家庭で出来る停電対策を解説!停電の原因・注意点・類似用語も!

家庭で出来る停電対策を解説!停電の原因・注意点・類似用語も!

家庭で電気を使いすぎたり、落雷が起きたりすると発生する停電。身近な現象でありながら、いくつか種類があることや、具体的な対策まで熟知している方は少ないはず。そこで今回は停電に関する基本的な内容も含め、原因や対策などを解説していきます。


停電とは?類似用語との違いは

停電とは、何らかの原因により電気の供給が停止し電気設備が使えない状態のこと。JIS規格では1分以内のごく短い停電現象を瞬間停電現象(通称:瞬停)と定義しているため、便宜上は1分以上に亘って電気が使えない状態を停電と区別して呼ぶことがほとんどです。
家庭内の停電だけであれば単に不便なだけで済みますが、地域全体で停電が起きると電車や信号などのインフラが機能しなくなったり、多くの工場や商業施設が停止を余儀なくされるため、社会全体に甚大な影響をもたらすことになります。

停電が起きる主な原因とは?

停電の原因は、自然災害や事故などによる電力供給設備の異常、電気の使いすぎ、工事やメンテナンスに伴う計画的な停電などが挙げられます。

自然災害や事故による停電

もっとも予測困難で影響が大きいなのが、自然災害や動物によって引き起こされる停電です。具体的な自然災害と停電に至るイメージとしては、雷や地震、火災などによる電気設備の破壊、強風にあおられた飛来物による電線の切断や短絡、豪雪による電線同士の短絡などが挙げられます。
また、鳥獣類が作った巣が短絡や地絡を引き起こしたり、ネズミが電線を噛みちぎることで停電を引き起こすケースも少なくありません。さらには自動車が電柱に衝突してなぎ倒してしまったり、重機工事により埋設ケーブルを切断してしまうなど、人間が引き起こす事故が原因で停電が発生する可能性も考えられます。個人レベルで対策が取れるものではありませんが、影響の大きい停電原因として覚えておくと良いでしょう。

電気の使いすぎによる停電

一般家庭で起きる停電の原因は電気の使いすぎによるもので、いわゆるブレーカーが落ちることで停電が発生します。前提として電気が流れると電流の大きさの二乗に比例する熱が生じ、一定以上の熱が発生すると電線の被覆材が燃えてしまいます。そこで安全のために電流を制限するブレーカーを設け、容量を超える電流が流れると自動的に電気を遮断して保護しています。そのため、電気をブレーカーの定格容量以上に使うと部分的な停電が起きるのです。

電気設備のメンテナンスや需給調整による計画停電

電線やケーブル類は熱的ストレスや電気的なストレスにより20年から30年程度で寿命を迎えると言われているため、計画的に張り替える必要があります。また発電機や変圧器など電気供給に必須の設備についても、機器の性能を維持するためには定期的なメンテナンスや交換が欠かせません。当然、電気設備の点検や補修は通電したまま行うことはできないため、作業を行っている間は計画的に停電する必要があるのです。

また電力需要の調整のために計画停電する場合もあります。意外かもしれませんが、電気をそのまま貯めておくことはできません。そのため夏の昼間など著しく電気の需要が高まった時には、全国の電力需給バランスを調整するために停電する必要があるのです。

自宅でできる停電対策を覚えておこう

電気の使いすぎによる停電は、シンプルにブレーカー容量以上の電気を使わないようにすることで防げます。また自然災害や事故による停電や地域で行われる計画停電についても、停電そのものを防ぐことはできない代わりに、停電したときの二次被害を減らす対策はあります。順番に解説していきましょう。

基本的な停電対策は電流が多く流れる家電を同時に使わないこと

家のブレーカーは設定値以上の電流が流れると回路を遮断するため、ブレーカーの作動による停電を防ぐには、流れる電流が大きい家電を同時に使いすぎないことが大切です。一般的に電流が多く流れる家電としてはドライヤーやアイロン、電気ストーブ、浴室乾燥機など熱を発するものが挙げられます。これらの家電は電気が流れると発生するジュール熱を利用しており、ジュール熱は流れる電流の二乗に比例するため、必然的に大量の電流を流す必要があるのです。流れる電流は機器本体に表示されている消費電力をコンセント電源電圧の100Vで割れば計算できるので、どの家電が最大で何A流れるのか把握して使用する家電を調整すると良いでしょう。

思わぬ停電時でも生活できる環境を整えておくことも重要

自然災害時など突発的な停電に対しては、電気がなくとも最低限の生活ができる環境を整えておくことが重要です。例えば真夜中に停電が発生してしまった場合を想定し電池式の懐中電灯を用意したり、今やライフラインの1つとなった携帯電話を充電できるようモバイルバッテリーを持っておくと良いでしょう。また停電中は冷蔵庫はもちろんのこと、電子レンジやIHヒーターといった電気を使う調理器具類も使えません。停電が数日に亘る場合に備えて、冷蔵庫代わりになる保冷バッグや調理用のカセットコンロ、非常食などを常備しておくのもオススメです。他にも必要な物は色々あるので、官公庁や有識者が公開している情報を頼りに一度整理してみると良いでしょう。

停電中に家を出る時や計画停電時は機器電源を切ってコンセントを抜いておく

自然災害による停電などでは、避難のために復電前に家を空けることも少なくありません。そのような場合には必ず家電のコンセントを抜いてから家を出るようにしましょう。コンセントを差しっぱなしで機器電源も落としていない状態では、復電した時に一斉に電流が流れ込み、再度家庭のブレーカーが落ちる可能性があります。また災害によって電路に異常が生じている場合、異常部に流れた電流によって、火災などの二次災害が生じる恐れもあります。

また事前にタイミングが分かっている計画停電では、あらかじめ機器の電源を落としておくこともオススメします。パソコンやゲーム機のようにソフトウェアによって動作する家電では、使用時はもちろんのことスリープ状態でも何らかの通信や動作をしている可能性が高く、いきなり電源を断つのは好ましくありません。計画停電のスケジュールに合わせて所定のシャットダウン操作を行い、機器に与える悪影響を最小限に留めましょう。

まとめ

身近な存在でありながら、色々な原因や対策がある停電。停電対策を取れば必然的にエコや節電にも繋がりますよ。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など。

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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