電気予報士・伊藤菜々さんレポート!周波数変換所に行ってきたよ!日本の電力を東と西で融通する場所

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!周波数変換所に行ってきたよ!日本の電力を東と西で融通する場所

電力には周波数があり、停電を防止するために常時、基準の周波数に合わせられています。日本の電力は、東は50Hz、西は60Hzと周波数がそれぞれ異なり、東西で電気を送りあうには周波数を変えなければなりません。災害時や、エリア内で需要と供給のバランスが合わないときに東西で電力を融通しあうことで、日本全体の電力を効率的に使うことができます。今回は、東西で電力を融通しあう為の周波数を変換する設備の見学とそこで働く方のお話を聞いてきました。


周波数ってなあに?

日本の電力は、交流という仕組みで送られており、周波数という決められた回数のきれいな波を繰り返しています。発電機や電気設備は、その周波数に合わせて作られていますが、周波数が維持できないと停電してしまい、電力を安定的に供給できません。日本は戦後の発電機を導入した輸入元の国が東京と大阪で異なっていたため、周波数が静岡県の富士川を境に、東は50Hz、西は60Hzになっているのです。50Hzと60Hzは混合させることはできません。周波数が異なるエリアでは電力が使えないため、東と西で電気のやり取りをする場合は周波数を変換する必要があるのです。

周波数は周波数変換所を通じて変換します。国内には新信濃変換所、東清水変換所、佐久間変換所と3か所の周波数変換所が設置されています。今回、私が訪問した新信濃変電所は、周波数変換設備が増強され、以前よりも多くの電力を融通しあえるようになったそうです。今後は残りの2カ所の周波数変換所も増強される予定で、より多くの電力が東西融通できるようになります。

なぜ、東と西で電気を送りあう必要があるの?

東日本大震災の時に、原子力発電をはじめとした東側の大型発電所が停止しました。その時に関西方面で発電された電気が送られましたが、周波数変換所の容量が足りず、満足のいく電力量を送ることができませんでした。そのため、関東エリアでは計画停電が行われたり、電力が一時的に使えなかったりするなどしました。このような災害時でも電力融通ができるようにすべく、周波数変換設備を増強し、より多くの電力融通ができる対策がとられているのです。

現在は再生可能エネルギーが増えており、再エネが多く発電する時間は、エリア全体での電力使用量に対して、エリア全体の発電量が上回ることも。中部エリアと東京エリアの間は周波数が違いますが、周波数変換所を通して融通できることで、余った電気を減らすことができます。つまり、広いエリアで電力を融通しあうことで、電気を効率的に使うことができるのです。

周波数変換所の内部

サイリスタバルブ

周波数変換設備は、新信濃変電所の中にあります。外観は大きな箱のようで、その中にサイリスタバルブという交流を直流に変換する装置がたくさんの数連結された設備が置かれています。サイリスタとは電流を制御する半導体素子で、交流を直流にしたり、直流を交流にしたりできます。ここには数百個のサイリスタがあり、1施設で90メガワット(ほぼ原子力発電1基分)の電力を変換できます。新信濃変電所には2施設の周波数変換設備があるため、合計で180メガワットの電力を変換し東京、中部間で融通しあうことができるのです。

サイリスタバルブは稼働時に熱を持つため、常に純水で冷やされています。サイリスタバルブの他にも、その純水を作る装置や、調相設備といい交流の波形を綺麗に直す設備もあります。

周波数変換所で働くということ

新信濃変電所は、周波数変換設備に加え、50万ボルトの電力を扱う日本では有数の大型変電所です。27名の方が在籍し、24時間体制で監視が行われています。中規模以下の変電所では、近くの制御所で遠隔監視をしている場合が多く無人の場合もあります。

東京ディズニーランドの約半分という広さの中、変電所で異常がないか巡視をしたり、設備を維持していくための工事を管理したりしているのだとか。また、変電所にある設備機器や送電線を支える鉄構などに汚れがついて劣化を防いだりすることも大事なのだそう。

再生可能エネルギーが増えても、出力制御といって、エリア内での使用量を上回ってしまうと、発電された電力が切り捨てられます。周波数変換所はそれらの問題を解決する役割も担う、大事な場所。毎日、電気の安定供給を守ってくれている方々に感謝したいものですね。

プロフィール

伊藤菜々(いとう・なな)


上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。

電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として、電力会社や企業での講演、学校での講義、展示会やイベントの出演を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士、電験三種取得。現在電験二種の合格に向けて勉強中。

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この記事のWriter

電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業後、金融業界に入社。その後、再生可能エネルギーファンドに転職し、電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わる。2019年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。事業内容としては、①会社・サービス紹介youtubeの作成 ②電力事業の立ち上げ支援 ③電力についての研修・困った時の質問窓口 などの支援をする。実績として大手新電力での新入社員・営業部員向けの短期研修や定期研修や国立大学(広島大学)での講義、電力系の展示会やセミナー等での講師を行う。

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