現場インタビュー
「ありがとう」が原動力。関東電気保安協会で奮闘する女性技術者入社2年目の飯塚さんへインタビュー
栃木県の作新学院の電気・電子システム科を卒業後、高校時代保安協会の電験支援講座やインターンシップをきっかけに、2025年4月に関東電気保安協会へ技術者としてご入職された飯塚さん。現在は、一般家庭や商店などのお客さまを訪問し、電気設備の安全点検を行う調査業務に携わっています。入社からわずか1年弱ですが、今では一人で現場を回り、訪問計画から点検、お客さま対応までを担当。最初は不安だらけだったという飯塚さんですが、現場経験を重ねる中で少しずつ自信を身につけてきました。
この記事では、飯塚さんに仕事のやりがいや苦労、女性技術者として感じたこと、そして今後挑戦したいことについてお話を伺いました。
目次
入社2年目。研修期間を経て、現在は一人で調査業務を担当!
飯塚さんは現在、各家庭や商店、工場を訪問し、分電盤や電力量計などを中心に、漏電の有無や感電の危険性がないかを確認する調査業務を担当しています。
入社後の研修期間は3カ月。この期間に電気の基礎知識や点検方法を学んだ後、実際の現場へ。最初の1カ月は先輩社員に同行しながら調査業務を学び、2カ月目からは一人で現場を担当します。慣れないうちは判断に迷う場面も多かったそうです。
「初めのうちはグループリーダーに『この場合はどうすればいいですか?』と、現場からよく電話で確認していました。今ではだいぶ慣れて、一人でもサクサクと回れるようになりました」

そんな飯塚さんを支えていたのは、先輩をはじめとする周囲の温かなサポートでした。現場を回る際も、地元の方が車両の駐車場所を気にかけてくれたり、声を掛けてくれたりと、地域の人たちに支えられていると感じる場面も多いそう。そうした信頼関係は、飯塚さんが日々、お客様と真摯に向き合ってきたからこそ生まれているのでしょう。また、調査業務は事前準備も重要な仕事の一つです。
「効率よく回るにも、訪問前に下見に行って、自分でルートを考えながら地図を作成します。とくに、地方エリアは旧番地の影響で住所が順番通りになっていない地域もありますし、表札が出ていない住宅もあるため、訪問先を探すだけでもひと苦労だったりします。そのため、場所が分かりづらいと感じた時は現場を下見して、メーターの位置を確認し、地図にすぐ書き込みます。この下見作業も点検を実現するために、非常に重要な業務なんです。行けなかった場合は予告訪問の時に確認します」

支えてくれる人たちが原動力になっている
初めて現場へ出た日は、真夏の日差しの中。慣れない環境ということもあり、体力的にも精神的にも余裕はありませんでした。先輩についていくだけで精一杯で、どんどん遠くなる先輩の背中を見たとき、『本当に追いつけるかな』と感じた飯塚さん。さらに苦労したのは、お客様対応です。
「基本動作は研修で学びましたが、点検作業では一人ひとりのお客様にご納得いただけるよう、丁寧な説明を行わなくてはなりません。1日に何件も回りますから、毎日が試行錯誤の連続でしたね」
現場に出たばかりの頃は、毎日が手探りの連続だったといいます。加えて、訪問ルートを決めるための地図作成にも苦戦したようで…。
「何日もかけて地図を作ったのに、実際に現場へ訪れると建物が違う…なんてこともありましたね。それでも3〜4ヶ月くらい経つと徐々に慣れ、『あれ、前より余裕があるぞ』って思えるようになって。自分が成長していることを実感しました」
最初の数ヶ月は誰にとっても大変な時期。しかし、その壁を乗り越えた先に、自分自身の成長を実感できる瞬間がある――そんな過酷な時期を乗り越えられた理由について尋ねると、飯塚さんは少し考えながら、周囲の存在の大きさを語ってくれました。

