工作みたいで楽しい!第二種電気工事士技能試験攻略のポイント

工作みたいで楽しい!第二種電気工事士技能試験攻略のポイント

やや難しそうだと思われがちな技能試験。しかし、見方を少し変えると、工作みたいで楽しく取り組めるものでもあります。技能試験を攻略するためのポイントを、写真と合わせてご紹介します。


第二種電気工事士

第二種電気工事士学科試験に合格すると、技能試験に進みます。第二種電気工事士試験受験案内による技能試験の方法は「持参した作業用工具により、配線図で与えられた問題を、支給される材料で一定時間に完成させる方法で行います」とあります。

実際には 図.1 の配線図を 写真.1 のように40分で完成させる試験です。以下は電気技術者試験センターが公表した「候補問題 No.1」、図.1はケーブルの種類・寸法を入れたものです。(図.1の寸法は例です。実際の本試験問題はこのような形で出題されます)

実際に作品を完成させると写真.1のようになります。

写真.1を作るのに必要な作業用工具は、受験者自身が準備して当日試験会場に持参し受験します。受験案内によると、技能試験では、電動工具以外の全ての工具を使用することができます。
なお、下記の指定工具は最低限必要と考えられますので、受験者は必ず持参してください。

[指定工具]①ペンチ②ドライバー(プラス・マイナス)③電工ナイフ④スケール⑤ウォーターポンププライヤー⑥リングスリーブ用圧着工具(JIS C 9711:1982・1990・1997 適合品)」とありますが、作業をスムーズに進めるために、指定工具以外に「⑦VVFストリッパー」と「⑧ニッパー」があると便利ですので持参しましょう。また工具以外にも電線をまとめる沿具やクリップ等を使用しても良いですが、完成したら外してください。

第二種電気工事士の配線図については、毎年1月下旬に電気技術者試験センタ―から「令和〇年度第二種電気工事士技能試験候補問題の公表について」としてNo.1~No.13の全13個の課題(単線図)が公表されます。技能試験は各都道府県で実施されますが、会場ごとにNo.1~No.13のいずれかの問題が出題され、全国では全問題が出題されます。よって、全問題の作品を作成し、時間内に欠陥なく完成できるように準備(勉強)しなければなりません。

第二種電気工事士技能試験の試験時間は40分。試験が始まると、①どのように施工するかを具体的に説明してある「施工条件」を確認して、②施工条件と配線図から複線図を描きます。後は、複線図どおりに作品を作成します。残りの時間で作品を確認し、もし不具合があれば修正します。
スムーズに進めるコツは、複線図を早く、正確に描けくこと。複線図は正解の組み立てを紙面上に表したものなので、合格を決める重要な作業です。候補問題 No.1 の複線図は図.2 になります。

工作みたいで楽しい!作業内容の一部を紹介

技能試験はケーブルの加工やコンセントを組み立てなど、何かを作ったり組み立てたりすることが好きな方には特に楽しいと感じる作業の多い試験です。その一部をご紹介します。

「切る」「剥く」「測る」多機能な工具 VVFストリッパーの作業

組み立てには様々な工具を使いますが、一番利用するのがVVFストリッパーです。実際にホーザンのVVFストリッパーP-958を使った作業をみてみましょう。

ストリッパーは大きく分けるとケーブルの「剥き寸法を測る」「外装被覆(シース)及び絶縁被覆を剥く」「切断する」3つの機能があります。外装被覆とは、色分けされたゴムで覆われた導線をさらにまとめているビニルのことです。これを剥く目的は、器具に取り付ける、もしくは線をつなげるためで、試験に出題される外装被覆の剥き寸法は大きく分けると4種類あり、そのうち代表的な2種類は次のようになります。引掛けシーリングは皆さんの家の照明器具などの取り付け口となる器具、ランプレセプタクルは電球の取り付け口となります。

