現場インタビュー
強固なチーム力×防災対策×ITで沖縄の電力を守る!おきでん(沖縄電力)の配電マンに仕事の魅力を聞いてみた!

東西約1,000km、南北400kmの広大な海域に、大小160あまりの島で構成されている沖縄県。年間平均気温23.1℃の自然豊かな沖縄ですが、本州の南に位置することから台風が接近しやすく、特に8月〜9月は接近数が増え、停電のリスクが高まります。そうした特徴的な土地で、電気の安定供給に向けて取り組んでいる沖縄電力さま。
停電量削減に向けた直営力の強化や現場作業の効率化・高度化を取り組む中で、2022年に本店直営チームを発足し、翌2023年には支店直営チームを発足。直営体制の強化を図りながら、停電発生時の早期復旧や安全対策に注力されています。本記事では、本店直営チームの一員として日々技術を磨き続けている仲宗根周さんにお話を伺いました。
小学生のときに目の前で見た復旧作業が電気業界への扉を開いた
――仲宗根さん現在のお仕事について教えてください。
現在の業務は、主に教育担当と工法開発の2つです。教育に関しては新入社員、配電部内職員の教育を、工法開発に関しては、間接活線工法(※)の拡大に向けた工法開発や現場での課題を洗い出し、メーカーのご担当者と対話をしながら安全性と効率を両立できる工法へ改善したり、材料の変更などを提案したりしています。
※間接活線工法は、電線に直接触れない間接機材を使うことで、従来の活線作業より安全性が向上した工法です。現在、適用範囲拡大に向けた機材開発が進められています。

もともと無駄を省いたり、効率的に作業したりすることが得意なので、現場での経験をもとに、手順を見直して、どのようにすれば効率的かを考える工法開発の仕事は非常に面白いんです。また、他電力さんやメーカーさんなど、外部の方々とやり取りできるのもこの仕事の魅力ですね。
――どのような理由から電力会社への就職を選んだのでしょうか。
沖縄では毎年のように台風が接近するため、停電が起こることも多く、停電中は懐中電灯1本で生活していました。そのため、幼い頃から電気のありがたみや電気の大切さを感じていたと思います。
小学校低学年の時に、周りの家は灯りがついているのに、自分の家だけ停電していたことがあったのですが、電力会社の作業員さんが駆けつけ、慣れた手つきでテキパキと復旧作業をしてくれたんです。その背中を見て、「なんてかっこいいんだろう」と。中学生になり、進路を考えるようになったとき、その時のことを思い出して工業高校への進学を決意。資格を取ることや手に職をつけることの重要性を語る父の言葉も後押しとなり、電気科を専攻しました。
台風、塩害…自然災害に打ち勝つ、沖縄電力ならではの取り組み
――今までのお仕事の中で一番印象に残った業務とその時のエピソードについてお聞かせください。
2023年7月に襲来した、台風6号は沖縄本島を通過し、進路を切り替えてUターンした結果、沖縄に大きな被害をもたらしました。大雨、停電、断水、建物の倒壊など、甚大な被害に見舞われた沖縄。私たち、沖縄電力は、電気の復旧を行うために10日ほど復旧作業にあたりました。
これまでの沖縄電力の社員は、主に「引込線」と呼ばれる、電柱から建物への電気を送る復旧工事を担当してきました。一方で、電柱上の電線「高圧線」や碍子(がいし)といった外線設備の復旧工事は、グループ会社である沖電工さんや協力業者さんに依頼する体制を取っていました。
しかし2022年に、社内目標に直営力の強化が掲げられ、現場力と技術力向上に向けて直営チームが発足。そのチームで初めて外線工事に当たったのが台風6号の復旧作業だったのです。