「調査グループのリーダーや班長の方が、脚立やヘルメット、腰道具の使い方、現場での立ち回りに至るまで、本当に細かいところまで寄り添いながら教えてくださったんです。とにかく、わからないことがあれば、その都度相談し、一つずつ学んでいきました。非常に厳しい方ですが、最後までちゃんと付き添ってくれる大先輩で、課長や所長も『ここまで面倒を見てくれる人はいないよ』と言っていました」
たくさんの時間をかけて教えてくれた先輩たちの存在が、「必ず乗り越えよう」という気持ちにつながっていきました。さらに、現場でお客さまから掛けられる「ありがとう」の言葉も、大きな励みになっていたそうです。
国語や数学より「すんなり頭に入ってきた」のが電気だった
そもそも、飯塚さんが電気業界に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。
飯塚さんは作新学院の電気・電子システム科出身。もともと商業系の高校へ進学を考えていたそうですが、学校見学を通して工業系の高校に興味を持ち、作新学院へ進学。学びを深める中で、自分自身の“好き”に気づいていきます。
「電気科の授業は、国語や数学よりもすんなり頭に入ってきたんです。そこで私は電気を学ぶことが好きなんだなって。そこから、高校2年生の時に関東電気保安協会のインターンシップへ参加したことで、電気業界で働こう!と心に決めました」
関東電気保安協会には、一般家庭を訪問して電気設備の安全確認を行う「調査部門」と、高圧受電設備の保安・点検を行う「保安部門」があります。

「インターンシップでは、高圧受電設備の点検を体験させていただきました。小学校の点検現場に同行した際、点検用のDS棒(ディスコン棒)を使って作業を行う先輩社員の姿を見て、『かっこいい!』と思ったんです。また、インターンシップでは、事務所に設置されているキュービクル設備の点検も体験しました。これらの体験を通して、私はデスクワークより、外で体を動かしながら行う技術系の仕事のほうが向いていることに気づいたんです」
その後、担任の先生からの後押しに加え、祖父が関東電気保安協会に勤めていたこともあり、飯塚さんは「自分に一番合っているのは関東電気保安協会だ!」と感じるようになったそうです。就職活動でも、同協会第一志望としてエントリー。内定が決まりました。

腕力が必要だ!と思っていたけど…必要だったのは体力と持久力
入社前は、社会インフラを支える仕事ということもあり、厳粛で堅苦しい職場を想像していたそうですが、実際は、穏やかで馴染みやすい雰囲気がある、居心地の良い職場に安心したといいます。
「仕事の面では『技術職=力仕事』をイメージしていましたが、実際は各家庭を訪問して点検を行う業務が中心だったため、どんな環境下でも確実に点検を行える体力や集中力が必要だと感じました」
調査業務では、一日中歩き回ることも珍しくありません。多い日は、1日に1万歩ほど歩くこともあると言いますが、近年は30℃以上を超える真夏日や猛暑日が急増しており、より体調管理に気を使う必要があります。
そうした状況を理解したうえで、宇都宮事業所では万全な熱中症対策に取り組んでいます。現場で働く職員が安心して業務に取り組めるように、熱中症対策デバイスの配備や空調服の支給、しっかりと冷やされたペットボトルの支給など、さまざまな対策を行っていると言います。飯塚さんも点検時は必ずポケットに水を常備しています。

「会社で支給されている熱中症デバイスは、体調に合わせて表示が変わるため、自己管理ができる仕組み。チェックしながら自主的に休むことを習慣づけています。危険な状態になった時は、上司にも通知が届くようになっているんです」
万全なフォロー体制や熱中症対策のおかげで、無理なく現場に慣れていったそうです。
女性技術者であることでお客様に安心感を与えられる
現場ではまだまだ男性技術者が多く、女性技術者は少数です。
調査業務では、分電盤を確認するために住宅内へ入ることがありますが、マンションやアパートの場合、玄関付近の靴箱の上などに設置されていることが多い一方、一般住宅では脱衣所など、よりプライベートな空間に設置されているケースも少なくありません。そうした場面では、女性調査員だからこそ、お客様に安心していただけることも多いと飯塚さんは話します。
「女性のお客様から、『女性の担当者で安心しました』と言っていただくことがあります。また、お客様から話しかけてくださることも多いですね」
もちろん、体力面で大変さを感じることもあります。しかしその一方で、“女性だからこそ安心して任せてもらえる”という場面があることにやりがいを感じるようです。自分にしかできない役割がある――。それが、日々の仕事への自信にもつながっています。なお、宇都宮事業所では、飯塚さんを含め2人の女性技術者がいます。

