ヘッドフォンの仕組みや歴史とは?ノイズキャンセリング技術も解説!

ヘッドフォンの仕組みや歴史とは?ノイズキャンセリング技術も解説!

音楽や映画の視聴などに欠かせないアイテム、ヘッドフォン。普段何気なく使っている機器でありながら、具体的な仕組みまで知っている人は少ないのでは。今回はあの小さい機器からどのようにして多彩な音楽を奏でることができるのか、その具体的な構造や仕組みについて解説していきます。ノイズキャンセリングなどの最新技術にも触れていくので、ぜひ最後まで読んでみてください。


音が聞こえる基本の仕組みとは

そもそも音は、空気や水などの媒質の振動を耳の中の鼓膜が感じとることで聞こえます。音には音量・音程・音色の3大要素があり、音量は振動する波の大きさ、音程は振動する波の振動数、音色は振動する波の形状の違いで変わります。例えば振動数の多い音は高い音として、振動数の少ない音は低い音としてそれぞれ聞こえますし、同じ音程でも波形の形状が異なると全く違う音に聞こえます。ヘッドフォンやスピーカー、イヤホンなどのオーディオ機器はいずれも媒質を任意の周波数で振動させることで音楽や音声を奏でているのです。

ヘッドフォンを構成する部品と役割

続いてヘッドフォンの構成部品について解説していきます。我々が想像する一般的なヘッドフォンには、肌に直接触れる部品として装着感を左右するイヤーパッド、ヘッドフォンを耳に押し付ける力を生み出すヘッドバンド、内部のドライバーユニットと空間で音を生み出すハウジング、ハウジング類の固定と角度調整に使用するアーム、頭に合うようにハウジングの位置を調整するスライダー、電気信号を送信するコードなどがあります。細かな部品の違いはあれど、大抵のヘッドフォンが同じような構造になるので覚えておきましょう。

音を出すドライバーユニットとは?

ヘッドフォンにおいて音の基となる振動を生み出すのは、ハウジング内に収められたドライバーユニットです。ドライバーユニットにはダイナミック型やバランスド・アーマチュア型、静電型、圧電型などの種類があり、もっとも一般的なダイナミック型は、ダイヤフラムと呼ばれる薄い板を振動させて空気を振動させます。ダイヤフラムにはコイルが取り付けられていて、コイルに電流を流せば電磁石になることを応用し、ダイヤフラムごと永久磁石と反発・吸着させることで任意の音声を生み出すのです。また、静電型のヘッドフォンであれば、あらかじめ電荷を貯めておいたダイアフラムを電極で挟み込み、電極に電流を流すことで生じる静電力によってダイヤフラムを振動させます。

ヘッドフォンが誕生した歴史

現代では、ヘッドフォンは音楽やゲームなどの音声を聞くための機器ですが、その原型は電話機の付属品として生まれたと言われています。そもそも昔の電話は直接相手に電話を掛けることはできず、電話交換手(オペレーター)に電話を掛け、回線を物理的に組み替えてもらう必要がありました。電話交換手は回線を組み替える作業を行う関係上、両手を開けた状態で通話する必要があったため、今でいうヘッドセットのようなマイクと一体化したヘッドフォンが誕生しました。そして周囲の雑音に邪魔されず正確に音声を聞ける特徴から軍事通信用として注目を浴びたのち、今と同じ一般大衆向けの音楽鑑賞機器として20世紀中盤頃に販売され、世間一般に浸透していきました。

最新技術のノイズキャンセリングやヒアスルーの仕組み

最新のヘッドフォンの中には、周囲の雑音を無くすノイズキャンセリング技術や、逆に周囲の音をヘッドフォン越しでも聞こえやすくするヒアスルー技術が搭載されている物があります。これらの仕組みは比較的単純で、ハウジングの内側や外側、あるいはその両方に取り付けられたマイクが周囲の雑音を拾い、ノイズキャンセリングであれば雑音と逆位相の音声を、ヒアスルーであれば雑音をそのままヘッドフォン内部に流します。周囲の雑音を気にせずに音楽を聞きたい方や、逆に音楽を聞いている最中に話しかけられても対応したい方は、これらの技術が採用されたヘッドフォンを選んでみては。

まとめ

今回は音楽の再生に欠かせないヘッドフォンについて、具体的な構造や仕組み、歴史、最新技術などを網羅的に解説してきました。仕組みを知らなくても使うことはできますが、原理を知れば安くて性能が良いものを選ぶ助けになるかもしれないので、購入する機会があれば今回の内容をぜひ参考にしてみてくださいね。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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