この時は沖縄本島の北にある名護市で復旧作業を行っていたのですが、作業をはじめてから6日、7日目だったでしょうか。その日はまだ、周り一帯が停電している状態で、復旧作業を行ってから、電気を送る作業を行う予定になっていました。そこで、私がちょうど電柱に設置された開閉器を操作しようとしたとき、近くにあるアパートのベランダから「作業員さんがきているよ!もうすぐ電気がつくんじゃない?」と、灯り(復電)を待つお客様の声が聞こえてきたんです。
いよいよ準備が整い、スイッチをオン。灯りが一気に広がって、街灯やそのアパートにも灯りが点りました。その瞬間、「やったあ!電気がついた!」「電力さんありがとう!」と大きな喜びの声が。長期かつ大規模な災害でしたので、その分、復旧作業も大変でしたが、チームの支えがあったからこそ乗り越えることができましたし、早く灯りを届けたいという思いで、必死になって作業を行いました。この時の「ありがとう」というお客さまの声は今でも鮮明に覚えています。
――大規模な災害対応には、技術力とチーム力が求められるかと思います。発足から台風対応までの1年間、チーム力を向上させるためにどのようなことに取り組んできたのでしょう。
直営チーム5名が沖電工の技術者さんと現場へ向かい、沖電工さんに作業をレクチャーいただきながら、共に作業を行い、実践を交えながら1年かけて技術を確実に身につけ、チーム全体のスキルを上げていきました。作業は一人では行うことができません。チームで連携するからこそ、迅速かつ的確な作業を行うことができるんです。私たちのチームは班長1名、作業員4名。日々のチームミーティングをはじめ、業務外でもフランクに集まることも多く、コミュニケーションが活発なため、みんなフレンドリーで結束が強い。日々の会話や食事を共にする時間を作り、親交を深めることで、チームとしての一体感がより強くなっているのだと思います。
――沖縄という地域性を考慮し、自然災害に関する対策で強化していることはございますか?
沖縄電力では次のような対策を進めています。
まず、遠制開閉器の拡充に取り組んでいます。現場に出ることができない暴風時等においても、事務所から遠制開閉器の「入」「切」操作を遠隔で行うことができるため、事故点のない健全区間への早期送電することが可能になっています。さらに、強風に対する支持物や電線の対策として、風圧荷重に強い電柱や電柱を支えるワイヤー等で支持物強化や受風時の風圧荷重を低減できる低風圧電線など、地域の特性に合わせた資材を取り入れています。

そのほかにも、ハード面では、樹木の接触に強い耐摩耗電線や引込線については絶縁性が低下し火花が発生する「トラッキング現象」が起きにくい電線へ取替を進めることで、火花の発生や断線事故の低減につなげています。ソフト面では、被害の情報共有や復旧工事の手配・完了報告ができるアプリを導入して、ペーパーレス化や効率化を図ったりしているんです。以前は全て紙ベースで運用していましたが、現在は現場を巡回した際にアプリへ登録することで、地図上に事故地点がプロットされるので、作業の優先順位をつけやすくなりました。さらに、地図上の位置情報により目的地までスムーズに到着できるようになったことで、迅速な現場対応が可能になっています。
技術力強化にあたっては、月に1〜2回現場へ出て設備の取り替え作業などを実施したり、月に一度、本店の直営チームと各支店の直営チームとの合同工事を実施しており、実務を通して技術を高めています。また、直営チームのメンバーだけでなく、直営チーム以外の技術者にも技術力向上に向けた教育に取り組んでおり配電部全体で技術力の底上げを目指しているんです。
――技術力向上に向けた訓練ではどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。
変圧器ってご存知でしょうか。配電線を伝って送られてくる6,600Vの高い電圧を、ご家庭内の機器で使用できるように100Vもしくは200Vに変圧するための機器のことです。この変圧器を取り替えたり、使わなくなった電線路がそのままに放置されていると事故につながるため撤去作業を行ったりしています。これらの工事は、これまで全て委託をしておりましたが、今は一部の工事を直営チームでスケジュールを組んで作業を行っています。また、社内にある訓練設備を使って、年に一度、離島を含めた全支店から代表チームを集結し配電技能競技大会を開催し、配電技能を競い合いながら、技術を磨きあっているんです。短時間でいかに安全かつ早期の復旧作業が行えるか、互いに切磋琢磨し合っていますよ。
誰もが安心・安全に高度な作業が行えるような“基盤”を作っていきたい
――現在のお仕事の中で課題に感じていること、そこへ対して取り組んでいることはございますか。
現在、課題に感じていることは2つあります。1つは、沖電工さんから学んだ技術や直営チームで培ってきた技術を、社内でどのように継承していくかということです。社員で緊急工事対応できる体制づくりを進めていますが、日々の事務業務や実務に追われてしまい、十分な訓練時間の確保が難しいことが特にネックとなっています。また、これまで口伝えで技術が伝わってきたこともあり、技術の体系化が進んでいないために、習得に個人差がでやすい点も課題です。
そこで現在は、作業手順の動画化に取り組み、場所や時間に縛られずに学べる環境の整備を始めています。将来的には、緊急工事をすべて社員で対応できる体制を確立することが目標です。それが実現すれば、早期復旧だけでなく、電工さんの負担軽減にもつながるため、直営力をさらに上げていきたいです。

