電気業界の仕事とは?
「ここでしか見ることができない景色がある」沖縄電気建設の技術者3名に聞いたラインマンの仕事の魅力とおもしろさ

鉄塔を建てたり、鉄塔間に電線を張ったりするなど、送電線工事の仕事を行うプロフェッショナル「ラインマン」。私たちの生活に欠かせない電気の供給の一端を担っていますが、地上から高いところでの作業がメインであるため、普段はなかなかその勇姿を見ることができません。
この記事では、沖縄電気建設のラインマン3名から、お仕事の魅力やこの仕事を選んだ理由、これからチャレンジしたいことを伺いました。
目次
参加いただいた有限会社沖縄電気建設のラインマン3名

写真左より
嘉数孝介(かかずこうすけ) さん ラインマン歴13年
伊波一真(いはかずま) さん ラインマン歴9年
瑞慶山良哉(ずけやまりょうや) さん ラインマン歴半年
実際にやってみると本当に面白い!三人三様、ラインマンの仕事を選んだ理由。
ーーみなさんの現在のお仕事について教えてください。
嘉数さん「私はラインマン歴13年で、送電線の保守メンテナンスをはじめ、木を切ったり、電柱建てたり、鉄塔に登って作業をしたりしています。沖縄特有かもしれませんが、鉄塔組立関係から送電線関係に至るまで、すべての業務を担当しています」
伊波さん「ラインマンとしては9年目で、通常のラインマンの業務に加え、スマートフォンや携帯電話で音声通信やネット通信を行うための通信用鉄塔の保守メンテナンスも担当しています」
瑞慶山さん「私はまだ入社から半年と日が浅く、いろんな部署にまわりながら、送電線から通信用鉄塔まで、毎回異なる現場へ出向き、先輩たちから技術を学んでいるところです」

――みなさんが現在のお仕事を選んだ経緯について教えていただけますか?
嘉数さん「私は紹介で沖縄電気建設に入社しました。前職が電気に携わる仕事だったので、それが業界に興味を持つきっかけになりました。実は、沖縄電気建設に入社するまで、鉄塔の存在も、鉄塔に登って作業することも知らなかったんです。実際に鉄塔に登って作業をしてると、非常に楽しくて、やりがいも感じる。入社してすぐに、この仕事は自分に向いていると思いました。高校は普通科でしたし、電気の知識はありませんでしたが、仕事を通して技術と知識を身につけながら資格も取得しました」
伊波さん「私は手に職をつけたいと思い、職業訓練校で電気工事について学び、資格を取得しました。卒業後の就職先について情報を集めていた際に、同じ訓練校の同期で、現在、人事や広報を務めている銘苅さんと共に、沖縄電気建設の職場体験へ参加したんです。そこで実際の作業風景を見て、『かっこいい』と思い、訓練校経由で紹介していただきました。
一般的な仕事の場合、20〜40mもの高さがある場所で作業することなんてありませんよね。私自身は高いところが苦手ではないですし、高いところから見下ろす景色は特別で気持ちがいい。そこが一番惹かれたポイントです」

瑞慶山さん「前職でエアコンの取り付けなどをしていたのですが、そこで電気の世界に興味が湧き、仕事をしながら電気工事士の資格を取得したんです。もっと電気に関わる仕事をしようと屋内配線の求人を探していたのですが、人とは違う仕事がしてみたいと思い、送電線工事ができる沖縄電気建設にエントリーしました。
入社当初は高所での作業は平気だと思っていたのですが、実際に登ってみると落ちるかもしれないという恐怖が湧き上がってきて…。でも、安全帯など装備がありますし、安全が確保できた状態で作業が行えることに安心感を感じ、すぐに慣れることができました」
一般的な仕事では味わえない特別感がそこにある。
――今のお仕事の「ここが好き」「ここが楽しい」というところを教えてください。

嘉数さん「このお仕事は基本的にチームのメンバーだけで仕事を進めていくので、ホウレンソウや共通の合図が通りやすく、仕事がやりやすいんです。また、同じ仕事でも個々にやり方が違うので、そこから学ぶことも多くある。情報交換したり、より綺麗に素早く作業するにはどうすべきかを話し合ったりして、互いに切磋琢磨しながら技術を向上し合えるのが楽しいですね」
瑞慶山さん「普段登れないような高いところに登って、毎回、いろんな景色を見ることができるのが楽しいですね」
伊波さん「重量物を鉄塔の上で交換する作業をはじめ、先輩たちの仕事を見て学ぶこともありますし、自分でこうした責任がある仕事を担当できることに意義を感じています。クレーンや重機が立ち入れない箇所で作業をする際は台棒で施工するなど、普通では経験できないことができるのがこの仕事の醍醐味です。また、現場によってその都度、状況も異なりますので、毎回、適切な方法を考えて実行しなくてはなりません。常に新しい体験や学びがあるので面白いんです」
――お互いの尊敬ポイントについてそれぞれお聞かせください。
伊波さん「嘉数さんは、技術はもちろんのこと、作業の効率化を考えて、まわりとも相談しながら進めてくれるんです。また、今まで培ってきた技術や知識もしっかり教えてくださるし、本当に尊敬できて頼れる先輩です」
瑞慶山さん「まだ一緒の現場を経験していませんが、みんなから作業が早いと聞いています。ご一緒になった時に、嘉数さんから見て学び、いろんなことを教えていただきたいです」

