電気機器のしくみ
電波時計の仕組みとは?時間がずれない理由や受信の仕組みをわかりやすく解説
私たちが普段使っている腕時計や掛け時計、目覚まし時計の中には、「電波時計」と呼ばれる製品があります。電波時計は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が送信する標準電波を受信し、自動的に時刻を補正するため、標準電波を正常に受信できれば、常に正確な時刻を表示できることが大きな特徴です。この記事では、電波時計の仕組みや受信の流れ、メリット・デメリット、電波を受信できない場合の対処法までをわかりやすく解説します。
目次
電波時計の仕組みとは
電波時計とは、日本では国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が送信する「標準電波」を受信し、自動で時刻を補正する時計です。時計内部のクオーツ(水晶振動子)で時間を刻みながら、定期的に標準電波に含まれる時刻情報を受信します。受信した時刻情報をもとに表示時刻を自動で補正するため、多少の誤差が生じても定期的に補正され、正確な時刻を維持できるようになっています。
さらに、多くの電波時計は時刻だけでなく、年・月・日・曜日の情報も自動で更新します。うるう年や月末の日付変更も自動で行われ、利用者が手動で時刻やカレンダーを合わせる手間がほとんどありません。家庭用の掛け時計や置き時計、目覚まし時計、腕時計など、さまざまな製品に採用されています。
電波時計はどうやって時を刻むのか

1. クオーツ時計として時刻を刻む
電波時計の内部には、水晶振動子(クオーツ)が組み込まれています。水晶振動子は電圧を加えると、一定の周波数で規則正しく振動する性質があり、この振動を利用して1秒ごとに時間を刻んでいます。普段は一般的なクオーツ時計と同じように動作しているため、標準電波を受信していない間も時計は止まることなく時刻を表示し続けることができます。
2. 標準電波を受信する
電波時計は、標準電波送信所から送信される電波を1日数回、自動的に標準電波の受信を試み、正確な時刻、年月日、曜日、カレンダー情報を受け取ります。多くの電波時計は、電波ノイズが少なく受信しやすい深夜から早朝にかけて自動受信を行います。
3. 時刻を自動で修正する
受信した標準電波の時刻情報と時計内部の時刻を比較してズレがあった場合、自動的に修正します。時計が数秒遅れていた場合でも、標準電波を受信すると正しい時刻へ補正されるため、長期間使用しても大きな誤差が生じることはほとんどありません。
電波を受信できない場合は?
地下やトンネル、高層ビルの中などでは、標準電波を受信できないことがありますが、電波を受信できなくても時計が止まるわけではありません。電波時計はクオーツ時計として動き続けるため、通常どおり時刻を表示し、電波を受信できる場所へ移動したり、次回の自動受信のタイミングになったりすると、再び正しい時刻へ修正されます。
世界6局対応の電波時計が受信する標準電波送信局
世界には、電波時計の時刻合わせに利用される長波標準電波送信局がいくつか設置されています。一般的に「世界6局対応の電波時計では、日本、中国、アメリカ、ドイツ、イギリスにある計6局の標準電波送信局」を受信対応としています。各送信局は、それぞれの国・地域の標準時をもとにした時刻情報を、保守点検や障害時などを除き、原則として24時間365日送信しています。
| 国・地域 | 送信局 | 周波数 | 主な受信エリア |
| 日本 | おおたかどや山標準電波送信所(福島県) | 40kHz | 日本国内(主に東日本) |
| 日本 | はがね山標準電波送信所(佐賀県・福岡県境) | 60kHz | 日本国内(主に西日本) |
| ドイツ | DCF77(マインフリンゲン) | 77.5kHz | ヨーロッパ |
| イギリス | MSF(アントホーン) | 60kHz | イギリス周辺 |
| アメリカ | WWVB(コロラド州フォートコリンズ) | 60kHz | 北アメリカ |
| 中国 | BPC(河南省 商丘市) | 68.5kHz | 中国 |
日本の標準電波送信局
日本には2か所の標準電波送信所があります。福島県にあるおおたかどや山標準電波送信所では東日本を中心に標準電波を送信、佐賀県と福岡県の県境付近にあるはがね山標準電波送信所は西日本を中心に標準電波を送信しています。
ドイツ「DCF77」
ドイツのDCF77は、ヨーロッパで広く利用されている標準電波です。77.5kHzの長波を送信しており、ドイツだけでなくフランスやオランダ、ベルギーなど広い地域で利用されています。
イギリス「MSF」
イギリスのMSFは、イングランド北西部カンブリア州アントホーンの送信所から60kHzの長波標準電波を送信する標準時刻信号です。主にイギリス国内を中心に電波時計の時刻合わせに利用されています。
アメリカ「WWVB」
アメリカのWWVBは、コロラド州フォートコリンズ近郊の送信所から60kHzの長波標準電波を送信しています。電波はアメリカ本土を中心に広い範囲で届き、カナダやメキシコの一部でも受信できる場合があります。アメリカやカナダで販売されている多くの電波時計が、この電波を利用しています。
中国 BPC
中国のBPCは、68.5kHzの長波標準電波を送信する標準時刻信号です。中国国内向けの電波時計が主に利用しており、日本のマルチバンド対応時計の中には、この電波を受信できるモデルもあります。
世界6局対応の電波時計「マルチバンド6」とは
近年の腕時計には、マルチバンド6(MULTIBAND 6)と呼ばれる機能を搭載したモデルがあります。これは、主にカシオの電波ソーラー腕時計などに採用されている機能で、日本・中国・アメリカ・イギリス・ドイツの標準電波を受信し、時刻を自動修正します。「マルチバンド6」の「6」は、日本に2局、海外に4局、計6つの標準電波送信局に対応していることを意味します。海外旅行や海外出張でも対応地域内で標準電波を正常に受信できれば、自動で現地の正しい時刻に合わせられるため、世界中で正確な時刻を利用できるのが大きな魅力です。ただし、利用するには都市設定やタイムゾーンを設定する必要があります。
標準電波は世界共通の時刻基準(UTC)をもとに送信されている

