東日本大震災で知った電気の大切さ。自動車メーカー、自衛隊を経て手に入れた「やりがいのある仕事」

東日本大震災で知った電気の大切さ。自動車メーカー、自衛隊を経て手に入れた「やりがいのある仕事」

「自分が本当にやりたいことは何だろう」。 それを知らずになんとなく働いている人は少なくないかもしれません。現在、東北電気保安協会で電気主任技術者の補助員として働く室井将史さんも、かつてはそうでした。なんとなく自動車メーカーに就職し、自分とマッチしない職場環境に悩む日々…。そんななか、自然災害のニュースを見て湧いてきた「人の役に立ちたい」という想い。そこから自衛官を経て、電気業界へ飛び込んだ室井さんは「今は、本当のやりがいを感じる仕事に就いている」と語ります。どのようにして、現在のお仕事にたどりついたか、転職ストーリーをお伝えします。


人に勧められるままに自動車メーカーに就職。しかし…。

――大学では何を専攻されていましたか。

 

「工学部の応用生命システム工学科に所属し、そこでプログラミング言語のC言語を使った研究をしていました。将来はシステムエンジニアになる人が多い学科です」

 

――大学時代、夢中になっていたことは?

 

「アイスホッケー部に所属し、部活に励む日々を過ごしていました。ただ、熱を入れすぎて1年留年しちゃいましたが(笑)。また、牛丼店でのアルバイトにも精を出していました。3年ほど働いていたので、学生なのにオペレーションを任され、正社員として働かないかと誘われたほど。その言葉につられ就職を前向きに考えましたが、両親から『せっかく工学部で専門的な勉強をしたんだから、それを活かせる仕事に就いた方がいい』と説得され、牛丼店への就職は諦めました」

 

――新卒ではどのような業界を選んだのでしょうか。

 

「大手自動車メーカーに入社し、エンジンのレイアウト設計を担当していました。ただ、牛丼店の就職を親に反対されたから、大学で学んだことが活かせるような企業を受けただけで…。本心で『この企業しかない!』と思って受けたわけでなくて。自分が本当にやりたいことが分からないまま、教授に言われた通りに入社試験を受け、内定。モヤモヤとした気持ちが定まらないまま社会人生活をスタートさせてしまいました」

 

――自動車メーカーで働いてみていかがでしたか?

 

「私自身、もともとコミュニケーションを取ることが苦手な性格。そのため、黙々と業務をこなすレイアウト設計の仕事を希望しましたが、実際には外部の業者や他部署とのやりとりが多く、高度なコミュニケーションが求められました。それが気づかないうちにストレスになってしまって。正直に言うと、そんなに興味のない仕事でしたし、改めて向いてないと気づいて、結局、1年で退職してしまったんです。今思えば、親に反対されてでも自分のやりたいことを貫けばよかったなと思います」

現場でのお仕事。手際よく作業する室井さん。

陸上自衛官に。転職理由は「人の役に立ちたい」から

――続いて就職した先は陸上自衛隊。なぜ自衛官になろうと思ったのでしょう。

 

2010年のハイチ沖地震のニュースで自衛官たちが支援活動をしている姿をみて、『人の役に立つ仕事に就きたい』と思い、自衛隊を志望しました。それに、前職で痛感した、自分のコミュニケーション力のなさを克服しなければと思ったのも理由の一つ。自衛隊の仕事はチームワークが必要不可欠です。嫌でもコミュニケーションを取らなくてはならないため、ここでならコミュニケーション力が培われるのではないかと思いました」

 

――自衛官時代はどのような業務を担当されていましたか。

 

「現場へ赴くと本部とのやりとりが必要になりますよね。そのやりとりをするための通信状況を整える仕事に就きました。希望とは違う業務でしたが、被災地などへ出向いて土木作業の支援活動をしたかったので、それなりにやりがいを感じていました」

 

――苦手だったコミュニケーションは克服できた?

 

「はい。人見知りもしなくなりましたし、度胸もつきました。物怖じすることも減り、精神的にも強くなることができましたね」

 

――自衛官として順風満帆だったと思いますが、電気業界に転職。なぜ転職を決意されたのでしょうか。

 

「転職を決意したのは、長く働ける仕事に就きたいと思ったから。自衛官の定年は50歳代半ばですので、定年退職後に再就職するのは年齢的にも難しい。また、子どもが生まれたことで、家族のためにも長く働ける場所へ身を置きたいと考えまして。その点、現在の仕事は65歳まで長く働けるので安心して取り組むことができるんです。(20204月から職員の定年が65歳まで延長となり、定年退職後も再雇用制度有り)

 

それに自衛官時代、東日本大震災に遭遇したことも大きかったですね。駐屯先の宮城県で震災被害を受け、被災地に電気が届かない日々を過ごしました。その時、電気がないとなにもできない現実と電気の大切さを痛感し、人々の生活に欠かせない電気を守る仕事に就きたいと思ったことも転職理由の一つです」 

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無くてはならないもの、それが電気だ。

――電気を守る仕事が数多くあるかと思いますが、電気主任技術者を選ばれた理由はなんでしょうか。

 

「もともと、電気主任技術者という仕事については知っていました。大学時代の友人から、電気主任技術者という仕事、この業務に従事するための資格である『第三種電気主任技術者』について話を聞いていましたので。この仕事のことが心に引っかかり始めたところで震災を経験したため、さらに興味が膨らみ、資格を取ろうと勉強をはじめました。働きながら勉強をしていましたので、資格取得まで足掛け5年かかりましたが(笑)」

 

――電気主任技術者のお仕事について教えてください。

 

「ビルや学校、スーパーなど大きな建物にある電気設備(自家用電気工作物)の安全点検や管理をする仕事をしています。まだ実務経験が不足しているため、いまは先輩の補助員として同伴し、経験を積む日々を送っています。早く一人前になって担当員として働きたいですね!」

 

――新しい業界に飛び込むことに不安はありませんでしたか?

 

「異業種からの転職でしたし、もちろん不安でした。ですが、みなさん優しく受け入れてくださいましたし、周囲に助けてもらいながら業務をこなしているので、不安は解消されつつあります。電気の仕事に興味があればこの仕事は楽しめますし、未経験でもフォローしてくれる環境が用意されているので、だれでも安心して働くことができる。それが非常に素晴らしいなと思っています」

デスクワークも難なくこなします

――どんな時に仕事の喜びを感じますか?

 

「最初は測定器や試験器の使い方さえもわかりませんでしたが、いまは使えるようになっている。そうやって、業務の中で少しずつスキルアップしている自分に気づいた時は嬉しいですね。

電気がないと建物も機能しないじゃないですか。その、一番要となる電気を自分の手で守っていることに責任感とやりがいを感じています」

 

――そんな室井さんにとって“電気”とはなんですか?

 

「無くてはならないもの。震災を経験する前は、電気はあって当たり前のものと思っていたのですが、実はそうではなかった。電気がないとできないことがたくさんある。そんな電気をみんなの元に届くよう努力している人がいると知りました。その電気を今後も支えていきたいと思っています」

<室井将史さんプロフィール>

東北電気保安協会の仙台南事業所に所属。大学卒業後、大手自動車メーカーに勤務した後、約9年間陸上自衛官として主に通信業務に携わることに。その間、東日本大震災を経験し、電気の大切さを痛感し、今まで以上に生活にかかわった仕事に就きたいという想いから電気主任技術者の免状を取得し、中途採用に募集に応募し、採用された。現在は補助員として実績を積む日々を送っている。

<取材・執筆>

野田綾子

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