電験三種の交流計算の対策!解くコツや注意点などを解説します。

電験三種の理論科目の中でも、初心者がつまずきやすいのが交流回路の計算。直流回路と違って様々な概念が登場するため、公式を覚えただけではうまく解くことができません。この記事では交流回路の勉強をする人に向けて、回答するコツや特に覚えるべき知識について解説していきます。
目次
回路図を書くクセを身につけよう!

交流回路の計算をする際に意識したいポイントは、回路図を書く癖を身につけることです。
もちろん直流回路の計算でも回路図は重要ですが、交流回路では負荷の種類や計算に使用する数値が多くあります。与えられた条件や途中の計算結果などを書き込んだ回路図を作ることができれば、情報を整理しながら解答できるようになります。なお、実際の試験では解答時間が限られてしまい、全ての設問で回路図を書くのは現実的でないため、簡単な回路は頭の中でイメージできるように訓練してみましょう。
ベクトル図にも慣れておこう

交流回路は電圧や電流の大きさが時間によって変わるため、周期のどこに位置しているかを表す位相という概念が存在し、ある瞬間における交流信号(瞬時値)は時間を変数とした正弦波信号の式で表されます。
信号源や負荷が複数存在する回路では、式や回路図だけで信号の大きさや位相の関係を理解するのは難しいため、これらが直感的に分かるようベクトル図を使って理解していくのが重要です。実際、多くのテキストや問題集がベクトルを用いて解説しているため、より深く理解できるよう必ずベクトルに慣れておきましょう。
交流回路における負荷についてもしっかり理解しておこう

交流回路では負荷に関わる用語として、リアクタンスやインピーダンス、アドミタンスといった用語が頻繁に登場します。問題や解説の内容を正確に理解するためにも、これらの用語についてしっかり理解することも重要です。
交流回路における負荷とは

直流回路では負荷といえば抵抗素子しか存在しませんでしたが、交流回路ではコイルとコンデンサという2つの素子も負荷として扱わなくてはなりません。交流回路ではこれらの負荷が持つ抵抗成分をリアクタンスと呼び、抵抗とリアクタンスの総和をインピーダンス、インピーダンスの逆数(電気の流れやすさ)をアドミタンスと呼びます。
リアクタンスには電流と電圧の位相差を生じさせる性質があり、コイルに流れる電流は電圧より90[°]遅れ、コンデンサに流れる電流は電圧よりも90[°]進みます。実際の計算式ではこれらの性質が虚数単位(j)で表され、コイルのリアクタンスXLはjωL、コンデンサのリアクタンスXCが1/jωCとなります(ωは角周波数のことでω=2πf)。
インピーダンス計算で気を付けること
試験問題によっては、抵抗やリアクタンスの値が初めから与えられている設問もありますが、単位が同じだからといって、これらの値を単純に足し合わせることはできません。というのもインピーダンスは定義上、抵抗とリアクタンスの二乗和の平方根を取る必要があるからです。
また抵抗値が与えられていないときは、各リアクタンスを求める定義式を用いて計算するか、オームの法則を用いて計算する必要があります。特に並列回路の場合、合計インピーダンスを求める式が複雑になるため、アドミタンスを用いて計算するのが一般的です。交流回路では直流回路と違って様々なインピーダンスの求め方があるので、それぞれの計算方法に慣れておきましょう。
力率も使いこなせるようになろう
交流回路における電力計算では力率という概念が新たに登場し、電力の種類も皮相電力と有効電力、無効電力の3種類あります。力率とは皮相電力に対する有効電力の割合のことで、合計インピーダンスに対する抵抗負荷の割合で表すこともできます。
力率が予め与えられている問題も少なくないですが、設問によっては電力やインピーダンス、電流、電圧などの数値から自ら計算する必要もあります。電力計算だけでなく、負荷の接続前後で力率がどう変わったかを問う問題など、いくつかのバリエーションがあるため、力率計算もしっかりおさえましょう。
類似問題でポイントを振り返ろう!
力率の計算問題

令和5年度の上期試験で出題された設問の類似問題として、図のように抵抗とリアクタンスの比から力率を算出する問題を考えてみましょう。解法が分かれば比較的単純な問題ですが、まずはベクトル図を書いてみることで、合計インピーダンスが三平方の定理で求められることが直感的に分かるでしょう。また、この問題では力率とインピーダンスの関係が分からないと解けないため、しっかりと理解することでより重要性が理解できます。
インピーダンス計算を伴う問題

続いて令和6年度の下期試験で出題された設問の類似問題として、異なる電源を接続した際の電流変化について解答する問題を考えてみましょう。先ほどの問題と異なり、今回の問題では回路図が与えられていないため、まずは文章から回路図を起こすことで理解しやすくなるでしょう。また、リアクタンスの定義が分かっていないと、電源周波数の変化がリアクタンスに与える影響が分からないため、これらに関する知識の重要性も理解できます。
まとめ
今回は交流回路の計算を行う上で意識すべきポイントや、しっかりと覚えておくべき知識について、代表的なものを解説してきました。交流回路計算の問題には様々な種類があるため、今回の内容だけで十分とは言えませんが、少しずつ確実に解ける問題を増やしていくことが重要なため、まずは今回のポイントを抑えて勉強することをオススメします。