「同じ作新学院出身の女性の先輩は誰に対しても積極的にコミュニケーションを取り、周りの雰囲気を和やかにしてくれる人。さらに、先輩は労働組合内の『青年女性委員会』にも所属し、若手職員同士の交流や、より働きやすい環境づくりに取り組んでいるんです。なんでも相談できる頼れる先輩として、本当に尊敬しています」
事業所の垣根を越えた交流イベントなども定期的に開催されており、若手同士がつながる機会も増えているのだとか。そして今年度からは、飯塚さん自身も組合活動に参加することになりました。
「私も今年度から参加することになったので、いろいろな経験を積みながら、少しでも会社を良くしていきたいと思っています。近しい世代の方が集まりますし、私も、『こうしたほうが働きやすいんじゃないかな』など、積極的に意見を出していければいいな」
仕事だけでなく、人とのつながりや環境づくりにも積極的に関わろうとする姿勢から、飯塚さんの前向きな成長意欲が伝わってきました。
公私をサポートしてくれる!充実の福利厚生制度
宇都宮事業所には、女性専用のシャワー室や洗濯機、更衣室が整備されており、現場業務のあとも快適に過ごせる環境が整っています。女性トイレも充実しており、更衣室にも併設されているなど、設備面で不便を感じることはほとんどないそうです。

また、福利厚生面では、育児と仕事を両立できる休暇制度も整備されています。ライフステージが変化しても安心して働き続けられるよう、職員一人ひとりを支える環境づくりが進められているのです。さらに、毎年付与される「カフェテリアプラン」制度も魅力のひとつ。旅行や買い物、レジャーなど幅広い用途に利用でき、一定期間繰り越すことも可能なのだとか。
「ポイントを貯めて、家族旅行に使う予定です!」
飯塚さんは、仕事だけでなくプライベートも大切にしながら働ける環境が整っていることも、関東電気保安協会の魅力だと語っていました。
努力の先にあった大きな達成感とやりがい
社会人になり、学生時代には得られなかった大きな達成感を感じるという飯塚さん。
「1日中、各家庭を回って点検をしていると、冬でも汗をかくくらい走り回ることがあります。それでも、時間ギリギリまでかかりながらすべての点検を終え、『今日の現場業務が全部終わった』と、学生時代には得られなかった大きな達成感があります」
体力的に大変な仕事だからこそ、一日を無事にやり切った時の充実感はひとしお。訪問ルートを考えながら地図を作り終えたときにも、地道なデスクワークをやり遂げ、「これで準備が全部終わった!」とホッと肩を撫で下ろすのだそう。しかし、点検件数が多い日や時間に追われているときは、「お客さまにしっかりとした品質の点検を届けたい」という思いと「時間内にすべての点検を終えなければならない」という思いの間で葛藤することもあるそうで…。
「移動時間を少しでも減らすために走ったり、昼休みに少し食い込んででも対応したりしています。何があっても、点検の品質は落としたくないんです」
限られた時間のなかでも、一件一件、真摯かつ丁寧な点検を心がける姿勢からは、電気の安全を守る仕事への強い責任感を感じました。さらに、工場や動力設備の点検では、多くの回路を一つひとつ確認していく必要があります。漏電の有無を確認する「漏れ電流計(又は、クランプメーター)」を使用しながら測定を進めますが、設備によっては回路数が非常に多く、古い建物では配線が壁に密着していて測定しづらいケースも。
「空調設備やエアコンが漏電の原因として疑われることも多く、ブレーカーごとに細かく測定しながら確認を進めていきます。時間をかけて、丁寧に調査したうえで、お客さまへわかりやすく説明し、「良かったです、安心しました」と声を掛けてもらえた時には、大きなやりがいを感じます」

日々の経験が、日常の変化にもつながった
入社後は、仕事を通じて体力面や日常生活において、大きな変化を感じているといいます。点検業務を通じて地元の地理にも詳しくなり、普段はなかなか気づけない“穴場”のようなお店を発見することもあるのだとか。
「去年の夏頃、住宅街の中にひっそりと佇むレストランの点検を担当しました。気になって後日お昼を食べに行ったのですが、とても美味しかったです」
そんな日々の経験は、プライベートにも変化をもたらしています。
「以前は、片道で疲れてしまっていた距離を往復してもあまり疲れず、前よりもずっと楽に歩けるようになっていて、『こんなに長い距離を歩いても平気だ』と、自分でも驚きました。
以前は少し歩くだけでもすぐに疲れていましたが、現場を回る日々のなかで、自然と体力が身についてきたみたいです。ただ、友人と出掛けた際には、自分だけ平気で歩けてしまうので、友人のほうが先に疲れてしまうこともあって。そんなときは『昔の自分もこんな感じだった』と思い出し、相手のペースに合わせるようにしています」
仕事を通じて得たのは体力だけではありません。周囲への気配りや、相手の立場を考えて行動する意識も、以前より高まっているようです。

