電気機器の健全性はどう確認する?目的・タイミング・手法を解説!

電気機器の健全性はどう確認する?目的・タイミング・手法を解説!

業務や日常の生活で安全に電気機器を扱うには日々の健全性確認が欠かせません。しかし実際に仕事などで検査業務に携わっていなければ、必要な理由やタイミング、具体的な手法など知らないことも多いはず。そこで今回は電気機器の健全性を確認し、健全であることを証明する方法について解説します。


電気機器の健全性を証明するタイミングと目的とは?

電気機器の健全性確認が求められる場面は、製作工程で機器が完成したタイミング、機器の据付前や輸送後のタイミング、機器の性能維持や法要求による定期検査のタイミング、不具合が生じた際の点検や補修のタイミングなどが挙げられます。

機器の完成時には、寸法や性能が製作仕様に合っているか、顧客要求から外れていないか、通常想定される使用条件で安全性や性能が損なわれないかなどの視点で検査が行われますし、輸送中の思わぬ事故や衝撃で破損してないか、機器の受け入れ時や据付直前にも改めて検査が行われることも多くあります。さらに、通常使用中の定期点検であれば、完成時の性能や安全性が損なわれていないか、損なわれているとすればどの部品が悪いのか判別するために検査が行われますし、不具合による点検/補修時であれば、健全な部品と不具合部品の切り分けや補修後の合否判断を目的に検査が実施されます。健全性確認は目的により内容や要求レベルが異なるため、検査を行う際は何を目的とした健全性確認なのか、ということを頭に入れた計画と実施を心がけましょう。

検査手法①導通検査

電気機器の回路部分の健全性は導通検査によって確かめます。導通検査はその名の通り電気回路の導通性を見るための検査で、テスタなどの導通確認モードにて回路が繋がっているかを簡易的に確認するもの、具体的な抵抗値まで測定する検査に分かれます。抵抗値測定は機器の完成検査や定期点検などのタイミングで実施するケースが多く、回路規模に応じてほぼ0オームか数オーム程度であれば健全と判断します。導通検査は検査自体の負荷が非常に低く、突発的な不具合時の故障箇所と健全箇所の切り分けのような速度重視の一次確認として利用されることが多いものの、測定器は電気的には単なる抵抗負荷のため、何も考えずに測定すると回路の短絡や地絡、リレー回路の誤作動などを招く恐れがある点に注意が必要です。

検査手法②メガーテスト

導通検査とは対照的に、電気機器の絶縁性を確認する検査をメガーテストと言います。メガーテストでは電線と構造物間など本来絶縁されているべき箇所の抵抗値を測定し、その名の通りメガオームオーダー(10の6乗)の抵抗値があれば絶縁性があり、それ以下であれば絶縁性能が低下している(通称メガー落ち)と判断します。メガーテストにおける印加電圧は通常使用する電圧と同程度かやや高い電圧を使用するのが一般的ですが、高すぎる電圧を印加すると電気機器の故障を招く恐れがあるため注意が必要です。メガーテストも導通検査同様に簡単に検査が行えることから、簡易的な健全性確認の手法として広く使用されています。

検査手法③性能検査

電気機器の品質担保を目的に実施されるのが性能検査です。通常の使用条件で機器に要求される性能を問題なく発揮できるかを確認する検査項目の総称で、機器の用途によって具体的な検査内容は様々です。例えばモーターや発電機であれば、定格運転時に定格のトルクや出力を維持できること、洗濯機や電子レンジなどの家電であれば、洗浄性能や加熱性能が設計通りであることなどを確認します。導通検査やメガーテストに比べると検査自体のハードルが高い一方で、きちんと実施すれば機器として健全か否かをハッキリと証明できるため、機器完成時や定期点検などのタイミングに時間と労力をかけて行うのが一般的です。

検査手法④シーケンステスト

機器にシーケンス回路が使用されている場合、その動作はシーケンステストによって確認します。シーケンステストはリレーやタイマーなどの構成要素に対し、個々の部品が健全であるかはもちろんのこと、タイミング毎に動作する対象、各部品の動作開始および停止のタイミング、順序、動作時間などが思想通りかを確認します。製品として完成しているものであれば性能検査の一環として行われることが多いですが、ユーザーが設計・製作した個別回路であれば、自ら手順書や思想を整理してシーケンステストを行う必要があります。実際に末端の機器を動かせる状態であれば、各機器も含めて総合的に動作確認するのが一番ですが、機器を動かせない場合はリレーやタイマーなどのシーケンス回路部のみを検査することもあります。

検査手法⑤外観検査

簡易な健全性確認方法として、割れや傷、汚れ、欠け、ガタツキ、塗装不良などがないか確認する外観検査があります。検査の際は事前に確認するポイントをまとめたチェックリストを携行し、抜け漏れなく判断できるようにしておくと効率的です。検査自体が非常にシンプルなため特別な知識や技術がいらない一方で、明らかな欠陥をすぐに見つけられるため、機器の完成時だけでなく日常のパトロールの一環としても効果的な検査方法です。

まとめ

今回は電気機器の健全性確認について、目的やタイミング、手法に特化して解説してきました。実際に行われる検査の内容は機器の種類、メーカー、社内基準などにより異なるものの、今回紹介した内容を基本として覚えておけば問題はないと思われます。機器の検査は完成時だけでなく、日常の定期点検や不具合時など様々なタイミングで継続的な実施が必要なため、機器設計に携わる際はどこをどのくらいの頻度で点検するのか、また点検しやすい機構となっているか、といった視点も持っておいた方が良いでしょう。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計、など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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