この仕事が育児がしやすい環境を与えてくれた--ママさん電気主任技術者に聞く「フリーランスの働き方」

この仕事が育児がしやすい環境を与えてくれた--ママさん電気主任技術者に聞く「フリーランスの働き方」

働き方改革が進み、組織に所属せず、自分の持つスキルを活かして個人事業者として働くフリーランスが増えてきました。そして、電気の世界にもフリーランスとして働く方がいます。その一人が遠藤智恵子さんです。一児の母である遠藤さんは、「個人事業者はワーク・ライフバランスが取りやすく、仕事と家庭の両立がしやすいのがメリット」だといいます。電気業界のフリーランスは、どのようにして仕事をもらうの? 初期費用はいくら用意すればいいの? さまざまな質問をぶつけてみました。


電気主任技術者は安定・安泰なおしごと。勢いでこの仕事に就いちゃった!

――現在のお仕事内容について教えてください。

 

「電気主任技術者として、建物の電気設備の点検をする保安業務を担当しています。定期的に点検先へ訪問し、電気設備がちゃんと動いているか、漏電していないかをチェック。基本的には修理は工事屋さんの仕事ですが、緊急の場合応急処置もします」

 

――このお仕事は現場の作業員=力仕事というイメージが強いせいか、男性が多い職種です。遠藤さんはなぜ、このお仕事を選ばれたのでしょうか。

 

「たしかに、電気主任技術者は男性が圧倒的に多い職種ですが、実は男女関係なく資格さえあれば誰でも挑戦できる仕事。この仕事を選んだ理由は父がこの仕事をしていましたし、私自身も電気を学んできたからです。もともと、大学卒業後はエンジニアとして働いていました。仕事そのものは楽しかったのですが、海外出張が負担で辞めてしまいました。そこから、なにをしようかなと思っていた時に、父の姿を思い出して。電気は生活の中で必要不可欠なものだし、今後もそれは変わらない。遠い未来を考えても、ずっと必要とされる分野だろう。そんな単純な考えでこの仕事に就きました」

 

――しかし、電気主任技術者になるには、電験三種(第三種電気主任技術者試験)の資格が必要ですよね?異業種からの転職ですし、簡単ことではなさそうですが

 

「はい。この資格を取得する方法は2通りあります。1つは経済産業省が定めた認定校(工業高校など)を卒業し、実務経験を積む方法。2つ目は試験を受けて合格する方法。私は後者の方法で取得しました。ただ、合格率は低く(10%未満の年もある)、しっかり勉強しないといけないため、前職を辞めて1年間は勉強に専念しました」

――合格したとしても、電気主任技術者のもとで実務を経験しなければなりません。

 

「そうですね。電気主任技術者である父のもとで、アシスタントのようなポジションで5年間の実務経験を積みました。父が個人事業者としてこの仕事をしていたので、私も電気主任技術者として独り立ちした時も個人事業者として働きはじめました」

 

――ということは、一度も企業に所属せずに独立されたのですか?では、どのようにして点検先であるお客さんの獲得をされているのでしょうか。


「わたしは個人事業主で公益社団法人東京電気管理技術者協会』という団体に所属しています。仕事は協会の会員から紹介されることがほとんど。また、電気工事屋さんからの紹介や、協会に仕事の引き合いがきてそこから紹介を受けることも。ですから、基本的に自分からガンガン営業することはありません。中には協会に所属しない個人事業主の方もいますが、わたし個人は所属した方がいいと思っています。というのも、会費さえ払えば、書類申請の代行もしてくれますし、色々と仕事を紹介してくれる仲間がいますから。完全に個人だと、自分で営業に回らなければならないし、お客様と0から信頼関係を構築するのはなかなか大変です。そう考えると、本当に安心して仕事ができます。

また、法律改正や新しい技術についても協会が主催する各種講習会などで学ぶことができ、スキルアップもできるんです」

 

――お金の面ではいかがでしょうか。会社員なら初期費用やそのほかの費用を企業が負担してくれますが、個人事業主ならすべてが自己負担です。

 

「初期費用はそこまで大きな額がかかる訳ではないので、安心してください。はじめるにあたって道具は必要ですが、業者によっては1年以内の分割で払える時に払える金額でと仰って下さるので、売上が出てきたら支払えば大丈夫。私の場合、初期費用として70100万円ほど用意し、『公益社団法人東京電気管理技術者協会』の入会金や道具の購入費に使用しました」

子育てしやすい環境のおかげで育児と仕事の両立で苦労したことはない!

