電動アシスト自転車とは?定義・構造・注意点などを網羅的に解説!

電動アシスト自転車とは?定義・構造・注意点などを網羅的に解説!

通常の自転車に比べて楽に走れる電動アシスト自転車。モータの力によって楽に走れると知りながらも、具体的な構造まで知っている方は少ないはず。そこで今回は電動アシスト自転車の構造や使用上の注意点などを網羅的に解説します。


電動アシスト自転車の定義と要件について

電気の力を使う自転車全てを電動アシスト自転車と捉える人も多くいますが、実際には道路交通法で名前や機能などが明確に定義されています。まず法律上の電動アシスト自転車とは、通常の自転車と同様に人が漕ぐ力によって推進力を得るものであって、電動機が生み出す力はあくまでも補助でなくてはなりません。

また、アシスト力の強さについても具体的に定義されており、人がペダルを漕がない限り補助の力が発生させないこと、速度が10km/h未満の時はアシスト力が最大でも人が漕ぐ力の2倍以下であること、速度が10km/h以上24km/h未満の時は人が漕ぐ力が増えるに連れてアシスト力を落とすこと、速度が24km/h以上の時はアシスト力を無くして人力でのみ駆動すること、などが規定されています。以上の定義に従えば原動機付き自転車(通称原チャリ)のように、人の脚力を一切使わずに進める自転車は電動アシスト自転車とは呼ばないことが分かるでしょう。

電動アシスト自転車の仕組みと構造

続いて電動アシスト自転車の構造について、通常の自転車の構造にも触れながら解説しましょう。

自転車が走る力はペダル▶︎クランク▶︎クラッチ▶︎歯車▶チェーン▶タイヤの順に伝わる

人がペダルを漕ぐ力はクランクと呼ばれる金属部品を経由してワンウェイクラッチに伝わります。ワンウェイクラッチとは名前の通り一方向にしか駆動力を伝えないクラッチのことで、ペダルを漕ぐ力がタイヤに伝わる一方で、ブレーキを掛けた時の制動力がペダルに伝わらないのはワンウェイクラッチのおかげです。

ワンウェイクラッチの先にはスプロケットと呼ばれる歯車状の部品が繋がっており、回転径によって回転数とトルクが変わることを利用した変速ギアとして機能します。スプロケットにはチェーンが巻きついており、その反対側にもスプロケットとタイヤが繋がっているため、スプロケットから伝わってきた回転力は最終的にタイヤへと伝わることで自転車が進むのです。

電動アシスト自転車ではセンサ・モータ・バッテリーなどが増える

電動アシスト自転車も基本的な構造は通常の自転車と同じですが、アシスト力を生み出す機構としてトルクセンサや速度センサ、モータ、バッテリーなどが増えます。トルクセンサはペダルを漕ぐ時の力を計測し、走り始めや登り坂などトルクが大きい時にはアシスト力を強め、ある程度の速度に到達した後や下り坂を走る時などトルクが少なくなったらアシスト力を弱めるのに利用されます。既に触れたようにアシスト力の強さは速度に応じて定められているため、速度センサとトルクセンサの測定値を組み合わせ、法律に沿うようアシスト力をコントロールするのです。

また電動自転車の要とも言えるモータは独立したアシスト用スプロケット(減速ギア)を経由してチェーンへ繋がれ、人が漕ぐ力をアシストする方向に回転力を生み出しています。

電動アシスト自転車における注意点とは?

誰でも楽に漕ぐことができて便利な電動アシスト自転車ですが、安全に使用するために気をつけるべき注意点も存在します。購入を検討している方はもちろんのこと、既に所有している方も改めて確認しておきましょう。

適切な認証が取れているものを選定する

一つ目は適切な認証が取れた自転車を買うことです。繰り返しですが電動アシスト自転車のアシスト力は法律で決められており、基準に適合した自転車には「TSマーク」と呼ばれる公安委員会発行の安全標章が貼付されています。そのためTSマークが貼付されていない自転車は法律から逸脱した性能を持つ可能性があり、例え電動アシスト自転車と銘打っていても実態は法律上の電動バイクに該当する恐れがあります。

万が一電動バイクと認定されてしまうと免許が必要になるだけでなく、ヘルメット着用や自賠責保険への加入が義務化されてしまうため、電動アシスト自転車のつもりで乗っていたら知らないうちに法律違反となった、という事態にもなりかねません。電動アシスト自転車を購入する際は確実にTSマークが貼付されていることを確認しましょう。

適切なバッテリー管理を心掛ける

電動アシスト自転車を使う際はバッテリー管理に重要です。多くの電動アシスト自転車に使用されているリチウムイオン電池は、過剰な充電や空状態を長く放置すると寿命が短くなると言われています。しばらく使わないからと言って長期に亘ってバッテリーを充電せずにいたり、逆にいつでも乗れるようにと充電しっぱなしにしないよう注意しましょう。

また、高温環境に晒したり、強い衝撃を与えると火災を招く恐れもあります。というのもリチウムイオン電池は正極と負極を薄いセパレータで仕切っている構造のため、強い衝撃が加わると正極と負極がショートし、発熱を引き起こすのです。また、高温環境下に置いた場合も過剰に化学反応が進んでしまい、同じく発熱を引き起してしまいます。適度な頻度で充電を行い、駐輪の際は涼しい日陰などに停めるようにしましょう。

まとめ

アシスト力が強い方が良いように感じるものの、強すぎると法律違反になることを知らなかった人も多かったのでは。乗車の際は安全に気をつけて走行しましょう。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など。

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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