電気工事士の問題を解いてみようシリーズ 技能編②

更新日:2024.08.29投稿日:2024.08.29

電気工事士の問題を解いてみよう 技能編②

電気の配線に必要不可欠なジョイントボックス。今回はジョイントボックスで接続する方法の中で、試験にも出題される「リングスリーブ」と「差込形コネクタ」について詳しく解説します。

ケーブルの接続方法は2種類ある!

電力会社から送られてきた電気は、照明器具やコンセント、換気扇、エアコンなどに分配されます。建物に入ってきた電気を大まかに分ける機器を「分電盤」といいます。分電盤は、照明用、コンセント用、エアコン用などのように文字通り電気を分け、電気を使いすぎた場合に電気を配線用遮断器(ブレーカー)で切ることで電気を安全に使用できる仕組みです。

分電盤に入ってきた電気は、照明器具や照明などを点滅させるため、それぞれの専用スイッチなどに電気が通るよう線を接続します。そのとき、長いケーブルを切断しながら配線しますが、その接続部分を保護するために、ケーブルの接続部分をジョイントボックスという一つの箱の中でまとめます。

ケーブルを接続する方法には、「リングスリーブ」を使用した圧着接続と、「差込形コネクタ」を使用した接続、他にも「P形スリーブ」「ボルトコネクタ」を使用した接続方法がありますが、電気工事士試験に出題されるのは「リングスリーブ」と「差込形コネクタ」の2つです。

リングスリーブによる接続

リングスリーブは、円筒状の金属の輪で、その中にケーブルのビニール部分をはがした導線を通し、外からつぶしてリングスリーブと導線を圧着することで電気を通します。

屋内や屋外等雨水がかかる場所でも接続することができるのがメリットで、電気工事の現場でも一般的に使用されています。逆に、手間がかかるのがデメリットです。圧着接続には、リングスリーブ専用の「圧着ペンチ」を使用し、接続後さらにリングスリーブの部分をビニルテープなどで絶縁処理(電気が外に逃げないようにする処理)をしなければなりません。

効率化するために、これから紹介する「差込形コネクタ」も屋内では主流となっています。ちなみに技能試験では、ビニルテープによる絶縁処理の作業は省略されており、リングスリーブの圧着のみが試験項目です。

差込形コネクタによる接続

差込形コネクタとは、プラスチックの小さな器具にケーブルの導線部分を差し込み、差し込んだケーブルの各先端が同一金属に触れ、各ケーブル同士に電気が通るという仕組みです。差し込むだけなので、効率的で多く利用されていますが、屋内の乾燥した場所のみでしか使用可能できません。湿気の多い場所や雨水のかかる場所には使用できず、差込形コネクタに接続したケーブルは抜けない構造にはなっていますが、無理な力がかかると接続したケーブルが外れる可能性があるため、力のかかる場所での接続にも使用できません。

実際の電気工事ではどちらが主流?

屋内の天井裏等の配線は、乾燥した場所でケーブルに負担がかからないため、接続工事が簡単な「差込形コネクタ」を使用した接続が主流です。

屋外配線や、湿気の多い風呂場などの配線は「リングスリーブ」による接続が必要になります。また、本来エアコンの室内機と室外機を接続するケーブルは、室内と室外で湿度差があるため、途中で切断し、接続することはNGですが、中には短いケーブルをつなぎ合わせ、途中で接続する業者さんがいます。差込形コネクタを使用することによる漏電火災事故が発生しますので、差込形コネクタによる接続は接続する場所に注意が必要なのです。

電気工事士の試験で実際に出題される「ケーブルの接続方法」

次の写真は、実際の第二種電気工事士技能試験の候補問題No.2の完成写真です。
技能試験には、写真のようにリングスリーブによる圧着接続と、差込形コネクタによる接続が出題されます。ケーブルの接続は一般的に、電源側(青線)のジョイントボックス内がリングスリーブ、他方のジョイントボックス内が差込形コネクタによる接続になります。
技能試験では、下記写真のようにVVF用ジョイントボックスは省略されます。

電気工事士技能試験は、リングスリーブや差込形コネクタを使ったこんな作業がある

1.「リングスリーブによる接続」

リングスリーブには、「小」「中」「大」の3種類があり、大きさにより接続できるケーブルの数が次の表により決められています。

技能試験に出題されるリングスリーブは、「小」「中」のみになります。(「大」は出題されません)
ただし、接続部分が「小」か「中」か、ケーブルの太さと本数より自身で判断し作業しなければならないため、上の表は頭に入れておく必要があります。一つでも間違えると他の作業がすべて正しくても、技能試験自体が不合格となってしまいます。

圧着ペンチの種類

圧着接続する際に使用するのが圧着ペンチです。圧着ペンチには大きく分けて小型と大型の2種類があります。小型の圧着ペンチでは「大」のリングスリーブを圧着接続することはできませんが、軽量で作業が楽に出来ます。試験では「大」は出題されませんので、小型のペンチをオススメします。

圧着接続の方法

2.「差込形コネクタによる接続」

まとめ

ケーブル接続の上達のコツは“練習すること”です。絶縁被覆(ビニル部分)を剥く寸法はリングスリーブのみが20mmで、他は差込形コネクタや埋込器具を含めて10mmと、複雑ではありませんし、リングスリーブの接続も寸法はスリーブの上下が約2mmで覚える寸法もわずかです。差込形コネクタによる接続は、絶縁被覆を10mm剥いて差し込むだけなので、あまり手間もかかりません。

ただ、必ず出題されるリングスリーブは「小」「中」のどちらで接続するかを頭に入れておく必要がありますし、圧着も、圧着ペンチの使用方法、リングスリーブをしっかり真ん中で圧着できるかなど、コツが必要です。これらを習得するには、ひたすら練習することが近道。

技能試験は、作業に慣れると合格しやすい試験ではありますが、自分が作品を作った後、技能試験の合格者や指導者に作品に欠陥がないか、必ず確認をしてもらってください。写真で確認するのと実際では差異が生じることが多く、独学で受験後、完璧に練習したはずが不合格となり、さらにどこを間違えていたのか見当がつかないためなかなか合格できないというケースも。練習と確認を重ねて確実に合格を目指しましょう。

プロフィール

TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師
1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。
TAC電気工事士講座ホームページ
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