生活と電気
家庭に電気が届くまで|発電から配電までの仕組みと関わる職種を紹介

私達の暮らしに欠かせない電気は、スイッチひとつで使える便利な存在です。しかし、その裏には複雑で精密な仕組みが隠れています。
発電所で生み出された電気は、変電所を経由して高圧から低圧へと変換され、送電線や配電設備を通じて各家庭へと届けられます。
安全性や安定供給を支える技術者たちの働きによって、私たちは日々の生活を快適に過ごすことができるのです。
今回の記事では、家庭に電気が届くまで、どんな施設でどんな人達が携わっているかについて、詳しく解説していきます。
目次
家庭に電気が届くまで 発電所から家庭までの電気の流れ
電気はまず、火力・水力・原子力・再生可能エネルギーなどの発電所で作られます。その後、高電圧で送電線を通じて変電所へ送られ、段階的に電圧を下げながら配電用変電所へと運ばれます。
そこから配電線を通じて地域へ供給され、家庭の近くにある電柱の上の柱上変圧器で100〜200ボルトに変換されて、ようやく家庭のコンセントに届きます。
この一連の流れは、送電技術者や発電所オペレーターの手によって安全かつ安定的に管理されています。

①電気をつくる:発電所
電気を作るのは発電所です。発電所では、火力・水力・原子力・再生可能エネルギーなどのエネルギーを使ってタービンを回し、発電機で電気を作ります。
発電所の仕事

発電所の仕事は、規模や方式(火力・水力・原子力・再生可能エネルギー)などによってシステムが異なり、仕事内容も変わります。共通するのは、設備の運転状態を計測・監視し、記録することです。
設備の運転や点検・保守を行い、安定的な電力供給を支えています。日々の業務を確実に実施することが最も重要です。さらに非常時に備え、知識や技術を磨き、的確に判断・対応できる力も求められます。

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②電気を送る:送電線
発電所で作られた電気は、高電圧で送電線を通じて変電所へ送られます。送電線の安全性維持に欠かせないのが、ラインマン(送電線作業員)という存在です。
送電線×ラインマン

主な役割
高電圧な電気を安全・確実に送るための送電線や鉄塔の保守・点検。
具体的な業務
鉄塔の点検・修理、送電線の張替え、災害時の復旧作業。
必要な資格
必須資格はないが、高所作業や安全対策に関する訓練・教育を受ける必要がある。
ラインマンは、送電線の建設・保守に携わる専門技術者であり、電気の安定供給を支える重要な存在です。ラインマンは鉄塔の組立や電線の架設を行い、地形や気象条件に応じた高度な技術を駆使して作業を進めます。
高所での作業や厳しい自然環境下でも安全を確保しながら、電力インフラの信頼性を維持する役割を担っています。
作業する鉄塔は100メートル超える場所もあり、高い技術や特別な技能を必要とする仕事です。
社会のライフラインを守る、まさに縁の下の力持ちと言える存在です。

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③電圧を変える:変電所
変電所は、発電所でつくられた高電圧の電気を、家庭や工場などで使える電圧に調整する重要な施設です。
変電所の仕事

変電所の仕事は、送られてきた電気の電圧を変換し、安全に家庭や工場へ届けるためのシステムを管理することです。仕事内容は主に、変圧器や遮断器など設備の運転状態を監視・点検し、異常がないか確認・記録することです。
設備の点検、メンテナンス、修繕工事・更新、改修などを確実に行うことで、電気の安定供給を支えています。また、落雷や機器の故障など非常時には迅速な判断と対応が求められるため、設備に関する知識や技術を日頃から磨いておくことも欠かせません。

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④電気を配る:配電線
配電線は、変電所から家庭や施設へ電気を届けるための「電気の道」です。
電柱に張り巡らされたこのネットワークを通じて、私たちの暮らしに欠かせない電力が安定的に供給されています。その維持管理を担うのが「配電マン」と呼ばれる技術者たちです。
配電線×配電マン

主な役割
電柱や配電線の保守・修理を行い、家庭や施設へ電気を届ける。
具体的な業務
電線や機器等の点検・交換、停電や災害時の復旧作業。
必要な資格
必須資格はないが、高所作業や安全対策に関する訓練・教育を受ける必要がある。
配電マンは高所作業車を使って、電線の点検や修理、新設工事などを行います。
災害や事故による停電時には、迅速な復旧作業を通じて地域の安心を支える、インフラの守護神です。
現場ではチームで連携しながら、安全を最優先に作業を進めるため、高度な技術と判断力が求められます。配電マンの働きによって、私たちは日々の生活を滞りなく送ることができているのです。
たとえば沖縄では、2023年7月に襲来した台風6号により、電気インフラにも甚大な被害が出ました。そのとき、配電マンが10日間ほど復旧作業にあたり、停電解消に努めています。

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⑤電気を使う:家庭・商店・オフィス・工場など
発電所で作られた電気は、送電線から変電所に届き、電圧を調整し、配電線を通じて、家庭や施設へようやく電気が届きます。
私達が普段何気なく電気を使えるのは、電気工事士や電気主任技術者の働きが欠かせません。
各建物×電気工事士

主な役割
建物内の配線工事や電気設備の設置・修理を行う。
具体的な業務
照明・コンセント・分電盤の設置や交換、配線の点検・改修。
必要な資格
第二種または第一種 電気工事士。
一般住宅や小規模店舗、工場、ビル等の電気設備に係る電気工事に従事するためには国家資格である電気工事士の資格取得が必要です。
安全かつ安定した電力供給を実現するために、配線作業や機器の取り付けを正確に行い、事故やトラブルを未然に防ぎます。
資格を取得することで、安全基準に基づいたハイレベルな施工水準による電気工事を提供し、電気の安全を守るプロフェッショナルとして活躍できます。

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各建物×電気主任技術者

主な役割
ビルや工場などの受変電設備を管理し、安全に電気を供給する。
具体的な業務
高圧設備の点検・監視、法令に基づく保安業務、異常時の対応。
必要な資格
第三種 電気主任技術者
電気主任技術者は、工場・ビル・商業施設などの電気設備の安全と安定運用を担う国家資格保有者です。電気設備の保守・点検・監視を通じて、感電や火災などの事故を未然に防ぎ、法令に基づく安全管理を徹底します。
特に、電気事業法では一定規模以上の施設において、電気主任技術者の選任が義務付けられており、設備の設計から運用、トラブル対応まで幅広い業務に携わります。
また、電気主任技術者は電力の安定供給を支えるだけでなく、災害時の復旧や地域社会への貢献も果たしており、社会インフラの根幹を支える重要な存在です。

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まとめ
今回は電気が家庭に届くまで、発電所・送電線・変電所・配電線の施設・設備で、どんな人達が携わっているかについて解説しました。
これらの場所では、電気主任技術者、ラインマン・配電マン・電気工事士といった技術者が、電気インフラの安定に役立っています。
電気が家庭に届くまでの流れを知ることで、身近なエネルギーの大切さを改めて実感できます。