夜間作業もあるし、お洒落も楽しめない…それでも女性技術者が現場で働き続けるワケ

夜間作業もあるし、お洒落も楽しめない…それでも女性技術者が現場で働き続けるワケ

現場作業は体力的にハードな時も少なくありません。そのうえ夜間作業もあるし、日々、ヘルメットと作業服でおしゃれさえなかなか楽しめない…。そんな現場でも毎日を前向きに働いているのが北陸電気保安協会に所属する小山怜美さんです。はじめは男性を想定した環境で戸惑いを感じたと言いますが、それでも働きつづける小山さんに、この仕事の魅力について語っていただきました。


慣れない現場でいつも電柱と戦っていた

――現在、電気主任技術者として、北陸電気保安協会で働かれているとのことですが、入協したきっかけを教えてください。

 

「工業高等専門学校の電気科で電気の勉強をしてきましたし、将来は電気に携わる仕事に就きたいと思っていました。それに、将来的にも電気の仕事は無くならないから、安心して勤めることができるだろうって。そうした理由から、卒業後の進路には発電所の修理をする仕事を志望していました。そのことを担任の先生に伝えたところ、山に籠って作業をするので、女性にはとてもハード。現場に入っても体力的に大変だから、考え直した方がいいんじゃない?と言われてしまって。それでも私は外で作業できる現場の仕事をしたいと伝えたら、北陸電気保安協会の会社説明会に行くようにアドバイスされました」

 

――先生はなぜ北陸電気保安協会を勧めたのでしょうか?

 

「おそらく一般家庭や工場や学校などの電気設備の保安をする業務だったからだと思います。現場にも行けますが、山に登るほどの体力を求められることはありませんし(笑)」

 

――説明会ではどんな話をされましたか。

 

「はじめに、『うちは現場で働く女性は一人もいないけど、大丈夫?』と聞かれました。夜間作業もあって化粧もできない。それでもいいかと、その時、覚悟を問われたような気がしたんです。それでもいいと私は思っていたので、『大丈夫です』と素直な気持ちを伝えました」

――実際に働いてみて、苦労したことや驚いたことはありますか?

 

「現場へ出はじめたときは、トイレに悩まされることが多かったですね。男性が使うことが前提とされているので、言いづらいですけどトイレットペーパーがない現場もあって…。また、水の入ったバケツが用意されていたトイレもあって、その水で排泄物を流すっていう。 そういう時はさすがにテンションが下がることもありますね。ただ男性の先輩方が、気を遣ってくれて、女性専用トイレのない現場へ行く日はコンビニに寄ってくれています。もちろん女性トイレが設置されている現場もありますが、ほとんどないと言ってもいいでしょう。あとは電柱にも悩まされました。保安業務をしていると電柱に登らないと行けないんですが、私の身長は149センチと小柄なので、電柱の足掛け場の間隔が広すぎて足がなかなか届かなくって…。最初の頃は電柱の真ん中あたりで力尽きてしまい登るのを断念。先輩に代わってもらっていました」

 

――電柱は男性が登ることを想定して作っているのかもしれませんね。今は登れるようになりましたか?

 

「はい。入社した頃より体力もつき、スイスイと登れるようになりました!」

いろんな現場へ出向き、現場ごとに発見があり退屈することはない

――女性“だからこそ”できることはなんでしょう。

 

「入社1年目の頃の話ですが、一般家庭の電気設備の点検で、訪問先のご自宅にあげてもらう必要があったんですね。その時、訪問先の方から、女性だからより安心できると言われました。女性一人で住んでらっしゃる場合、点検ではあっても男性を自宅内に入れるので不安に思う人もいるでしょう。それが女性同士だとなんの不安もなく、受け入れてもらいやすいみたいです。あとは女性更衣室やレディースクリニックなどにも躊躇なく行けるところも女性ならではですね」

 

――現場へ出向く女性の技術者は小山さんだけですか?

 

「同期入社した女性社員(年齢は2つ下)がいますし、後輩の女性が2人います。よく4人で飲んではトイレの愚痴について話していますし(笑)、体験や思いを共有して、協力しあっています。4人の中で私が一番、年上なので彼女たちの見本になれるよう心がけています。先ほどのトイレの件も含めて、今後は女性が働きやすい環境設備の提案を積極的に行っていきたいですね」

――素晴らしいですね。技術者としての目標を教えてください。

 

「現在担当できる事業場は、限られた条件の電気設備なのですが、2020年の12月からはその条件がなくなり、発電所などの電力設備も担当できるようになります。それに伴い、難易度の高い技術が求められることもあるので、今はそこに向けて勉強や準備をしている最中です」

 

――この仕事の楽しさとは?

 

「日々さまざまな現場へ行き、多様な電気設備をチェックし、異なる電気設備のトラブルに遭遇します。またお客さまとの応対などを通していつも気づきや発見があるので、退屈することはありません。外へ出て日々新たな発見を楽しみたいという方には、本当に楽しい職場ですよ!」

――ありがとうございました。女性の技術者として、今後もたくさんの現場で活躍していることを期待しています。それでは、最後の質問です。小山さんにとってデンキとは?

 

「この仕事をする前はデンキは単に日常生活になくてはならない存在だと思っていました。ただ働き始めてから知識と経験を積むうちに不安全な状態では感電や停電事故による災害につながるなど、デンキは命を危険に晒すものでもある、つまり二つの顔を持っているんだと実感しました。自分も含めてみなさんが安全に過ごせるよう、丁寧に護っていきたいです」

<小山怜美さんプロフィール>

父親が工業高校の電気科で電気を学んでおり、その影響で工業高等専門学校の電気科に入学。卒業後は一般財団法人北陸電気保安協会技術系女性職員の第一号として入協し、電気主任技術者に。

 

<取材・執筆>

野田綾子

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