人と仲良くなるには「時間」「同期」「互恵」の3ポイントが重要だった

人と仲良くなるには「時間」「同期」「互恵」の3ポイントが重要だった

インターネットやテクノロジーの発達により、24時間、世界中の誰とでもつながれる時代になりました。一方で、「一人ぼっちになるのが怖い」「いつも誰かとつながっていないと不安」など、新たな不安感に苛まれている人も増えているようで…。この記事では、年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライターにして、7万部突破の話題書『最高の体調』の著者・鈴木祐さんに科学的データに基づく、人と仲良くなるための3つのポイントを解説いただきました。


1.好意は「一緒に過ごす時間」で増える

人と仲良くなるために、第一に重要な要素が「時間」です。アイオワ州立大学のダニエル・フルシュカ氏は、2010年のレビュー論文で「良好な友人関係を保つためにはなにが必要か?」を調べ上げました。個人の性格やコミュニケーションスキル、社会的地位など、人間関係に欠かせない要素のなかから、重要度が低いものを取り除いていったのです。

結果、最後に残ったのは「一緒に過ごす時間の長さ」でした。「近接の原理」をご存じの方も多いでしょう。 50年以上前に社会心理学者のセオドア・ニューコム氏が発見した現象で、簡単に言えば「人間は近くに住む相手ほど好意を抱きやすい」というものです。隣県の人よりも隣町の人を、隣町の人よりも隣に住む人を、私たちは好ましいと思う傾向があります。その理由は簡単で、近くに住むほど接触の時間が増えるからです。

ポイントは「どれだけ顔を見たことがあるか」

心理学者のロバート・ボーンスタイン氏によるメタ分析では、「特別な刺激がなくても他者と接触する時間を増やすだけで好意は増す」と結論づけています。つまり、親密な会話を交わしたり、一緒にイベントに参加したりせずとも、シンプルに相手の顔を見る回数が 増えただけでも2人の仲は自動的に深まっていくわけです。

進化の過程を考えれば、当然の現象かもしれません。狩猟採集社会の小さなグループにおいては、わざわざ相手の性格やコミュニケーションスキルを審査する必要はなく、「どれだけ顔を見たことがあるか?」さえ判断できれば、その時点で相手が部族の一員である証拠が得られ、互いの親密さも判断できるようです。

ベストな接触回数は?

そのため私たちの脳は、相手の顔になじみさえあれば、反射的に警戒心を解くように進化してきました。よく知った顔を見るだけでも感情の「脅威システム」はオフになり、代わりに「満足システム」が

先のメタ分析によれば、この効果の影響が最大になる接触回数は10〜20回とのこと。このレベルを達成するまでは、まずは淡々と接触を積み重ねていきましょう。

2.「同じ行動」で自己肯定感は上がる

次のキーワードは「同期」です。

2016年、オックスフォード大学が「趣味で人間は幸せになれるか?」という問題について調査をしました。被験者は40代の男女が135人で、研究チームは実験のために「中年向けの習い事コース」を創設し、すべての被験者を「合唱クラス」「美術クラス」「創作文芸クラス」のいずれかに割り振りました。

7カ月後、クラスを終えた被験者を調べたところ、おもしろい結果が得られました。すべてのグループにおいて、人生の満足度・自分に対する肯定感の上昇、炎症レベルの低下といった変化が確認されましたが、なかでも「合唱クラス」に参加した人の改善値が飛び抜けて高かったのです。

「同期行動」は仲良くなりやすい

研究チームは次のように言います。

「合唱クラスの成績が良かったのは、ほかの活動よりも他者との関係を結びやすかったからだろう。みんなで歌うという行為が、他のグループよりも全体感を高めてくれたのだ」

この現象を、心理学では「同期行動」と呼びます。

その名のとおり他人と同じような動きをすることで、ナチスドイツ軍の一糸乱れぬ行進や北朝鮮で行われるマスゲームなど、集団の結束を高めるために昔から使われてきたテクニックです。そこまで行かずとも、かつて体育の時間で習ったラジオ体操や組体操なども同期行動の一種に入ります。

同期行動の選び方

信頼感の研究で有名なスコット・ウィルターマウス氏によれば、現代社会で同期行動を活かすには、次のポイントさえ押さえておけば問題ありません。

・全員が近い場所で行うこと
・同じタイミングで同じ行動をすること

この2つの条件が合えば、同期行動の内容はなんでも構いません。ランニングでもいいし、格闘技でもいいし、ジムで集団エクササイズをしてもいいでしょう。どれを選んでも親密さを高める効果は大きくなります。ただし、悪用すれば独裁国家のマスゲームのようになってしまう恐れもあります。

3.友情のコツは「利益の与え合い」

友情を築くための最後のポイントは「互恵」です。

簡単に言えば「好きな相手に利益をあたえることす。プレゼントで好きな異性の気を引こうとした経験は誰にでもあるでしょうが、ここでいう利益はもっと幅が広いものです。古代社会の友情について考えてみましょう。人間の認知が処理できる親友の上限が5人ならば、私たちの祖先は、いったいどんな相手を仲間に選んできたのでしょうか?

普通に考えれば、自分が生き延びる確率を高めるために、様々なスキルに対して分散投資を行ったことでしょう。狩りが得意な者、火を起こすのがうまい者、歌と踊りが達者な者、健康的な体を持つ者など、なんらかの得意分野を持った仲間が増えるほど、自分の遺伝子を後世に残す比率は高まるからです。

この見方からすれば、現代で有利なのは、お金を持っている者、社会的な地位が高い者、頭が良い者、人間関係のネットワークが広い者などでしょう。身もふたもない結論ですが、新約聖書にいう「与えよ、さらば与えられん」は世の習い。友情を育むには利益の与え合いが欠かせません。

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