家電、家の構造、暮らし…ストーリー立てて話を引き出し、そこからオール電化を勧める理由を語る。そうすると、電気に興味を示し、オール電化をご希望いただけるようになるのです。なぜ良いのか、現在の暮らしをベースに理由を明確に伝えていくこと。つまり、そのご家庭にとって快適に暮らす方法を提案することが大事なのです」

 

――素晴らしいですね。現在は動画マガジン「くらしのラボ」のメディア運営をされています。

 

「はい。埼玉県勤務を経て、本店へ戻り、改めてお客さまに家電の選び方や使い方を情報提供する必要性を強く感じていました。その頃はもう、インターネットを中心に情報を取得する時代に変わっていましたから、ネットで情報発信をしていくべきだと考えまして。それには動画が一番だ!と、FacebookYouTubeにチャンネルを開設することを企画案として会社にプレゼンし、動画チャンネルくらしのラボをスタートさせたのです。あれから5年が経ちますね」

 

――先見の明があると言いますか、YouTubeが流行る前に着手されていたとは…!チャンネルを拝見しましたが、コンテンツも非常に充実していますし、ドラマ仕立てのものがあったりするなど、とても見応えがあり、面白かったです!ぜひ、もっと多くの方にご視聴いただき、家電を賢く利用しながら暮らしを豊かにしていただきたいですね。

家電王が伝授する、家電と上手に付き合うコツ

――家電を買う時に気を付けるべきポイントは何でしょうか?

 

「家電は暮らしを豊かにするものですから、自分の生活をイメージして家電を購入して欲しいですね。今って機能も豊富だし、デザインも含め、数ある家電から自分で好みのものを選べる時代。性能も大事ですが、インテリアに馴染むことも大事なポイント。ですから、自分がどんな生活を送りたいのかを想像しながら、ワクワクした気持ちで選んでいただきたいですね。

 

どの洗濯機を買うべきかと相談されたら? そうですね、質問した人にまずは乾燥機能がほしいかどうかを聞きます。答えがイエスだったらドラム式を勧める、という感じですね。縦型の洗濯機でも乾燥機能付きのものはありますが、ドラム式の方が洗濯物を跳ね上げるため、乾燥の仕上がりふっくらするんです。また洗濯をする上で、機械だけでなく、洗剤も重要なので、適した洗剤を選ぶことも大事なんです。適した洗剤を使えば、洗濯機がより力を発揮しますよね。このように、家電のことだけでなく、家電をどう使うかも合わせて考えることが重要です」

 

――買い替えのタイミングは、いつが最適なんでしょう。

 

「故障する寸前まで使う方がいますが、それはあまりオススメしません。というのも火災などの事故を引き起こす可能性があるからです。家電によっては、安全上、支障なく使用できる『設計上の標準使用期間』を表示しているものがありますから、必ずチェックして、その期間が過ぎたら買い替えを検討するのが良いです。だいたい、家電は毎年モデルチェンジをしていますので、タイミングを把握できれば値段も機能も納得感の得られるものが買えることもあります。そういう見極めもできるといいですよね。

 

もっと良いのは家電の耐用年数を考慮して、逆算して計画的に『いつ買い換えるか』を考えること。安全はもちろん重視すべきですが、やむを得ず買い換えるのではなく、ワクワク感を持って、晴れの日の気持ちで新たな家電を迎えましょう。それによってくらしの質がグンと向上しますよ」

これから電気業界に求められることは“提案する力”

――家電はどんどん進化していますが、未来の家電はどうなっていくでしょうか。中村さんの予想を教えてください。

 

「どんどん使い手のニーズに応えていくよう、進化していくでしょうね。たとえば、コロナ禍で家電に触れずに操作したいといったニーズを踏まえて、スマホやジェスチャーに従って動くといったように。個人的に最近、すごいと思ったのは、パナソニックの『オーブントースター NT-D700』 。なんと、状況に合わせて7,200通りの焼き方をしてくれるんです。このように、単純に動くのではなく、ユーザーのニーズに応じて動いてくれる家電が増えていくと思います」

 

――それはすごいですね。家電の進化とともに、電気業界も進化が必要だと感じます。そんな未来に向けて、電気業界ではどんなスキルが必要となるでしょうか。

 

「“提案する力”が求められると思います。電気を使うお客さまの暮らし方は十人十色です。ですから、お客さま一人ひとりの暮らし方に応じた提案をしなくてはなりません。たとえば、ご高齢の方だと腰に負担がかかるため、しゃがむのが辛いという方が多くいらっしゃいます。それなのに、コンセントは床下近くにあることがほとんど。だったら、コンセントをもっと高い位置に設置し、見栄えが悪くならないようコンセントカバーを付ける、という提案ができますよね。今まではみんなコンセントは床下近くに設置することが常識で、それを当たり前だと考えていましたが、本来はそこで暮らす人にマッチしたコンセントの位置があるんです」

 

――どうすれば住む人が快適に暮らしていけるかを提案する、ということですね。

 

「そうです。単純に電気を供給するだけでなく、電気を通してその人の暮らしをイメージしながら、豊かな生活にフィットする提案をして欲しい。ニーズは現場にあります。だからお客様の声を聞き、電気をどのように使うことができれば暮らしやすくなるかを考えてみてください。だって、私たちは電気のプロなんですから。電気のプロは電気の使い方を一番知っているはずでしょう?」

 

――ありがとうございます!!最後に、中村さんにとって家電とは?

 

「『TVチャンピオン』で優勝した時も最後にその質問をされたんです(笑)。その時、私は『人類を幸せにする魔法の箱』と答えました。今もその思いは変わりません。その魔法の箱を動かすために電気は必要不可欠です。誤解を恐れずに言うと、私は家電や電気に実はそれほどマニアックな興味はありません。興味があるのは人々の“暮らし”なのです。

 

家電を使って美味しい料理を作って幸せな気分になった、多機能の掃除を使って部屋が清潔になり、快適な暮らしを送ることができる――電気・家電によって暮らしを豊かにする。それを実現するために、真摯に電気、家電と向き合ってきました。そして、その暮らしを支えるツールが、家電であり、電気なのです」

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