電気業界の仕事とは?
目指せ1,000万プレイヤー!?異業種から転身した建設社長のあやかさんが語る電気工事業界のこれから

TikTokやInstagram、YouTubeを通して、とびっきりの明るい笑顔と元気な姿で電気工事の仕事についていろんな角度から魅力を発信し続けている「建設社長のあやか」さん。そのキャッチーでわかりやすいショート動画は、電気工事業や建設業だけでなく、若い人や業界外からも注目を集めています。
もともとは看護師として務めていたあやかさんですが、どのようなきっかけで未経験から電気工事会社の社長に転身したのでしょうか。異業種からの転職で見えた、電気工事士の本当の魅力ややりがい、挑戦したいことについて語っていただきました。
目次
「手に職を」と選んだ看護師の道から一転、電気工事会社へ。そのきっかけとは?
――まずはあやか社長の現在のお仕事についてお聞かせください。
株式会社レナトゥスの代表取締役社長として、社員や案件の管理を行ったり、SNSでの発信をしたりしています。
――高校を卒業後は、看護専門学校へ進み、その後一般病棟の看護師として勤務されていました。
高校卒業後に看護専門学校へ進学し、21歳で卒業しました。母が介護の仕事をしていて、物心ついた頃からよく職場へ遊びに行っていたのですが、介護の現場には必ず看護師さんが一人いらっしゃって、看護師さんの仕事を間近で見てきたんですね。それに加え、母子家庭で育ったこともあり、母から「手に職があれば仕事に困ることがない」と聞かされてきたため、「看護師の資格を取れば、この先何があっても働き口に困ることはない」と、看護師を目指すようになったんです。
看護師になってからはじめに勤めたのは、お子様からシニアまで幅広い患者さんを担当する混合病棟(※)でした。そこに唯一なかったのが脳神経外科。混合病棟には3年ほど勤め、あらゆる経験を積むことができたので、次は脳神経外科で学びたいと専門の病院へ転職。脳神経外科の病棟で1年、脳神経クリニックで1年、トータル2年ほど勤めました。
脳神経外科は想像以上にハードワーク。脳神経外科に来られる患者さんは、基礎疾患に高血圧や糖尿病を持っている方が比較的多く、割と若くて体力もあり、全体的に大柄な方がいらっしゃるんです。脳神経疾患の急性期(病気発生直後のこと)で興奮状態にある場合は看護師が患者さんの安全を守るため、お身体をおさえさせていただくのですが、大柄な方が目一杯動くので、それだけでみるみる体力を奪われてしまって…。毎日が本当に体力勝負でした。そんな日々を過ごしたことで少し消耗してしまったこと、6年を通して一通り看護の仕事について学んだことで、「次は全く異なる業界に身を置いてみたい」と考えるようになったんです。
※複数の診療科の患者さんが同じ病棟に入院していること。
――そこで、転職先に選ばれたのが電気工事会社の事務職でした。
それまでは毎日、命の重さに向き合ってきました。看護師は非常にやりがいがある仕事ですが、尊い命に向き合うため、その分責任も大きく、気づかないうちに心も疲れてしまって…。次は自分で淡々と取り組める仕事がしてみたいと思うように。電気工事業に興味があったわけではなく、たまたま目に入った事務職の募集を見て「やってみようかな」と思い、エントリーしました。