器具の大きさに合わせて寸法を測定し、外装被覆を剥きます。

では実際にVVFストリッパーをどのように使用するか、50mm剥くランプレセプタクルで説明しましょう。まず、VVFストリッパーは作業する金属部分の端にメモリがあり、寸法を測れるようになっています。実際の試験会場で定規を使用することは認められていますが、50mm程度の短い寸法を測るのはこの方法が便利です。次の画像のように10mm単位となっているため、簡単に寸法を測ることができます。

実際に50mm測定します。写真に写っているグレーのビニルが外装被覆です。

測定できたら、剥きます。剥くときは先ほど測った50mmの部分にストリッパーの真ん中にある穴に入れて握って挟み、外装被覆(画像のグレーの部分)だけを切って押して剥きます。

ケーブルを通す穴は4種類あり、ケーブルの中に入っている導線の数と太さで変わります。図の「心」は導線の数の単位を表します。

その後、機器に接続するための絶縁被覆を剥きます。絶縁被覆とは導線にまかれている色分けされたビニルのことです。絶縁被覆の剥き寸法の測定は写真の部分で測定します。

実際には写真のように剥いていきます。

寸法の測り方や外装被覆、絶縁被覆の剥ぎ取りをご紹介しましたが、この他にもケーブルのカット、導線の曲げ加工など、VVFストリッパーが欠かせない作業が多くあります。マストな工具ですので必ず準備しましょう。

導線をつなぐ必須アイテム 圧着ペンチの作業

電気を通すためには導線と導線がつながっていないといけません。試験上、導線をつなぐ方法は二つありますが、そのうちの1つが導線同士を金属の輪(リングスリーブ)に入れ、全て一緒に押し潰すことでくっつける方法です。金属の輪をつぶすための工具を圧着ペンチといいます。

圧着は下記のように作業をします。

①絶縁被覆を20mm測定
②絶縁被覆を20mm剥く
③導線同士を通したリングスリーブ(金属の輪)をつぶし、圧着(潰して導線と金属の輪を一つにすること)する


①②はVVFストリッパーで作業し、③を圧着ペンチで作業します。
②まで終わったら次のように導線にリングスリーブを通し、圧着ペンチをあててリングスリーブをつぶします。

VVFストリッパーと圧着ペンチは、ケーブルの加工だけではなく各器具の取り付けや作業後の各パーツの組み立て時にも使用します。工作をしているようで、徐々に完成していく過程はとても楽しく感じられると思います。

技能試験のポイント

①候補問題全13問の複線図が約3分で描けるように練習をする。
候補問題は13問のうち、どの問題が出題されるか分かりません。必ずすべての問題を練習し、作業時間確保のために複線図を早く書けるようにしましょう。

②リングスリーブによる圧着接続が確実にできるように練習をする。
圧着ペンチには3つ圧着する場所があり、導線の本数や太さで使い分けなければいけません。この使い分けのミスが非常に多く、他が完璧なのに最後の圧着だけ間違えたという受験生は数知れません。確実に正しい場所で圧着できるようにしましょう。

③あせらず確実に作品を作る。
技能試験は一つもミスがあってはいけない試験です。そのためには13課題を事前にシミュレーションし、時間内に正確に確実に作成する必要があります。複線図、全体的な作業、見直しの時間を考慮し、40分以内に終わるかを何度も練習しましょう。


技能試験はしっかり取り組む必要がある反面、その内容は工作のように楽しく学習できるものです。技能試験を合格するには、13問の作品を全て正確に作成する必要があります。それぞれ1~2回は作って、自信をもって受験をしましょう。

プロフィール

TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師

1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。

TAC電気工事士講座ホームページ

TAC電気チャンネル-YouTube

TAC電気工事士講座公式Twitter

この記事のWriter

電気工事士・電気主任技術者をはじめとした電気・設備関連の資格試験対策講座を開講。資格の学校として多くの合格者を輩出してきたノウハウをもとに、文系の方や初めて学習する方にもわかりやすい講義・教材とカリキュラムで合格に導く。電気工事士技能試験対策コースでは、完成作品を画像でメール送付する「メール添削」、Web会議システムを使用し講師が配線チェックなどをマンツーマンで指導する「オンライン添削」など、通信講座でも安心の添削サービスを提供。

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