もう1つは、働き手不足の解消です。先述しましたが、配電線工事の作業は体力も技術力も必要ですし、大変な仕事という印象が強いのも事実ですが、多くの人々の生活を支えている、必要不可欠な仕事です。ですので、もっとこの仕事について知っていただきたいですし、私たちも魅力をアピールしていくべきだと思っています。
――今後、仲宗根さんがチャレンジしていきたいことを教えてください。
近年は女性職員も増えていますし、日常的に作業を行わない社員でも使いやすいよう、工具を軽量化したり、より安全に特化したものへ変えたり、作業方法を見直したり、誰が行っても同じ技術で同じ成果が得られるように、工法開発に取り組んでいきたいです。
また、直接活線工法と間接活線工法の割合は現在、4対6ですが、将来的には直接活線工法を廃止し、間接活線工法100%の体制に移行するという配電部門の目標達成に向けて、自分自身の知識や経験を活かしていきたいです。
こうした取り組みを通して、作業負担の軽減や安全性の向上にもつながりますし、結果として、より多くの人が配電業務に携わることができる環境づくりにも貢献できると考えています。

――沖縄電力でどのようなキャリアを築いていきたいですか?
引き続き、配電部でキャリアを積んでいきたいですね。本店にいると会社全体の動きを俯瞰して見ることができて面白いんです。俯瞰的にものごとを見ることで、より改善につながるような仕組みづくりを考えることができますから。本店の直営チームは、各支店の直営チームの主幹部署として統括する立ち位置になりますので、今はコツコツと技術を身につけ、将来的にはマネジメントができるようになりたいと考えています。そこで現場視点で作業効率向上に向けた方法を構築したり、必要なツールを取り入れたりしてさらなる効率化を実現できると嬉しいですね。
――最後に、電気業界に興味を持っている方へ、メッセージをお願いします!
配電の仕事って、実はとても人の役に立っている実感が強い仕事なんです。
電気が止まってしまったときに、私たち配電マンが現場へ向かい、設備を確認し、復旧作業を行って、灯りが戻る瞬間。その「ありがとう」の声を、直接聞くことできるのは、この仕事ならではのやりがいです。
私たちの仕事は、電気が当たり前に使える生活を陰で支える仕事です。表に出ることはほとんどありませんが、人のために役に立ちたい、人の喜ぶ顔が見たいという使命感が強い方にはピッタリかと思います。
プロフィール

仲宗根 周(なかそね・しゅう)さん
沖縄電力株式会社 配電部所属
1994年12月生まれ(満30歳)沖縄県立美里工業高等学校を卒業後、2013年に技術職として入社。保有資格は、第二種電気工事士、第一電気工事士、危険物取扱者 乙種1~6類、消防設備士乙7類。
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