――1年ほど事務職でお勤めの後、同じく電気工事会社で社長業として着任されます。そこへ至るきっかけとは?
今の会社に入るきっかけは、会社のオーナーから声をかけていただいたから。看護の仕事はハードでしたが、私はちょっとでも暇ができるのが苦手な性格で、気分転換も兼ねて、夜は友人と飲食系のバイトをしていたんです。事務職で働くことになってもそのバイトを続けてきたのですが、よくお店にいらっしゃっていた方が電気工事会社のオーナーをしていて、これから新しく立ち上げる会社で女性社長になってみないかと。面白そう!と思い、快諾しました。
20代の若き女性社長が爆誕。それは電気工事業へ身を置いて1年のことだった。
――電気工事会社の社長業と聞いて、どんな印象を受けましたか。
好奇心旺盛なタイプなので楽しみでしかたなかったですね。
電気工事会社に事務職で勤めていたとき、男性の職人さんばかりでしたが、電気工事は細かく繊細な作業も多く、「これって女性も同じように活躍できるんじゃない?」と思うことがあったんですね。そこで、私が社長になったら女性が働きやすい環境を作って、女性技術者を増やそう!と決意。創業時は女性技術者が0人でしたが、今は3名も現場で活躍しています(SNS経由)。
――オーナーさんはあやか社長のどの点を魅力に感じ、お声がけされたと思いますか?
そうですね〜、経営に関しても建築に関しても知識はありませんでしたが、看護師時代に多種多様な患者さんと接してきたので、コミュニケーション能力には自信がありました。それに加え持ち前の明るさや看護師時代に培ってきた強さ、バイタリティは誰にも負けない自信があります。
――あやか社長からはエネルギッシュで華やかな印象を受けました。笑顔でハキハキとお答えされる姿から、「この人となら、どんなハードルも乗り越えていける」と思われたのではないでしょうか。看護師から事務職、そして社長へ。全くの異業種ですが、電気工事会社の社長になって苦労したことはなんでしょうか。
業界用語を含め、覚えることがとにかくたくさんあることに苦労しました。ただ、コミュニケーションをとるのが好きで、人をまとめることが得意だったので、職人さん一人ひとりとの対話を大事にすることで、チームとしてまとめ上げ、それが結果として会社の成長にもつながったのだと思います。
――電気工事会社の社長としてのやりがいは。
2025年4月で3期目が始まり、社長として2年が経過しました。
まだまだ覚えることもやるべきことも数えきれないほどありますが、一つひとつ達成した時にやりがいを感じます。最近では、職人さんが積極的に「こんなことがあったよ」と報告してくれたり、自らコミュニケーションを取ったり、みんなが私のことを慕ってくれるので、社長という道を選んで本当に良かったと感じます。

