Bluetooth通信の特徴と代表的用途を解説!他の無線通信との違いも!

Bluetooth通信の特徴と代表的用途を解説!他の無線通信との違いも!

スマホやパソコンを始めとした多くの電子機器において、近距離通信技術として利用されているBluetooth通信。ワイヤレスのイヤホンやマウスなどで日頃から利用している人も多い一方で、その具体的な仕組みや特徴まで知っている人は少ないでしょう。そこで今回はBluetooth通信の基本的な内容について分かりやすく解説します。


Bluetooth通信は「短距離無線通信技術」のこと

Bluetooth通信とは、10m以内程度の短距離通信を可能にする技術および国際規格のことで、様々な電子機器同士をワイヤレス接続する目的で1999年に誕生しました。スマホやパソコン同士の接続はもちろんのこと、マウスやキーボード、コントローラーなどの周辺機器やワイヤレスイヤホンやスピーカーといったオーディオ機器とのワイヤレス接続、通信回線を共有するテザリング機能など様々な用途で使用されています。また最近では、倉庫の在庫管理用に商品を識別するビーコンなどに利用されることもあります。

プロファイルと呼ばれる独自ルールも存在

Bluetooth通信では、プロファイルと呼ばれる通信目的に応じて定められた独自の通信基準が存在します。例えばイヤホンなどのオーディオ機器であれば、高音質な音楽の視聴を目的に最適化された「A2DP」や、再生や停止といった操作について定められた「AVRCP」、通話をするために必要な「HSP」などのプロファイルが用意されています。

Bluetooth通信を行う機器同士がそれぞれ同じプロファイルを持っていないと通信できないため、用途に応じて必要なプロファイルをそれぞれの機器が持っているか確認が必要です。なおプロファイルはソフトウェア上のルールのため、アップデートで新たなプロファイルが適用されることもあり、直近であればNintendo SwitchでBluetoothイヤホンが繋げるようになったのも「A2DP」プロファイルに対応したためです。

異なるバージョンが存在する

Bluetooth通信にはいくつかのバージョンが存在し、2024年1月現在の最新バージョンは5.4です。バージョンごとに新機能の追加や通信品質の改善が図られており、例えばBluetooth4では待機時の消費電力量を従来のバージョンの1/10程度に抑える「BLE(Bluetooth Low Enegy)」機能が実装されました。BLEは1対多のブロードキャスト通信にも対応するなど従来のバージョンとは全く仕様が異なるため、アップデートを境にBluetooth4以降の通信にしか対応していない「Bluetooth Smart」、Bluetooth3以前の通信しか対応していない「Bluetooth」、そのどちらも対応可能な「Bluetooth Smart Ready」に表記が分かれるようになりました。また、直近のメジャーアップデートであるBluetooth5では多対多のメッシュネットワーク通信に対応し、スマートホームなどのIoTを実現するキッカケにもなっています。

他の無線通信との違い

無線通信技術にはWi-FiやNFCなどもあります。Wi-Fi通信は家庭や会社といった比較的小規模なエリア内で行う無線LAN通信(LAN:Local Area Network)について、電気電子学会(通称IEEE)が規定したIEEE 802.11規格に則った通信のことです。ルーターを使って電波を飛ばす必要があるものの、電波が届く範囲は数百mオーダーとBluetoothより広い範囲で通信が可能です。また、電波信号をモデムやONU(光終端装置)を介して電話回線や光回線に乗せてしまえば更に遠くまで通信することもでき、通信速度や接続機器数の点でもBluetoothより優れています。

NFCとは近距離無線通信と訳される技術のことで、名前の通りスマホなどを読み取り機にかざすほど近付かないと通信できません。日本ではSuicaなどの交通系ICやクレジットカードのタッチ決済などに使われており、BluetoothやWi-Fiに比べて通信できる容量が非常に小さいことから、テキストデータのような少ない容量のデータ通信に利用されます。一見するとWi-FiやBluetoothに劣る技術に感じるかもしれませんが、物理的に近付かなくてはならないことによるセキュリティ性の高さや、0.1秒オーダーという処理速度の速さなど、優れている特徴を持った通信でもあるのです。

まとめ

今回は身の回りでよく見かけるBluetooth技術について、主に具体的な特徴や他の通信との違いを解説しました。単にパソコンやスマホと周辺機器などを無線で繋ぐ技術、くらいに捉えていた方も、メッシュネットワークやBLEなどIoT技術を後押しする機能が次々に実装されて進化していることを理解できたと思います。今後のバージョンアップデートで更なる機能が実現する可能性も。期待が膨らみますね。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など。

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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