【エッセンシャルワーカー対談 第二回】電気と教育の現場はDXが進む…? エッセンシャルワーカーの働く未来を考えてみた

【エッセンシャルワーカー対談 第二回】電気と教育の現場はDXが進む…? エッセンシャルワーカーの働く未来を考えてみた

新型コロナウイルスの感染拡大により、注目を集めている「エッセンシャルワーカー」。電気設備の保安点検を行う電気保安技術者は、エッセンシャルワーカーとして、多くの人々の生活を支えています。エッセンシャルワーカー同士が対談するこの企画、第二弾のテーマは“教育”です。 電気業界で研修を担当している立場と、大学で学生に教鞭をとる教授の視点、電気と教育の現場で働く両者から、互いの働く現場と今後、そして未来の教育のあり方について語っていただきました。


――角田さんが専門とする分野の一つはDX(※デジタルトランスフォーメーション)です。越川さんが所属する電気保安の業界では、DXがどれほど進んでいらっしゃるのでしょう。

 

越川さん「再エネ設備の増加、設備の高経年化など、電気保安に関する課題や状況を踏まえ、経済産業省のスマート保安官民協議会では、安全かつ効率的な産業保安を目指し、2025年の実現を目標に『電気保安分野 スマート保安アクションプラン』が発表されました。ここには、高度なセンサーやドローン、ビッグデータの活用で、課題解決をする、DXに関する項目が記されています。

 

まだまだ施策段階ですが、遠隔地にある電気設備の点検をする際にドローンを活用するという案が出ていますし、遠隔カメラを活用して、リアルタイムで経験豊富な人が経験の浅い人に適切な指示を出して、問題なく作業ができるようにするといったアイデアも実現に向けて取り組みが進められているんです。

 

とはいえ、点検や保安作業の全てをデジタルやテクノロジーが解決してくれるかと言われると、そうではありません。点検は経験がものを言う世界です。匂いや放電する音など、普段から五感をフルに活用して異常を検知して作業にあたっていますので、実はヒトが点検した方が精度は高いと感じています」

 

角田さん「話を伺うと、電気業界は一歩、一歩、着実にデジタル化が進んでいると感じますが、教育業界はまだ、全体的にデジタル化が遅れている印象です。もっとデジタル化を進め、最低限でも業務改善は実現しなければなりません。DXの推進には、技術とマネジメントの両立が不可欠ですが、日本人は技術開発に関して強みを持っているものの、マネジメント面がやや弱い。何のためにDXを進めるのか、DXの目的は? 最終目標は? 何を実現するために実践すべきか? これらを整理して適切に掲げることがDXを成功へ導く重要なポイントです。

 

今の人工知能は画像処理に強いですが、次に進化するのが音声です。数年後には、子どもと会話できる程度まで進化を遂げることでしょう。そこへさらにセンサーで匂いが解析できるようになれば、電気業界が飛躍的に変わるかもしれませんね」

 

安心・安全に電気をお届けするには、作業も安全第一に。

越川さん「匂いの分析が可能になる前に、キュービクル(高圧受電設備)で送られてくる異常を数値化し、それらをデータとして蓄積・分析していく必要があります。法律の中で点検回数は決められていますが、数値化や何らかの根拠を示すことができれば、点検方法自体は従来のものから変わるかもしれませんね。たとえばですが、警備会社のように、とある異常を検知したら駆けつけるとか。

 

今後は人間とデジタルの共存によって、電気設備の点検を効率化するようになるんじゃないかなと思います。また、デジタルが進化するにつれ、デジタルを活用できる人材も電気業界に必要になっていくでしょう。デジタルとヒトにしかできない技術を掛け合わせ、良い意味で、電気業界が活性化していくことを望んでいます」

 

――教育現場はどのように変化していくでしょうか。

 

角田さん「大学は今後、オンデマンド授業が主流になるでしょう。オンデマンド授業とは、教授が授業をしている様子を録画し、その映像を、学生は好きな時間に視聴するという方法です。

 

ただ、この方法は学生が能動的にならないとできないという懸念点がありますし、視聴すべき映像を溜め込んでしまい、それが学生の心理的な負担となってしまうことも考えられます。オンデマンド授業は、自分のタイミングでいつでも学べるのでスケジュールが調整しやすいこと、自分のペースで学べるので理解を深めやすいことがメリットですから、良いところを活かしつつ、心理的な負担をいかに軽減するかを議論していかねばなりませんね」

 

――小学校、中学校、高校の教育現場はどうなっていくでしょうか。角田教授のお考えを伺いたいです。

デジタル人材の育成に力を注ぐ角田さん

角田さん「小中高に関しては、知識だけでなく、社会性や道徳、コミュニケーションなど多くを学び、心を成長させる場でもあるので、基本的に、学ぶ環境は対面であるべきだと考えています。大学生の場合は、小中高と比べて心身ともに大きく成長していますから、デジタルをうまく活用するなど、教育現場を進化させていくべきでしょう。ただ、個人的には、『自分から学ぶ姿勢』を作るためにも対面がいいと思っています。直接的な対話によって、授業内容の浸透度や熱量も変わっていきますから」

 

越川さん「なるほど。何れにせよ、デジタル化はどの業界にとっても必須ですね」

 

角田さん「そうですね、これからのビジネス界ではITとデジタルの波を避けて通ることができません。いかにデジタルを活用し、ビジネスを成長させ、新時代を生き抜いていくかがカギとなりますので、私個人としては、若きデジタル人材の育成に重きを置いているのです。そうした思いから、今年度、『デジタル人材育成学会』を立ち上げました。エッセンシャルワーカーもデジタル分野も、共通するのは人材不足の解消と人材育成です。教育者として、時代に必要なスキルを伸ばしていくためにも、適切な教育の場を設けることを大事にしています」

 

――ありがとうございました、今回の対談は以上です。本日は興味深い話を伺うことができました!

 

角田さん「こちらこそありがとうございます。今回の対談を通して、電気の重要性を再確認しました。2050年に向けたカーボンニュートラルの取り組みで、電気自動車が今後普及していくと考えられますから、電気はますます重宝されるようになるでしょう。そうなれば、今よりさらに電気に注目が集まっていくはず。その最前線でご活躍されている越川さんとお話しすることができ、貴重な体験となりました」

 

越川さん「私もDXについてさらに深く学ぶことができましたし、実りある対談だったと思います。電気設備の保安点検は、つねに危険と隣り合わせです。だからこそデジタル化できる部分は率先して進めていかねばなりません。まだまだ伺いたいことが多く、時間が足りないくらいでした(笑)」

 

角田さん「それではまた、ぜひとも対談を…!」

第一回エッセンシャルワーカー対談はこちらをご覧ください。

【エッセンシャルワーカー対談 第一回】 電気と医療の現場で働く両者が気づいたインフラを支える仕事の共通点とは

https://www.watt-mag.jp/articles/266

新型コロナウイルスの感染拡大により、注目を受けた「エッセンシャルワーカー」。電気の現場で働く人はもちろんのこと、医療現場で働く人もまたエッセンシャルワーカーです。この2つの現場で働く両者が出会い、対談を実施。異なる現場で働くエッセンシャルワーカーが話し合う中で見出した共通点とは、何だったのでしょうか?

<取材・執筆>

野田綾子

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