未来の電気技術者が誕生する…かも! 東京電機大学が親子向け公開講座(D-SciTechプログラム)を開催。白熱の現場に潜入してきた

更新日:2024.11.12投稿日:2024.11.12

講座レポメイン画像

カシオ計算機の創業者である樫尾俊雄氏をはじめ、科学技術分野で数多くの技術者を輩出してきた東京電機大学。同大学が2024年10月19日に、小学5〜6年生向けの公開講座(D-SciTechプログラム)「次世代のエネルギーについて一緒に考えてみよう!」を開催しました。
「WattMagazine編集部も参加しませんか?」というお誘いを受け、普段は入れない大学の実験室に潜入。「次世代のエネルギー」の可能性を探ってきました。

講座に参加してくれた齊藤さん親子

一緒に参加してくれた齊藤さん親子

本日の講座に一緒に参加してくれたのは、齊藤さん親子。お父さんの弘幸さんと光くんです。

小学5年生の光くんはサッカーが大好きなスポーツ少年。一方、電気については、「よく分からないです…」と回答。…果たして電気に興味を持ってもらえるのでしょうか!?

講座が開かれる東京電機大学へ

東京電機大学に到着!

参加者を出迎えてくれたのは、本講座を企画した枡川名誉教授と深澤さん、学生スタッフ、そしてCIBソリューション株式会社の髙橋博士、牧野さん、寺戸さん。

講座タイトルは「次世代のエネルギーについて一緒に考えてみよう!」。
この”次世代のエネルギー”とは何なのでしょうか? その答えは「CIB」です。

「CIB」について説明する枡川名誉教授

枡川名誉教授によると、リチウムイオン電池に変わる可能性を持つ二次電池が、CIBです。
CIBは「Copper Ion Battery」の頭文字をとったもので、銅イオンバッテリーのこと。

「充電と放電を繰り返すことができる電池を二次電池と言い、代表的なものがリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池は、非常に便利なのですが、ある課題を抱えています。それが、リサイクルしづらいこと。分解して再利用するのが難しく、サステナブルと言えません。その問題を解決する二次電池が、CIBなのです」。

本講座の講師を務めるCIBソリューションの髙橋博士

このCIBの研究を進めているのが、CIBソリューション株式会社です。CIBソリューションの髙橋博士は次のように語ります。
「CIBはリチウムイオン電池に比べて構造が単純なため、リサイクルしやすく、環境に優しいという利点があります。まだ研究開発の段階ですが、商品化されれば、リサイクルが容易になり、気候変動に対応する循環型社会の実現を手助けしてくれます」。

次世代エネルギー「CIB」作りがスタート

この講座は、次世代エネルギーのCIBを作るのがミッションです。各参加者のテーブルには専用キットやストリッパーなどの工具が用意されており、道具が揃っていることを確認できたら、CIB作りがスタート。

赤線をカットし電線を剥き出しにしています。

まずは電気を流すための電池用コネクタ線に細工をします。ストリッパーを使って赤線をカットし、電線は剥き出し状態に。そこに別の電線を繋げ、端子をはんだ付けし、電気回路を作り出します。

光くんの横にいるお父さんはサポート役に徹しています。

工作のような作業に真剣に取り組む光くん。お父さんも横でフォローします。

「CIB」を作る工程へ

つづいて、CIBを組み立てます。アクリル版に銅箔シートを貼り付けるのですが、ここで注意が。

素手で触ると危険な電解液を扱う際は手袋をはめて作業

組み立て時に使う電解液を素手で触るのは危険行為です!参加者は皆、手袋をはめて作業します。万が一の事故が起きないようスタッフも慎重に見守ります。

完成したCIB。果たしてプロペラを動かせるかな?
プロペラが動いた!

安全にCIBを組み立てられたら、充電作業へ。充電作業が完了したら、CIBに電気が入っているかをテストします。プロペラとCIBをつなげると…クルクルクル!プロペラが回転しました。CIBがちゃんと機能していると分かり、笑顔の光くん。これでCIB作りは終了です。

講座に参加したことで電気への興味が充電された

「電池を作れて楽しかったです」と目を輝かせる光くん

光くんに本日の感想を聞くと、
「自分で電池を作れて楽しかったです。分からないときはスタッフの方が丁寧に教えてくれたので、迷うことなく作れました」と笑顔で回答。

講座スタート時は電気にあまり興味はなかった光くん、興味は湧きましたか?と聞くと「はい」とのこと。特にプロペラが回転する瞬間が楽しかったと笑顔。自分で作ったものが動く様子を目の前で見られて、達成感が得られたようです。

本講座を企画した深澤さん(学校法人東京電機大学 総務部 地域連携・事業担当課長)

主催した深澤さんに今回の講座の感想を聞くと、ある思いを明かしてくれました。

「小学校ではなかなかできない体験を提供できたと思っています。実は今回、難易度をちょっと上げた設定にしました。まだ習っていないことや専門用語、見たことのないツールも出てきたと思いますが、自分の手で「形」にした今回の体験を通して、『ものづくりって楽しい』とを感じてもらいたい、また『なぜそうなったんだろう?もっと調べてみよう!』につなげていってもらいたいとの思いからです。さらに、企業のエンジニアの方々や最新技術に触れることで、今の学びが将来につながっているんだと感じてもらえると嬉しく思います。このような『場』は未来の技術者が生まれる「きっかけ」になると思っています。

これからも未来の技術者を育てる種まきをするために、いろいろな講座を開催していきたいと考えています」

進路を考えるきっかけとなったイベント

次世代エネルギーに触れたことで、将来を考えるきっかけが生まれました

講座スタート時、参加していた小学生たちは電池にあまり興味がなさそうでしたが、手を動かし、作ったものが完成する中で、徐々に目は輝き、最後は電気のことを質問するまでに関心を寄せていました。中には「東京電機大学で学びたい!」と進路を決めた小学生もいたほど。

講座に参加したことで将来について考えるきっかけを得られたことが、参加者たちの大きな収穫です。いま、大人だけでなく小学生向けの電気イベントが各所で開催されています。お子さんが進路を考えるきっかけを作るため、親子で参加してみてはいかがでしょうか。

取材協力

東京電機大学
東京都足立区に本部を置く理工系大学。科学者・技術者の養成を目指し、1907年に創設。以後、科学技術分野を中心に、各企業で活躍する卒業生を育て上げた。現在も技術で社会に貢献する人材の育成に取り組む。
公式サイト

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