現場レポート
異国の地で夢を追う~電気新聞記者が伝えるネパール人女性研究者たちの挑戦~

少子高齢化による日本全体の労働人口が減る中、多くの業界・企業が「外国人労働者」の受け入れを拡大しています。東北発電工業㈱で2024年6月に、初めて派遣社員として受け入れられたネパール出身女性研究者の挑戦を電気新聞の鈴木友理香 記者に伝えていただきました。
東北発電工業:海外から初の派遣社員を受入れ
日本の少子高齢化による人手不足を補うために、多くの企業が「外国人労働者」の受け入れを拡大している。2024年10月末時点で230万人を超え、過去最高を更新。様々な業種で活躍しているが、電気業界でもその数はじわりと増えている。
東北電力グループで、発電所の建設やメンテナンスを担う東北発電工業は、24年6月に初めて、ネパールから派遣社員2人を受け入れた。現在は技術開発研究室で研究者として、同社の技術力をさらに高めるために日々業務に取り組んでいる。
言語の壁を越えたチャレンジとやりがい
同国トップクラスの公立大学であるカトマンズ大学工学部で化学工学を専攻した、アリヤル・ガンガさんとアディカリ・プレクシャさん。大学卒業後、ガンガさんは同国の飲料メーカーの品質保証部門で、プレクシャさんはセメント会社の品質分析者として働いた後、24年5月に日本に移住した。
東北発電工業の技術開発研究室で活躍する2人(提供・電気新聞)


2人は技術開発研究室で、木質バイオマス発電所から排出される燃焼灰を農業用肥料として活用する研究に取り組んでいる。肥料として使うには燃焼灰に含まれる特定有害物質「六価クロム」を抑制する必要があり、2人はこの六価クロムの構造などを分析している。研究業務に当たる上で「特段難しさは感じない」とする一方、「言語の面で苦労することが多い」という。例えば分析には、特殊な測定装置やシミュレーションソフトウェアを用いるが、使用方法などは全て日本語で説明書を読み解く必要があった。
そんな言葉の壁を努力で乗り越えた2人。「先輩のサポートを得ながら、これまで使用したことのない装置に触れられ、大きな挑戦の機会と成功体験を手に入れることができた」とやりがいを語る。
異文化の中で挑み続ける「2人のこれから」
他にも、ネパールの職場環境とは異なる文化を感じている。ガンガさんは「日本ではチームワークや会社の上下関係が重んじられるが、ネパールはよりカジュアルなため、少しの慣れが必要だった」。プレクシャさんは「年長者を尊敬し、他者に対する思いやりを示すことは同じだった」と共通点も見つけた。
今後の目標について、ガンガさんは「ネパールでは女性は早くに結婚する生き方が望まれるが、私は日本で文化が異なる会社で挑戦を続けたい。そして、将来は尊敬される研究者になりたい」と語る。プレクシャさんは「自分のスキルと専門知識を発展させ、東北発電工業のチームの一員となりたい」と意気込みを述べた。
記者プロフィール

鈴木 友理香(すずき・ゆりか)
2020年入社。電気工事、建設業界の担当を経て、現在は東北支局。電力・エネルギー、関連する工事業界、地域経済について、機敏なフットワークと労を惜しまぬ取材で多数の記事を発信する。