電気工事士試験の配線図問題攻略のカギ!「複線図」を徹底解説

電気工事士試験の配線図問題攻略のカギ!「複線図」を徹底解説

電気工事士の試験において、技能・学科ともに重要とされているのが「複線図」。この記事では図面をもとにわかりやすく解説していきます。


学科試験の学習で出てくる「複線図」とは

一般的に、電気の接続方法について描かれた図面のことを「配線図」といいます。配線図は、照明器具の位置や照明器具を点けたり消したりするためのスイッチの位置、コンセントの位置、電線どうしを接続するジョイントボックス(電線を接続してある箇所をまとめて入れておく箱)などの位置などが図記号で記したもののことです。それぞれの器具の間をケーブルなどの電線で接続しますが、電線は1本の線で描かれています。この配線図は1本の線(単線)で描かれているので「単線図」と言います。図1は令和5年上期午後に出題された配線図の一部(3階平面図)です。

図1を見ると、器具の配置とケーブル(電線)の接続方法がわかりますね。

では、どのようにこの図面を読み取るのか、壁付コンセントの配線を例えにあげて考えてみましょう。凡例(図記号)を見ると、壁付コンセントの記号は、○の中の約3分の1が黒塗りされていて線が2本入った、コンセントのプラグを模している図記号と分かります。次に図1の単線図をみると、この壁付コンセントの図記号は全部で3つ。さらに、もう一つの図から2階の分電盤(電気を分けるブレーカーの入った盤)からきていることが分かります。Ⓙの左側に□の記号のジョイントボックスがあり、このボックスの中で2階から送られてきた電気を3階に分けているのです。

2階からきた電気は、記号kの下の3階の屋外壁面で2階の屋上側に向いているコンセントに接続され、そのコンセントから右側の洋間の階段に近いコンセントへ、そして右下の壁側のコンセントへと接続されます。上の図、中央に描かれたハシゴのような絵は階段を表していますが、そこには埋込器具「ヌ」(DLと書かれているもの)があります。これは階段を上がったところにスイッチ「ヌ」があり、それを付けると埋込器具「ヌ」が点灯する仕組みを示しています。

これらが正しく配線されるには、この図面だけでは十分といえません。なぜなら、使用する1本のケーブルの中には必ず2本以上の電線が入っており、この電線を正しく繋がないと電気が通らず、漏電や事故につながるためです。このために別で作成されるのが「複線図」です。

ケーブル内の電線は一般的に白と黒のビニールで覆われています。なかには3本、4本と入っているものもありますが、白、黒の他に、赤、緑など、色でそれぞれわかるようになっています。これらのつなぎ方を図面として書き直します。つまり、複線図をしっかり作成することが正確に配線するコツと言えるでしょう。

電気の流れを心臓のたとえて考えてみよう

電気は発電機から電流が流れ、負荷(照明器具やコンセント)を通り、また元の場所に戻ってくることで、使用できます。つまり、電流を負荷に送るための線と負荷から元の場所に戻ってくるための線は異なるということです。心臓から動脈に血液を送りだしますが、返ってくるときは静脈という別のルートで戻ってきます。電気も同じ理屈と考えてください。

電線の色は白と黒が基本で、基本的に黒は発電機から負荷へ(血管の例でいえば動脈)、白は帰り道(血管の例でいえば静脈)に使用するのが一般的です。先ほど、コンセントと埋込器具の単線図を確認しましたが、分かりやすく埋込器具に当てはめると次のようになります。

①2階からきた電気を3階に繋げるジョイントボックスに接続します。
②①の2階からきた線をスイッチに接続します。
③②スイッチの反対側から埋込器具に接続します(スイッチを入れると
電気が流れるようにします)。
④③の埋込器具から電気を返すためジョイントボックスに接続します。
⑤ジョイントボックスから2階へ電気を返すために接続します。

①からきた電気を②で切り替えていますので、②が切られていればそれ以上先に電気は進みませんし、入れれば②~⑤の一連の動作で電流が流れます。これを図面で表したものが「複線図」であり、このケーブル(導線が2本又は3本のケーブル)の本数やケーブルの中の電線の本数は学科試験で問われる内容です。

複線図の書き方

複線図の書き方にはルールがたくさんありますので、今回は基本的な考え方をご紹介します。人が感電したり、漏電火災が発生したりするのは黒線に電気が流れるためで、白線では電気が流れないので感電や漏電火災は発生しません。複線図を描く一例として、白線を先に書くと書きやすくなります(分かりやすいように図の中では青線にしています)。黒線は常時電気が通電している(電気が流れている)コンセントやスイッチに接続します。それを示したものが図2です。

そして最後に、スイッチと照明器具を接続する線を書き足していきます。

・二のスイッチと二のパイロットランプおよび蛍光灯
・ヌのスイッチとヌの埋込器具
・ネのスイッチとネの引掛シーリング

複線図が完成しました。このように、複線図はどのルートでどのように正しく電気を送る線を配線するのかを詳しく示し、確実に配線するための指示書となります。一つでも間違えてしまうと事故につながるため、複線図は非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。

複線図を制する者が電気工事士試験を制す!?

学科試験では、下記のように複線図の問題が4~5問出題されます。

①指定箇所の電線の本数を問う問題
②接続箇所にリングスリーブ(接続するための金具)を使用したときのスリーブの大きさと使用個数を問う問題
③リングスリーブを使用して接続する場合の圧着ペンチ(リングスリーブを圧着する工具)のどの場所で圧着接続をしたかを示す刻印を問う問題


複線図に関する知識は技能試験にも直結します。技能では必須の知識となりますので、基礎を学習しておいたほうが試験も突破しやすくなります。

技能試験では13課題の単線図があらかじめ公表され、その中の1課題が当日試験会場で出題されます。どの課題が出てもいいように、13課題分の複線図を書く練習をしていく必要がありますし、40分という限られた試験時間の中で完成させるためにも、複線図を2~3分で正確に書けることが重要です課題で出された単線図と条件を確実に読み取り、正確に複線図を書けるように、できるだけ早い段階から学習し、練習を重ねていきましょう。

プロフィール

TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師

1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。

TAC電気工事士講座ホームページ

TAC電気チャンネル-YouTube

TAC電気工事士講座公式Twitter

この記事のWriter

電気工事士・電気主任技術者をはじめとした電気・設備関連の資格試験対策講座を開講。資格の学校として多くの合格者を輩出してきたノウハウをもとに、文系の方や初めて学習する方にもわかりやすい講義・教材とカリキュラムで合格に導く。電気工事士技能試験対策コースでは、完成作品を画像でメール送付する「メール添削」、Web会議システムを使用し講師が配線チェックなどをマンツーマンで指導する「オンライン添削」など、通信講座でも安心の添削サービスを提供。

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