IT技術と電気が導く明るい未来とは? 電気保安業界の働き方・未来予想図

IT技術と電気が導く明るい未来とは? 電気保安業界の働き方・未来予想図

5Gやブロックチェーン、IoTに人工知能…。新しいテクノロジーはすでに私たちの生活やビジネスに浸透し、多大な影響を与えていますが、このテクノロジーのウェーブは、電気の世界にも来ているようです。「テクノロジーの活用によって働き方が大きく変化するかもしれない」と語るのは、四国電気保安協会の福本康二朗さん。IoT技術を活用した設備監視装置とシステムを開発中の福本さんに、テクノロジーが電気保安業界にもたらすであろう将来の点検の在り方について語っていただきました。


IoT技術を活用した設備監視は電気業界が抱える人手不足問題を解決する(かもしれない)

――はじめまして、福本さん。WattMagazin編集部です。今日はよろしくお願いします!

 

四国電気保安協会の本部(香川県・高松市)所属の福本康二朗です。こちらこそよろしくお願いします」

 

――福本さんは四国電気保安協会で勤務をされて何年目ですか?

 

2006年に入協し、今年で15年目(20204月時点)をむかえます。工業高校の電気科を卒業した後、18歳でこの世界に入り、12年間は愛媛県で電気設備(自家用電気工作物)の保安管理業務を担当。この時期は愛媛県内にある様々な企業へ出向き、電気設備の点検作業をしていました。その後、2017年に高松市にある本部に転勤し、保安管理業務を行う現場のサポートや業務システムの管理を担当。2019年から技術センターに在籍しています」

 

――技術センターではどんなお仕事を担当されているのでしょうか。

 

「現在は新技術を取り入れた装置の開発を担当しています」

四国電気保安協会の本部所属の福本康二朗さん

――新技術というのは??

 

IoT技術を活用した設備監視装置とシステムを作っています。IoTとは、モノがインターネットに接続され、様々なデータを収集し、ネットワーク経由で遠隔操作も可能となる仕組みのこと。現在は、技術者が電気設備の設置された場所へ向かい、点検・計測をしていますが、設備監視装置があれば24時間365日遠隔で電圧、電流、温度、電力量などの現在値が計測できます。このようなIT技術と電気設備を組み合わせた技術をメーカー等と共に開発しているのです」

 

――IoT技術を活用した設備監視装置を導入することができれば、保安管理業務を担当する技術者の働き方も大きく変わるのではないでしょうか。

 

「そうですね。とくに大きく変わるのは、業務の効率化です。今は該当する現場で点検・計測作業をする必要がありますが、データ取得にも移動にも多くの時間がかかってしまう。しかし、随時データを取得することができれば、計測に要する時間はほぼなくなり、現場での作業も短時間で完了します。それに、現場での計測がなくなり感電の危険性も減少しますから、安全の観点でも大きな役割を果たしてくれるのです。

 

この装置が完成して、各所に導入できれば、少ない人数で多くの点検作業をこなすことができます。電気業界は慢性的な人手不足ですから、業界が抱える問題の解消にも多少は貢献できるのではと考えています」

 

――データを貯めることでビッグデータ(※)を活用した新しいビジネスも展開できそうですね。

 

「収集し蓄積したビッグデータをAIで解析すれば、事故を予測して回避するというような事故の防止や、働き方の改革ができるかもしれません。

 

また、設備監視装置とシステムを活用して、お客さまの課題解決が行えるIoTサービスも開発したいと考えています」

 

※ビッグデータ=様々な種類・形式が含まれる非構造化した大量のデータ。マーケティングなどで活用される場合が多い。

毎日が工場見学!!「この仕事をやっていてよかった~!」

――お客さまの課題解決が行えるIoTサービスとして、どのようなことを考えていますか?

 

「今は電気設備のある店舗や工場などで定期的に点検を行う、“守り”の業務が主ですが、今後は、データをもとにお客さまの課題解決を提案する“攻め”の業務も可能になるでしょう。たとえば、製造ラインを持つ工場で、個々のラインの稼働状況、エネルギー使用量を測定してムダな部分を『見える化』し、具体的な改善策をお客さまと一緒に考えていく。IoTを活用することにより、お客さまの立場に立った様々な提案が可能になるのではないでしょうか。

 

しかしそれを実現するには、点検を担当する人たちに課題解決能力が求められることとなります。そんな未来を想定し、四国電気保安協会ではソリューション人材を育てることにも力を入れ、積極的に研修を実施しているんです」

 

――働く人も担当するお客さまのビジネスに関われるということは、やりがいも今以上に大きくなりそうですね!

 

「四国エリア全体の経済発展にも寄与できれば、点検とは違った働く楽しみを得られると思います」

 

お昼には四国の美味しいうどんを「いただきます!」

――そうですね。そんな未来が本当に実現するよう、応援しています。ちなみに、福本さん自身はどんな時に働く楽しみを感じますか? これまでで楽しかった仕事のエピソードを教えてください。

 

「え~と、そうですね~。点検をしていた愛媛時代、普段はできない体験をしたときは本当にワクワクしましたね。お城や動物園に無料で入ったり、食品工場の裏側を覗いたり…(もちろんお仕事で)。業界裏話を聞けるのも楽しいです。今は新技術の開発担当として、新しいテクノロジーについて日々、勉強を続けていますが、どんどん広がる可能性に楽しさや希望を感じています」

 

――そんな福本さんにとって電気とは?

 

「難しい質問ですね。電気とは身近にどこにでもあるが奥の深いもの。最近は、太陽光発電所などの再生可能エネルギーも増えて、電気の生まれ方も多種多様。ロボットや車を動かすエネルギーにもなり、使い方も幅広い。様々に応用されて、知れば知るほど奥が深いものだなと思います」

<福本康二朗さんプロフィール>

四国電気保安協会の本部(香川県・高松市)技術センターに所属。高校卒業後、四国電気保安協会に入協。愛媛支部で保安管理業務を担当したのち、本部へ転勤。現在は保安管理業務の高度化・効率化に向け、AIIoTを活用した設備監視装置・システムの開発を担当している。



 

<取材・執筆>

野田綾子

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