生活と電気
僕らの生活は全て電気が必要だ〜鉄道・照明・エレベーター、身近な電気機器の仕組みを解説

世の中には電気の力を応用した機器がたくさんありますが、今回はその中でも比較的身近な機器の仕組みを解説します。電験三種の試験でも問われることの多い機器も扱っているので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
電動機を応用する機器
電気の力を応用した機器として、もっとも分かりやすいのが、電気を動力に変える電動機(モータ)です。代表的な電動機の種類や原理、そして電動機を応用した機器について理解しましょう。
電動機

電動機とは名前の通り電気の力を動力に変える機器の総称で、フレミングの左手の法則を利用して回転力を生み出します。種類としては直流電源で駆動する直流電動機と交流電源で駆動する交流電動機、そしてパルス信号を利用して回転させるステッピングモータに大別されます。
また、交流電動機は更にファラデーの法則における誘導機電力を利用する誘導電動機や、回転磁界が生み出す吸引力を利用する同期電動機などが有名です。電動機は種類によって回転原理や動作特性が異なり、電験三種の試験においても多数の問題が出題されやすいため、1つずつ理解を深めていきましょう。
電車

電動機の力を利用して動く車両といえば、電車を欠かすことはできません。電車で使用される電動機は主電動機と呼ばれ、電線からパンタグラフを経由して得られた電力で動きます。電車は始動時に非常に大きなトルクが求められる反面、走行時は慣性のおかげでトルクがほとんど要らないため、主電動機にはトルクが速度に反比例する特性が求められます。
他にも回転中の騒音が少ないことや、容易に負荷を変化させられるといった特性も重要視されることから、主電動機には従来、直流電動機の一種である直巻電動機や複巻電動機が多く採用されてきました。しかしブラシと呼ばれる摺動部のメンテナンスに手間が掛かることから、パワーエレクトロニクスが発展した今では交流電動機の一種である誘導電動機が多く採用されています。
エレベータや巻き上げ機

電動機が生み出すトルクを垂直方向の牽引力へ変換する機械として、エレベータや巻き上げ機も知られています。電験三種の試験ではこれらの機械を動かすのに必要な電動機出力を求める問題が多く、重力に逆らって物体を持ち上げるのに必要な動力(エネルギー)の関係が理解できれば、比較的点数を獲得できる問題がほとんどです。
巻き上げ機の問題は比較的シンプルな問題が多いのに対し、エレベータに関する問題ではかごの重量や釣り合い重り(反対側に吊り下げられる重り)も考慮しなくてはなりません。そのため複雑な計算が必要と思われがちですが、基本的な考え方は巻き上げ機と同じです。
照明機器
白熱電球や蛍光灯、LEDなどの照明機器も電気の力を応用した機器の一つです。これらの違いに加え、試験対策として求められる問題も把握しておきましょう。
白熱電球・蛍光灯・LEDの違い

・白熱電球は、口金がついたガラス球の中にフィラメントと呼ばれる抵抗線を封入した構造で、フィラメントに電流を流した時に生じるジュール熱によって光を生み出しています。
・蛍光灯は低圧のガラス管内に水銀原子を封入した構造をしており、ガラス管の内側には蛍光塗料が塗布されています。放電によって電極から飛び出した電子が周囲の水銀原子と衝突すると紫外線が生まれ、この紫外線が蛍光塗料に当たることで発光します。
・LEDは、発光ダイオードと呼ばれる素子そのもののことです。一定以上の順方向電流を流すと発光するという発光ダイオードの性質そのものを発光原理として利用しており、熱損失などの少ない省エネかつ長寿命な照明機器として知られています。
試験対策として覚えておくべき照明の知識

近年、電験三種の試験では、照明にまつわる関連用語の意味などを問う問題や、光源から照射される光の照度や光度を問う問題が多いです。具体的に覚えておくべき関連用語としては、光束や光度、照度、輝度が挙げられます。
光束とはある光源が発する光の量を表したもので、照明機器そのものの明るさと考えて差し支えありません。また光度とはある方向に向けて発せられる光の強さを表したもので、照度は単位面積に照射される光束の量のこと、輝度は特定の方向から見た時の単位面積辺りの明るさのことです。試験における照度計算は公式を暗記していれば解ける問題がほとん土ですので、確実に覚えておきましょう。
電熱器

電気エネルギーを熱エネルギーとして取り出す機器として電熱器も知られています。代表的な電熱方式としては、抵抗に電流を流した際に生じるジュール熱を利用して加熱する抵抗加熱や、被加熱物となる導電体を交番磁界下に置き、導電体内に流れる渦電流のジュール熱を利用して加熱する誘導加熱などが挙げられます。
また被加熱物が誘電体の場合、交番磁界中に置くと分極が繰り返し形成されますが、この時の誘電損失を利用して加熱する方式を誘電加熱と呼び、電子レンジの原理としても知られています。この他にもアーク加熱や赤外加熱なども代表的な加熱方式として知られており、試験においても各方式の特徴や計算について問われる問題が毎回出題されるので、しっかりと対策しておきましょう。