――看護師から電気工事業界へ。異業種からの転職で気づいた「電気工事業の魅力」について教えてください。
私は手に職をつけたいという思いから看護師になりましたが、電気工事士も技術を身につければ一生、活躍できる仕事です。実際にこの業界に入って気づいたのは、電気工事は本当に仕事の幅が広く、良い意味で底がないということ。覚えることが多い反面、常に新しい経験ができますし、飽きないし、終わりがない。だからこそ、ずっと向上心を持ちながら働くことができると思っています。それは他の職業にはない魅力なんじゃないでしょうか。
――電気業界として今後取り組むべき課題は何だと思いますか。
まだまだ女性技術者が少ない状況ですし、女性が働きやすい環境が整っていないと感じるので、業界全体としても改善は急務です。現場によって、女性用の更衣室やトイレが設置されていないケースがありますが、それだと女性が気を遣ってしまう。女性技術者が増えることによって、自然と何が必要かがわかると思いますので、女性技術者を増やすことと環境を整えることを併行して進めていきたいですね。
また、弊社は従業員の平均年齢が30代前半と若いのですが、業界全体としては若手技術者が少ないことが課題。職人になりたい方が少ないのは、受け入れ体制が整備されていないことも要因の一つですので、そこは研修体制を構築するなどして、変えていくべきかと思います。
SNSのメリットは全国へメッセージを届けられること
――2023年クリスマスよりTikTokのショート動画投稿を開始され、2年未満で多くのフォロワー数を獲得されています。
会社創立から課題に感じていたのは、電気工事の需要は増えているのに人手不足が蔓延化していることでした。会社を拡大するには採用に力を入れなくてはなりません。そこで若い人の利用率が高いSNSに着目しました。
採用に成功していた介護系の会社を運営している私の弟からSNSの運用を勧められ、紹介してもらった制作会社へTikTokの企画・編集・投稿を専門の会社へ外部委託することに。電気業界に身を置いていますので、どんな動画を作ればいいのかわかりませんし、制作体制もなかったので、ここはプロにお任せした方がいいなと判断。そしてこれを機に、一気にフォロワーが増えていきました。
――ユーザーからはどのような反応がありましたか?
「こんな会社で働いてみたい」という前向きなコメントを多くいただいています。ざっくりと台本はありつつも、基本はアドリブで、ほぼいつも通りの会話をしているだけ。SNSを通して、若い人を中心にレナトゥス“らしさ”や仕事の魅力を伝えられたのは本当に良かったと思います。
TikTokを運用してから、全国から、そして異業種からの転職で面接を受ける方も増えました。最近では長年、保育士を務めていた方が電気工事士になりたいと転職したケースもあります。
――今後、SNSを通して取り組んでいきたいことを教えてください。
SNSは若年層だけでなく、業界内外、そして全国に向けて多くの方へメッセージを発信できるのが大きなメリットです。そして、今では電気工事士の魅力を多くの人に知ってもらうツールとしても重要な役割を担っています。
ここ最近はM&Aで事業継承が難しい会社さんなどを買収し、再起させることに取り組んでいます。現在はかなりの数のフォロワーを獲得でき、私たちが伝えたいことを一気に拡散させる環境ができました。SNSを基盤に、電気工事の魅力を伝えたり、地方を盛り上げる取り組みをしたり、事業拡大をさらに推し進めていきたいですね。
――「建設社長のあやか」さんが今後挑戦したいことは?
先ほども少しお話ししましたが、女性技術者や若手、新卒社員の採用を拡大しつつ、社員が定着する仕組みづくりを強化していきたい。
会社が一つのチームになるために、入社後のオリエンテーション実施や一人につき一人職人がつくマンツーマンでの育成体制構築、LINEでつながって相談や悩みを気軽に話せるトークルームを設けているほか、定期的にお花見やバーベキューなど、業務外で集まるイベントを開催しています。参加率も高く、人間関係も非常に良好なのも、社員を家族と同じように大切にしながらチームワークを築く努力を続けてきたからかもしれません。
――最後に、ワットマガジン読者や転職を考えている人たちへメッセージをお願い致します!
電気工事士は奥が深く、やりがいがある仕事ですので、ぜひ迷わず挑戦していただきたいと思います。頑張ったら頑張った分だけ成果(報酬)につながりますし、実際に30代で1,000万プレイヤーとしてバリバリ活躍している方も弊社にはいますから。
また、建設業界全体が働き方改革に取り組んでおり、土日祝日はもちろん、お盆は夏季休暇、年末年始休暇、有給休暇もしっかり取得できます。過去には土日祝日も朝から晩まで作業しているというイメージがあったかもしれませんが、今ではワークライフバランスも保てるようになりました。残業や休日出勤があれば必ずその分の手当もありますし、安全講習や保険を含む福利厚生も充実しています。弊社では資格手当や人の技量に対して基本給を提示していますが、基本給自体も上がっているんです。会社によって異なる部分もありますが、働く環境を改善するために、さまざまな仕組みや制度が設けられているんです。
やりがいを感じながら成長ができる。頑張れば対価がついてくる。需要も高く、可能性しかないのが電気工事士です。ぜひ、多くの方にチャレンジしていただきたいですね!
プロフィール
建設社長のあやか
株式会社レナトゥス 代表取締役
1994年生まれ。看護学校を卒業後6年間ほど看護師として勤めたのち、事務職として電気工事会社へ転職。その後、知人からの勧めで株式会社レナトゥスの社長に就任。女性でも活躍できる電気工事会社を目指し、現在では3名の女性従業員が働いている。
ホームページのリンク
TikTokのリンク
Instagramのリンク

「電気工事の資格は人生を豊かにしてくれる手段のひとつ」電気工事士歴20年の女性技能者 前中由希恵さんが語る電気工事士の魅力とは
アルバイトをきっかけに電気工事の仕事と出会い、電気工事士の道へ進んだ前中由希恵さん。しかし、そこで目の当たりにしたのは、女性が働く環境の厳しさでした。それ…

業界をよりよくしたい!〜株式会社ビトウで代表を務める女性技術者・尾藤紗希さんが伝えたいこと
未経験から電気工事の世界に足を踏み入れ、その魅力とやりがいにどんどんハマっていったと語るのは、株式会社ビトウ代表取締役・尾藤紗希さん。女性、特に働くママさ…