電気業界の仕事とは?
電気を届ける仕事・ラインマン(送電線作業員)とは?仕事の魅力や給料などを解説
ラインマン(送電線作業員)とは、電気を安全に届けるために、送電線や鉄塔の建設・保守を担う専門技術者のことです。
高所での作業は、悪天候との戦いなど「きつい」場面もありますが、その分だけ社会インフラを支える大きなやりがいがあります。
電気という生活の基盤を守るこの仕事は、研究と技術の積み重ねが欠かせません。ラインマンは、平均年収や給料面でも経験に応じて評価される職種です。
空を歩くような景色や、チームで成し遂げる達成感など、ラインマンにしか味わえない魅力が詰まった世界を、今回の記事で紹介していきます。
目次
ラインマンとは「電気を届ける」お仕事

ラインマン(送電線作業員)は、送電線や鉄塔の建設、保守、点検を行い、電力の安定供給を支える重要な役割を担います。
発電所で作られた電気が、高電圧で送電線から変電所へと送られます。その送電線の安全性を維持しているのが、ラインマンです。
ラインマンの仕事内容は、主に次の通りです。
- 送電線の新設・建替・移設
- 鉄塔や電線の点検・修理
- 送電線の張替え
- 災害時の復旧作業
発電所で作られた電気が、各家庭や建物に安定して届くのは、ラインマンが日頃から送電線や鉄塔の建設、保守、点検を行っているからです。
ラインマンは高所作業が多く、電線の張り替えや修理を行う際には高度な技術と安全対策が求められます。地震や停電などの緊急時にも迅速に対応し、社会インフラを守る使命感が強い職業です。
作業は屋外で行われるため、天候に左右されることもありますが、チームワークを重視しながら達成感を得られる仕事です。

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【作業】ラインマンの1日
こちらではラインマンの1日の作業、今回は「新仙台火力A線の電線張り替え工事」についてまとめてみました。
電気予報士・伊藤菜々さんのレポート動画と合わせて、ラインマンの作業や、1日の流れを見てもらえればと思います。
①朝礼

ラインマンの1日は朝礼から始まり、そこでは1日の作業内容、注意事項についての徹底確認が行われます。
ラインマンは高所で、電気を取り扱う仕事です。転落や感電、落下物注意など、事故が起こらないよう「安全最優先」を周知します。
②ミーティング

朝礼が終わると、作業に入る前のミーティングを行います。この日の作業は、「がいしの取り外し」と「送電線の張り替え」です。作業についての手順や細かい内容、作業の意味や注意事項について、徹底的に周知していきます。
ちなみに、2日前に送電線の張り替えを1本行っており、この日は2本目の張り替え作業でした。送電線を張り替えるには「慎重さ」が求められ、短時間では終わらないことが伝わります。
③作業開始
ミーティングが終わると、いよいよ作業開始です。この日は午前中に「がいしの取り外し」を行い、午後に「送電線の張り替え」を行いました。
最初に、ラインマンが鉄塔に昇って送電線へ乗り出し、現在の古い電線に取り付けられている部品や電気を絶縁するがいしを外します。

その際に、細いロープを送電線の両端に取り付け、順に太いロープ・ワイヤへ張替えながら最終的に新しい電線を繋いで、古い電線に取り付けたロープを引っ張って巻き取り、張り替えます。
張り替え区間の反対側に立っている鉄塔の下から、ドラム形の巻き取り機で巻き取って行きます。