経験を積みながら、新たな挑戦に踏み出す!
今はとにかく電験三種の資格取得に励んでいるという飯塚さん。
「丸一日点検業務がある日は帰宅が夜になるため、まとまった勉強時間が取れないのですが、スクーリング制度という1週間集中して勉強できる機会があり、そこで集中して勉強します。すでに『理論』と『機械』の2科目は合格しているので、あとは『電力』と『法規』ですね。
仕事は日中で、基本的に残業も少なく、土日は休み。ワークライフバランスがとりやすいので、計画を立てて勉強に取り組めるんです。そのため、休みの日は通信講座の補助制度を活用し、自宅で動画講義を見ながら学習しています。条件を満たせば会社が受講費を負担してくれるので、その点も助かっています」

月の初めに調査日程を確定すれば、それ以外の日程でお休みを取ることができるため、有給休暇も取得しやすいと言います。オンとオフのメリハリをつけながら、まずは電験三種の資格取得を目指す飯塚さんですが、このほかにも、組合活動の執行役員として、他事業所との交流イベントや、若手同士のつながりづくりにも積極的に参加したいと語ります。
「先輩たちからも『若いうちにいろんな経験を積んだほうがいいよ』と言われて、役員に立候補しました。普段、接点がない職員とも交流ができますし、人見知りなので、この活動を通して、もっといろんな人と話せるようになりたいと思っています」
最後に今後、電気業界で技術者を目指す方々へ、先輩としてアドバイスをお願いしてみました。
「初めは、すべて大変ですが、半年が経つ頃には仕事に慣れ、余裕が生まれるようになります。なので、気後れせず踏ん張ってください。大変なことも多くありますが、それを乗り越えた先に『ありがとう』の言葉があります。心から嬉しい気持ちが湧き上がりますし、まだまだやれる、頑張ろう!って思えますよ」
女性が活躍する電気保安業界へ――飯塚さんが切り拓く未来
飯塚さんが所属する部署の上司である喜佐見さんは次のように話していました。
「現在、飯塚さんは電験三種の資格取得に向けて、スクーリングだけでなく、自主的に通信教育を受講するなど、積極的に学習を進めています。そして、その努力はしっかり実を結び、成果にも表れてきています。自分が将来どうなりたいかというビジョンをしっかり持っていますしその目標に向かって「今、自分に何が必要なのか」を自ら考え、行動している。本当に頼もしい存在です」

さらに、宇都宮事業所をはじめとする県内の各事業所では、女性技術者も増加しており、女性がますます活躍できる環境が広がっています。
「飯塚さんが、『ここで働きたい』と思うようになったのは、高校時代の先輩がいたからだと聞いています。今年度も新たに栃木県内の事業所に女性職員が入職しましたし、女性職員の人数が少しずつ増えてきています。これまで、男性中心の職場というイメージが強く、女性が現場に入ること自体が珍しい時代もありました。しかし今後はさらに女性が増え、複数人で行う『組作業』においても、女性同士で現場を担当する機会も増えていくのではないかと期待しています。
現在、飯塚さんは一般家庭を訪問する業務を担当していますが、ご高齢の女性のお客様からは『女性の方で安心した』という声をいただくことも多いですし、アンケートでも、『とても丁寧だった』『優しい口調で安心できた』といった感想が数多く寄せられています。もちろん本人の人柄による部分も大きいのですが、柔らかく親しみやすい雰囲気があるので、特にご高齢のお客様にとっては安心できる存在なのだと思います」
近年は女性技術者も少しずつ増え、電気保安業界における働き方や現場の在り方も変化し始めています。努力を重ね、着実に成長を遂げている飯塚さんの姿は、これから技術者を目指す次の世代にとって、大きな励みとなるのではないでしょうか。
プロフィール
飯塚愛莉さん
関東電気保安協会 宇都宮事業所 保安一課所属
関東電気保安協会公式ホームページ:https://www.kdh.or.jp/

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