ラジオ放送の仕組みとは?具体的な構造やAMとFMの違いを解説!

ラジオ放送の仕組みとは?具体的な構造やAMとFMの違いを解説!

ラジオ体操やオールナイトニッポンなどでおなじみのラジオ。今回はその仕組みやAM/FM放送の違いなどについて解説していきます。具体的なイメージを掴みやすい図も交えているため、ぜひ最後まで読んでみてください。


ラジオは電波に音声を載せて放送している

ラジオは電波に音声を載せて遠距離へ情報を伝達する技術およびツールのことで、搬送波という高周波の信号に元の音声信号を載せて遠隔地に送っています。電波は互いに干渉することがないため伝搬性が高く、受信者側が聞きたい放送局に周波数を合わせることで、空中を飛び交う電波を選択的に受信します。現在ではテレビやインターネットが普及し、ラジオ単体を利用する機会が減っていますが、外部電源なしに使えるものや個人レベルでも作れるほど単純なものもあり、災害時の情報伝達や個人の趣味的なニーズがまだまだあります。

ラジオ放送の仕組みと構造について

続いてラジオ放送が可能になる仕組みや必要な構造について解説していきます。

構造①:アンテナ

まず、電波を送受信するためにはアンテナが欠かせません。そもそも電波とは、電界と磁界が直交しながら伝搬する電磁波の一種です。送信用アンテナは縦に開いたコンデンサをイメージするとわかりやすいですが、電界を空気中に放出すると、生まれた電界から磁界が生まれ、更にその磁界が電界を生む、といった具合に連鎖的に電磁波が生み出されます。

受信用アンテナは受信したい周波数によって最適な長さが異なり、基本的に受信信号波長の半分の長さ(波長は周波数の逆数)にすれば最大効率で受信可能です。受信アンテナには形状の違いからダイポールアンテナや八木アンテナ、パラボラアンテナなどがあり、ラジオ用としてよく見かけるのは伸び縮みする金属棒を使ったロッドアンテナや、中空の四角形をしたループアンテナです。

構造②:同調回路

アンテナで受信した電波は高調波電流信号として取り出されます。高調波電流とは周波数の異なる信号が複数重なり合った電流のことで、各ラジオ局から送信された全ての放送用電波が重なった状態のものです。この高調波電流から聞きたいラジオ放送用の電波のみを取り出す回路を同調回路と呼び、その中身はコンデンサとコイルの並列回路です。コイルとコンデンサはそれぞれ逆の周波数特性を持ち、コイルが周波数の低い電流をより多く流すのに対し、コンデンサは周波数の高い電流を多く流します。同調回路ではこれらの特性によって発生する特定の周波数の時だけ電流が大きく流れる共振現象を利用し、所望の周波数信号だけを取り出します。

構造③:検波回路

続いて検波回路で高周波電流から音声信号を取り出します。放送局のアンテナから送信される信号は、搬送波と呼ばれる高周波信号に送りたい音声データを乗せて伝送しています。同調回路で複数の電波から1つの電波を取り出しただけでは音声信号と搬送波が混在しているため、ダイオードとコンデンサを組み合わせた検波回路で音声信号のみを取り出します。検波回路は別名ローパスフィルタとも呼ばれ、その名の通りコンデンサの周波数特性によって高い周波数の搬送波を除去し、低い周波数の音声データのみを通過させるのです。

構造④:増幅回路とスピーカー

聞く人数や環境に合わせ、音声信号を聞きやすいボリュームに調整するのはトランジスタを用いた増幅回路の役目です。送信電力を抑えたり電波障害を回避したりする観点から、ラジオ放送用の電波エネルギーは小さい方が好ましく、適切な音量で聞くには受信回路側で音声データを増幅する必要があるのです。また、増幅された音声信号を我々が聞くことのできる音声に変換するのがスピーカーやイヤホンなどの音響装置で、音声信号を元に空気を振動させて音声を作り出します。

AM放送とFM放送の違いは変調方式?具体的な特徴も解説

ラジオには放送波の変調方式の違いから、AM放送とFM放送の2種類に大別されます。AM放送とは振幅変調方式を採用している放送電波のことで、音声データを搬送波の振幅変化に変換して伝送します。回路構成が比較的単純で電波の到達範囲も広い一方で、帯域幅が狭いため載せられる情報量が少なく、主にラジオ番組やニュースなどの情報伝達を主とした放送に使用されます。

一方のFM放送では音声データを搬送波の周波数変化に対応させて伝搬します。二つの変調方式の違いは、AM放送の電波が音声データを音量の変化で表しているのに対し、FM放送の電波は音の高低として表しているようなイメージです。FM放送はAM放送よりも高い周波数の電波を使用するため、AM放送より遠くまで伝わりづらい反面、雑音に強く載せられる情報量も多いことから、綺麗な音質が要求される音楽放送などに多く利用されます。

まとめ

今回は音声メディアとして知られるラジオについて、具体的な仕組みやAM/FM放送の違いについて解説してきました。テレビやインターネットの普及により、以前ほどは使われていないものの、趣味用や災害時のメディアとしてラジオは未だに根強い需要を持っています。自作ラジオを作るのも難しくはないため、興味のある方はぜひ詳しく調べてみてくださいね。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計、など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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