トランシーバーでやり取りをしながら、寄れたりしないように重い送電線を慎重に巻き取って行く繊細な作業です。

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「ラインマンって何?お仕事現場に一日密着!」
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【給料】ラインマンの月収や平均年収は?
「job tag(厚生労働省)」では、送電線工事(送電線架線・敷設作業員等)で働く人の年収は、令和6年で547.6万円と紹介されています。
年齢別の年収、経験年数に応じた月収(所定内給与額)は、次の表を参考にしてください。
| 年齢 | 年収 |
|---|---|
| 〜19歳 | 305.74万円 |
| 20〜24歳 | 406.22万円 |
| 25〜29歳 | 484.75万円 |
| 30〜34歳 | 537.36万円 |
| 35〜39歳 | 582.94万円 |
| 40〜44歳 | 581.68万円 |
| 45〜49歳 | 653.57万円 |
| 50〜54歳 | 643.74万円 |
| 55〜59歳 | 590.68万円 |
| 60〜64歳 | 498.94万円 |
| 65〜69歳 | 422.85万円 |
| 70歳〜 | 352.49万円 |
| 経験年数 | 月収(所定内給与額) |
|---|---|
| 0年 | 22.7万円 |
| 1〜4年 | 25.49万円 |
| 5〜9年 | 30.27万円 |
| 10〜14年 | 31.28万円 |
| 15年以上 | 37.92万円 |
※所定内給与額とは、残業代を除く「毎月の基本給+各種手当」のことです。
出典:送電線工事 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
年齢別で見ると、年収のピークは45〜54歳で650万円前後となり、経験を重ねるほど収入が上がります。ただし高所での作業ということもあり、50代後半から緩やかに年収が落ちていく傾向です。
ちなみに、経験を積んだベテランになってくると高い技能水準を示す基準として、作業班長の資格認定制度が設けられています。
また技能職としての特性上、若い世代でも腕次第で早期に収入を上げることができるのも魅力的です。
【休日】ラインマンのライフワークバランス事情は?
ラインマンというと、過酷な場所での作業になるので、ライフワークバランスが取れるのか心配になる人もいると思います。
「job tag(厚生労働省)」によると、ラインマンの1ヶ月の労働時間は162時間と記載されています。厚生労働省が定める「労働時間・休日に関する主な制度」に基づくと、1週間の労働時間は40時間です。
1ヶ月で換算した場合、ラインマンの労働時間は割と平均的であるのが分かります。
また、現在では働き方改革の一環で、有給休暇の取得はもちろん、休日出勤があった場合は、代休が取れる環境整備が進んでいます。
以下は「送電線建設技術研究会 関西支部」における、働き方改革の一例です。
①「全国一斉休日の設定」
毎月第2週の土日(2連休)
スポーツの日(10月の第2月曜日)を含む土日月(3連休)
②関西電力送配電(株)独自の取り組み
全国一斉休日に加え、海の日(7月の第3月曜日)を含む土日月(3連休)
そのほか、電気の使用量の多い時期に「長期休暇」がとれる場合があります。
出典:働き方改革|一般社団法人 送電線建設技術研究会 関西支部
ラインマンになるには?資格は必要?

ラインマンになるためには、特定の資格というものは存在しません。高所で特別高圧を扱う仕事となるので、チームワークや相手を思う人柄が必要になります。
ラインマンになるには特定の資格は存在しない
ラインマン(送電線作業員)になるために、特定の資格や免許は必須ではありません。しかし高所での作業が中心となるため、安全対策に関する訓練や教育を受ける必要があります。
ラインマンは、入社後に必要な技術や知識を学ぶ環境が整っているため、異業種からの転職も可能です。また、作業の安全性を確保するために「高所作業車運転技能講習」や「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」などの資格取得が推奨されます。
ラインマンとして経験を積むことで、さらに専門的な資格を取得し、キャリアアップを目指すこともできます。
令和4(2022)年7月には、国土交通大臣認定の登録基幹技能者制度に「登録送電線工事基幹技能者」が認可され、これまでに全国で230名以上の登録基幹技能者が誕生しています。
ラインマンに求められる「チームワーク」と「人柄」
ラインマンの仕事は、チームワークが大事です。相手のことを考え、互いに助け合い、士気を高め合います。そして、個々の力も切磋琢磨していくことで、パフォーマンスの向上に繋がります。
高所で過酷な場所での作業だからこそ、目配りや気配りのできる、他人を思いやれる人柄が大切です。また会社としては、何でも相談しやすい環境を作り、個々の可能性を伸ばす人材育成が求められます。
ラインマンの魅力、やりがいを3つの実例で紹介

現代社会では、電気のない生活は考えられません。電気を届けるラインマンは、私達の生活を支える「縁の下の力持ち」的な存在です。
こちらでは、実際に現場で働くラインマンのインタビューを取り上げ、実例からラインマンの魅力ややりがいを紹介していきます。
男性だけではなく女性も活躍しているので、ラインマンを目指す人はぜひ参考にしてください。

実例①沖縄電気建設で働く3人のラインマン

「空を歩く、特別な特権」
沖縄電気建設で働く伊波さんは、遠くの雨雲の動きや空に架かる虹を間近に感じる体験を「ラインマンだけの特権」と呼び、空を歩くような感覚に魅了されています。
地上20〜40mを職場にするラインマンの前には、この仕事でしか見ることのできない絶景が広がっています。
「一から作り上げる、圧倒的達成感」
ベテランの嘉数さんは、重機が入れない険しい場所で数十キロもの機材を背負って山を登り、鉄塔を組み上げる工程に強い誇りを感じています。
苦労して完成させた鉄塔を地上から見上げる喜びは、何年経っても格別なものです。
現場ごとに最適な施工方法をチームで考え、互いに切磋琢磨する時間は、技術者としての腕を磨く最高の機会となります。
「 恐怖を超えた先の成長」
新人の瑞慶山さんは、当初抱いた高所への恐怖を、先輩との緊密な連携や安全管理への信頼によって克服しました。
専門的な特殊技法を駆使して社会インフラを支える責任感は、他では決して得られない深いやりがいを生み出します。

