プロフィール
佐藤 宣夫(さとう のぶお)教授
千葉工業大学 工学部 機械電子創成工学科教授。計測工学を基盤にして、半導体に関わる様々な研究を行っている。2年ほど前から飼い始めた、猫(キャンディ)との距離感が測れずにいる。
角 真輝(すみ まさき)さん
同大学 工学研究科 工学専攻 博士後期課程1年。高校生までサッカーに没頭。大学3年生のころに無力さを感じて研究に没頭し、気づけばDoctor of Philosophy。
長嶋 一真(ながしま かずさな)さん
同大学 工学研究科 機械電子創成工学専攻 修士課程1年。高校球児として、甲子園を目指した。最近の趣味は麻雀とゴルフ。「誠実」に生きることをモットーにしている。
大山 祐生(おおやま ゆうき) さん
同大学 工学研究科 機械電子創成工学専攻 修士課程1年。1時間半を掛けて大学に通学しているが、大学が大好きでまったく苦に思っていない。電車の中で読書することに嵌っている。
前編はこちら!

感電事故を減らし、安心・安全な電気との暮らしを実現したい!電気の可視化に挑む戦士たち in 千葉工大【インタビュー・前編】
https://www.watt-mag.jp/articles/438電気と聞くと、みなさんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。 「生活する上でなくてはならないもの」と考える人もいれば、「触ったら死んでしまう危ないもの」と考える人もいるかもしれません。実際、電気は私たちの生活に欠かせないものですが、一歩、扱い方を間違えると命を奪いかねない危険なものでもあるのです。今回は、そんな電気を可視化するための研究をおこなっている千葉工業大学の佐藤宣夫教授の研究室にWattMagazine編集部が潜入。日々、電気の研究に勤しむ学生さんと佐藤教授に取材しました! (写真:左から,角君,長嶋君,大山君,佐藤教授)
電気にもっとも近い学生さんが考える「電気のミライ」とは
―― 日々、電気と向き合い、電気を研究しているみなさんが考える「電気の未来」について教えてください。
長嶋君:「25年後ぐらいには、エネルギー問題が解決できているといいなと思っています。エネルギー不足は各地でさまざまな問題を引き起こす芽となるもの。根本を解決するためにも、今後ともエネルギー問題の解決に向けた研究が進んでいくことが考えられます」

佐藤研究室のメンバーが考える電気のミライって…?
大山:「わたしもエネルギー問題に関心を持っていて、とくに研究が進んでほしいと思っているのが発電方法についてです。現在は二酸化炭素排出量の多い火力発電に頼っていますが、将来は実質、二酸化炭素ゼロの発電ができればと。たとえば、透明な太陽光パネルの開発が進み、窓ガラスに設置することで自分たちが使う電気は自分たちで賄えるようになるとかですね」
角:「私もそのようにして発電された電気の送電、蓄電がより簡易化できる社会になってほしいと考えています。東日本大震災の時、エネルギー不足が課題の一つに上がっていました。エネルギーを物理的に運ぶには、蓄電と輸送が必要となるため、今の技術ではエネルギーを運ぶために大きなエネルギーが必要となります。そうした問題を解決するためにも、より簡素に地球全体でエネルギーのやり取りができる技術できればいいですよね」
佐藤:「みんな、真剣に日本と地球の未来を考えているんだなあ(オドロキ)。私だったらこの質問に対してもう少し、アニメや映画の世界観というか、こうなったら面白いかもなっていう未来を想像するんだけど(笑)。
私が想像する未来は、都市型OSが発達した世界。たとえば、救急車が現場あるいは病院に向かうとき、街全体が情報を共有して、救急車が通るタイミングで信号機をすべて青に変えることができるとか。そうすれば、いち早く、誰かの命を救うことができるかもしれないでしょう。実際に国内でもスマートシティやウーブンシティの構想は進んでいるし、いろんなものがつながることで、そういった社会が本当に実現されていくんじゃないかな。情報だけでなく,エネルギーも共有されるようになり、人々がより便利で、より安心して暮らせる社会ができる気がしますね。その未来のテクノロジーを支える土台に電気がある。そう考えるとぼくたちがやっていることって、めちゃくちゃカッコよくない?」

「かっこいい」をめざして(電流が見える眼鏡と感電防止グローブの模擬)
「かっこいい」がすべての原動力
―― 電気に関する最先端の研究内容と実現に向けた動き、そして日々、真剣に電気と向き合っている研究室の学生さんたちが考える電気のこれからについて…。生活にも身近な電気ですが、まだまだ未知の可能性を秘めているんだなと実感しました。ここで改めてですが、佐藤教授はなぜ、研究者を目指そうと思ったか、その背景について伺うことはできますか。
佐藤:「実は、学生時代は自分が研究者になれるとは思ってもいませんでしたね。親に言われたから工業高校へ行ったくらいですし、高校生のときには電気工事士の試験にも連続して落ちましたし。そのうえ、集団行動がどうにも苦手だったので、興味のあることへ突き進むしかなかったのです。
そんな私の転機は論文を書いたこと。最初は何度も指導してくれる先生に書き直しを指示されましたが、なんとか論文が完成して世に出たとき、何か1つ、人類の歴史に残すことができたという実感を得て、自分自身を誇らしく思えたんです。私が実験したデータとその考察が、『論文』という形になって、何十年か経って、もし、自分がいなくなっても残り続ける『文化の一端』になる。この経験が私の心を強く、突き動かしました。
そこから、後の人類に何かを残していく活動をできる、こんな誇らしいことはないと思うようになって、大学に残って研究をしていく道に進むことを決めたのです」
角:「実は僕も、大学に進学するつもりは無かったです。でも、今はすごく満足しています。僕は総合学科の電気や機械と所縁もない学校に通っていましたが、進学後にその魅力や面白さに気づかされました」
佐藤:「何事も、すべてが上手くいくものではありませんね。自分の行きたかった高校や大学に行けない人もいるかもしれないし、夢をあきらめなくてはならなかった人もいるかもしれない。それでも、応援してくれる人は必ずいるし、どこかで挫折しても目の前のことで歯を喰いしばれば、やがて光が差し込んでくる。だから、もしも不安を感じたとしても、自分の好奇心に正直になって,その扉をこじ開けて欲しいんです。
『かっこいい』とか、『すごい』とか,言われたい。それが原動力でいいんですよね。目の前の不思議について,『知りたい』、『やってみたい』という気持ちを道しるべに、自身の道を歩んで行ってください。ただし、かっこつけると実はかっこ悪いので、地道にやっていくことこそが、かっこいいことなのかな、と思っています」

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