嘉数さん「伊波くんは本当になんでもできるよね。私から意見を求めて相談したときも、『それ、すごくいい!』っていう案がポンポンと出てくるから、話し合いながら仕事をするのが本当に楽しい。引き出しが多いのも尊敬ポイントですね。あと、顔が好きです(笑)」
瑞慶山さん「伊波さんとは現場を一緒に担当したことがありますが、本当に優しくて尊敬できる先輩です」
嘉数さん「ラインマンはまだ認知度が低いですし、若い人にはなかなか興味を持っていただきづらい職業かもしれません。最近ではSNSやメディアでラインマンを取り上げていただける機会が増えましたが、高所での作業がメインですので、『私にはできない』と思われる方も多くいらっしゃいます。
そんな中、若くしてこの世界に飛び込み、真っ直ぐに頑張っている瑞慶山くんは、本当にチャレンジャーだしかっこいいなって思う。初めは少し怖かったかもしれないけど、今では高所にもすっかり慣れて毎日楽しそうに仕事をしています。ラインマンは難しそうに見えるかもしれませんが、やってみると楽しいし、やりがいのあるお仕事なんです。今後は一緒に仕事しながら、いろんなことを教えていきたいですね」
伊波さん「瑞慶山くんとは最近、ビルなどの建物の上にある鉄柱に登る仕事を一緒に担当したんですが、足場が悪いなかでも鉄柱に登って作業している姿を見て『やるな』と感心しました。プライベートではテニスをやっているし、もともと運動神経がいいから、もう、伸びしろしかないですね」
高いところから見る風景も、下から鉄塔を見上げるのも、どっちもいい
――お仕事の中で、もっとも印象深い体験やエピソードをお聞かせください。
嘉数さん「鉄塔を一から組み上げて、完成した後に下から見上げるのが好きなんです。その喜びは何年経っても変わりませんね。

あと、沖縄は山の上に鉄塔があるので、必要な工具などの荷物を自分の背中に担いで山を登り、作業をすることがあります。山がゴツゴツしているので、車でいくことができないんです。なかなか体力が必要な作業ですし、初めて登った時はずっと筋肉痛がありましたが、今は筋力がついて、疲れにくくなっただけでなく、体のラインも変わって自信がついた。荷物自体はおそらく20〜30kgぐらいあると思いますが、担いでいかないと作業ができませんから。とにかく気合いで登っています(笑)」

瑞慶山さん「先週初めて鉄塔に登り、碍子(がいし)を渡って電線に乗ったんですが、進むのはいいけど戻る時に怖すぎては時間がかかってしまって。少しずつ慣れて、なんとか降りることができましたが、日に日に慣れていくんですよね。今は何もかもが初めてのことなので、どの体験も楽しく、印象深いです」
伊波さん「初めて鉄塔の上を登り、架空地線を張り替え作業をするために電線の上に乗った時、空の上にいる気がして気持ちよさを感じました。怖いと思いつつも、登れた嬉しさがこみ上げてきて、こんな世界があるんだなあと。その時のことはまだ印象深く覚えています。ちなみに、入社してすぐの仕事が山に登っての作業だったのですが、その時は『あ〜。なんか間違ったかな』って思いましたけど(笑)」
まとめ:ラインマンは社会に必要不可欠な、超絶かっこいい仕事です!
――今後チャレンジしたいことはありますか?
瑞慶山さん「現場のことはまだこれからですが、嘉数さんや伊波さんみたいに、なんでもこなせるようになっていきたいと思っています」
伊波さん「最近、施工管理の資格を取得したので、今後は資格を活かした業務に携わっていきたいです」
嘉数さん「いろんな技術をスマホで確認したり、先輩から新しい作業方法を学んだり、自分でも見つけたりするなど、常に腕を磨くために勉強しているのですが、先輩たちは自分の経験をもとに、自身で必要な工具をゼロから作っているんです。部分的な作業に使うためだけに作られているのですが、それで作業が驚くほど早くなるんです。
私自身もそういう発想力や考え方が持てるようになりたいですし、先輩から多くを学びながら、いつか、先輩たちを超えて認めてもらえるようになりたいですね」
――最後に、「ラインマン」ならではの魅力をお聞かせください。

伊波さん「送電線工事では、宙乗機(ちゅうのりき)に乗って電線から次の鉄塔に渡ることがありますが、こういう経験ってなかなかできることじゃないと思うんです。この仕事は、普通に生活していたら見ることができない特別な景色を眺めることができるのも魅力です。沖縄はスコールが多いのですが、『あ、雨が向こうで降っているからそろそろこっちにも来るぞ』とわかったり、綺麗な虹がかかっている空を見たり。それはラインマンだけの特権です」
嘉数さん「高いところにある線に乗って作業をする。怖いし、自分にはできないという人も多くいますが、やってみると意外とできてしまうものだったりするんです。一人ひとりが使命と責任を持って仕事に従事していますし、少しでもラインマンの仕事の面白さ、楽しさが伝わってほしいと願っています」
プロフィール
有限会社沖縄電気建設
公式ウェブサイト:https://www.oki-denken.co.jp/
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