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実例②岳南建設の松山由夏さんと亀田紫野さん

「一目で心を奪われる、プロの背中」
岳南建設の松山由夏さんは、現場で見事に働く技術者の姿に圧倒され、直感的にこの道を選びました。
人々の生活に直結するインフラを支える確かな手応えが、彼女の大きな原動力です。
鉄塔の上という限られた人しか立てない特別な場所で、仲間と連携し技術を振るう経験は、他では味わえない刺激に満ちています。
「社会を支える、誇り高き縁の下の力持ち」
現場監督として活躍する亀田紫野さんは、生活に不可欠な電気の基盤を守ることに、深い責任感と充実感を見出しています。
資材や重機の手配、近隣住民への配慮など多岐にわたる管理を担い、一つの工程を無事に成し遂げる達成感を日々積み重ねています。
「仲間と築く、最高に心地よい絆」
この仕事の醍醐味は、強い信頼で結ばれたチームワークにあります。
厳しい自然環境でも、和気あいあいとした雰囲気で互いを支え合い、技術者として着実に成長できる環境が魅力です。
電気という「暮らしと心を照らす光」を届ける使命感は、ラインマンだけの誇りです。

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実例③架空送電設備を保守する西岡鈴夏さん

「鉄塔の上は、私だけの特等席」
西岡鈴夏さんがこの道を選んだきっかけは、高校時代のインターンシップで目にした鉄塔からの絶景でした。
どこまでも広がる空と足元に広がる小さな街並みは、地上では決して味わえないラインマンだけの特権です。現在は架空送電設備の保守を担い、点検や部品交換を通じて電力の安定供給を支えています。
新しくなった設備が地上からキラキラと輝くのを見たとき、インフラを守る責任の重さと確かな手応えを実感しています。
地域の方々からの温かい激励や、信頼できる仲間との強い絆が、さらなる挑戦への原動力となっています。

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【注意】ラインマンが作業中に気を付けなければならないこと

ラインマンは地上から数十メートルから200メートルという高所で作業します。取り扱うものは電気であるため、一歩間違えると墜落や感電といった災害に繋がります。
また、ラインマンは屋外での作業が中心のため、悪天候との戦いも強いられます。
鉄塔からの墜落
作業場所である鉄塔は、地上数十メートルから200メートルの高さがあるため、墜落のリスクがあります。
こういった事故は、安全基本ルールを守っていれば防げたものと言われています。たとえば高所からの墜落を防ぐには、墜落制止用器具が欠かせません。
作業に慣れてきたからといって慢心せず、安全基本ルールをしっかりと守り、事故を防ぐための道具を身に着けることが大切です。
感電
電気を届けるラインマンの仕事には、感電の危険性が隣り合わせです。一歩間違えると何万ボルトという電気に触れてしまい、あっという間に命を落としてしまいます。
作業を行う前に、電路の停電を確認したり、電気が流れている電線に近づきすぎたりしないようにする行動が大切です。
悪天候との戦い
ラインマンの作業場は屋外であり、毎日が快適な気候とは限りません。よほどの豪雨や豪雪、暴風では作業が中止になることもありますが、少々の悪天候では作業を行います。
たとえば東北や北陸など、雪が降りやすい地域では、吹雪の中でも電力の安定供給のために現場に向かわなければならない場合があります。
また近年の夏は酷暑が続くため、気温が高い日は熱中症防止を図った上で作業をしているなどの対策をしています。
こういった日でも、作業開始前の朝礼やミーティングで安全対策について周知し、事故を防がなければいけません。
まとめ
ラインマンという仕事は、送電線の建設や保守を通じて、社会に欠かせない電気を守り続ける専門職です。高所作業や天候との戦いなど「きつい」場面もあります。ただし、その分だけ技術を磨き、仲間と支え合いながら大きなやりがいを得られるのが、この仕事の魅力です。
また、平均年収や給料面でも経験がしっかり評価され、成長が収入に直結する魅力もあります。
電気を届けるという使命を胸に、今日もラインマンは暮らしを支え続けています。