電波時計が受信している標準電波には、正確な時刻や日付などの情報が含まれています。これらの情報は、世界共通の時刻基準である協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)を基準に定められた、各国・地域の標準時にもとづいています。UTCとは、世界中で時刻を統一するために採用されている国際的な時刻基準です。世界各地の原子時計のデータをもとに算出されており、非常に高い精度を誇ります。UTCは、航空機や人工衛星、インターネット、通信システム、金融取引など、世界中のさまざまな分野で共通の時刻基準として利用されています。
日常生活で使用される各国・地域の標準時は、UTCを基準に定められています。たとえば、日本で使用されている日本標準時(JST:Japan Standard Time)は、UTCより9時間進んだ「UTC+9時間」です。そのため、日本の標準電波には、日本標準時(JST)の時刻や日付、曜日などの情報が含まれており、電波時計はこれらの情報を受信して時刻を自動で補正しています。
つまり、日本の標準電波は、世界共通の時刻基準であるUTCを基準に定められた日本標準時(JST)の正確な時刻情報を送信しています。電波時計はこの情報を定期的に受信し、内部のクオーツ時計で生じるわずかな時刻のずれを自動で補正するため、長期間にわたって高い精度で時刻を表示できるのです。
なぜUTCが基準なの?
もし国ごとに異なる基準で時刻を管理してしまうと、国際通信や航空・鉄道の運行、インターネットの通信などに大きな支障が生じるおそれがあります。そのため、世界共通の時刻基準としてUTCが用いられ、各国・地域はUTCを基準に自国の標準時を定めています。日本の電波時計は、UTCを基準に定められた日本標準時(JST)の時刻情報を含む標準電波を受信し、時刻を自動で補正する仕組みです。誰でも正確な時刻を利用できる仕組みになっているのです。
まとめ
電波時計は、世界共通の時刻基準である協定世界時(UTC)を基準に定められた日本標準時(JST)の時刻情報を含む標準電波を受信し、自動で時刻を補正する時計です。普段何気なく使っている電波時計ですが、その裏側では、原子時計にもとづく高精度な時刻管理や標準電波、UTCといった高度な技術が活用されています。こうした仕組みを知ることで、電波時計の便利さや正確さをより深く理解できるでしょう。

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