――個人事業者で良かったことは?

 

「スケジュールが立てやすいことですね。今は子どもが大きくなったので、育児に時間を取られることが前ほど多くなくなりましたが、子どもが小さい頃は体調や都合に合わせてその日の仕事の予定を立ててしました。たとえば、午後3時までに幼稚園に迎えに行くため、午前中に外回りを終えて、お昼過ぎは家で書類作成。3時に迎えに行き、家で子守をしつつ自宅作業をして、夕飯の準備をするといったスケジュールで働いていました」

 

――個人事業者ならではの悩みはありましたか。

 

「う~ん、とくに思いつかないですね。ただ、組織に所属していたら先輩がその都度、指導をしてくれますが、個人事業者にはそれがなく、すべて自分次第です。ですから、自分で目標を立てながら経験を積み、スキルアップしていかなくてはなりません。ある意味で、自分で自分を指導するという大変さはありますので、自己管理がしっかりできないとバランスを取るのが難しいかもしれません」

――子育てをしていた頃、育児と仕事の両立で苦労しませんでしたか。

 

「あまりなかったですね。さっき言ったように、自分の都合に合わせて仕事のスケジュールを組み立てることができたので、子どもの帰宅時間には家にいることができましたし、近所に両親もいたので、何かあってもフォローしてくれる。夫も個人事業者の電気主任技術者なので、お互いに協力し合い、2人が共に帰宅が遅くなることはほとんどありませんでした。子育てには最適な環境でしたね」

 

――子育てと仕事の両立に悩むことはない、それって働くママさんにとって憧れの職業ですね。

 

「そう思います。作業着を着て、ヘルメットを被りながら作業しますので、ブルーワーカーのイメージがあって女性は躊躇する部分もあるかもしれません。作業中に虫が落ちてきてびっくりすることもありますしね(笑)。ですが、将来を見据えると、長く、安定して働くことができるし、プライベートとのバランスも取りやすいなど、メリットがたくさんある。やりがいのある仕事に従事しながらワーク・ライフバランスが保てるので、本当に健全で素晴らしい仕事ですよ」

 

――そんな遠藤さんにとって電気とは?

 

「一見すると単純に見えて、奥が深いもの。電気って『10』と結果がはっきりしているんですが、その『10』の判断をする上でさまざまな要素が絡んでくるので、簡単に理解することができないんです。エンジニアのときよりも挑戦しがいがあるし、それが面白いところでもありますね。電気の勉強はまだまだ終わらない。もしかしたら永遠に終わらないものかもしれませんね」

 

――ご回答、ありがとうございました。インタビューはこれで終了させていただ……

 

「あの、すみません! 最後にこれだけは言わせてください。この仕事は女性が非常に少ないのですが、この業界でこれからも働いていく私としては、もっと多くの女性に参入してほしいなって。女性は出産・育児のタイミングで現場から離れる期間があります。それはとても大事な時間。しかし、一度現場を離れれば、復帰したときに仕事がない!という状況になりがち。なので、出産・育児の期間を女性同士でサポートし合って現場復帰に障壁がなくなるよう、私自身が率先して女性にとって理想的な労働環境をつくりたいと思っています。必ずフォローします。だから、たくさんの女性がこの仕事に興味をもってほしい。女性のみなさん、ぜひこの世界に入ることを検討してみてください!」

<遠藤智恵子さんプロフィール>

公益社団法人東京電気管理技術者協会」に所属。自家用電気工作物の電気保安に関する業務を行う電気主任技術者(個人事業者)。父親が電気主任技術者として働いていたことから、自身も同じ職業に就き、現在は夫婦で業務を営む日々を送る。


<取材・執筆>

野田綾子

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