電気予報士・伊藤菜々さんにきく!「電気の料金はどうやって決まっているの?」

電気予報士・伊藤菜々さんにきく!「電気の料金はどうやって決まっているの?」

2022年に入り、テレビや新聞で「電力ひっ迫」のニュースを目にする機会が増えました。私たちが生活を営むうえで必要不可欠な電気。停電を経験したことがある人であれば、電気のありがたさを改めて痛感されていることでしょう。これからも継続して電力を維持し、守っていくために、電気予報士・伊藤菜々さんが電気にまつわる大事な情報をお届けしてくれます。電気について理解を深め、一緒に電気を守っていきませんか。


電気代が値上がりしているって本当?

昨今、電気代値上げやロシアウクライナ問題による燃料代高騰のニュースをよく目にするかと思います。ビルの入り口や電車の掲示板でも、「電力需給逼迫につき節電中です」といった標識を見かけるようになりましたよね。

電気代は確かに値上がりしていますが、電気料金には一定のルールがあります。一様に上がった下がったではなく、電気代を分解するとなぜ値上がりしたか、今後どうなるかが見えてきます。電気代を見ると世の中の情勢もわかり、とても面白いのでぜひ確認してみてくださいね。

自宅の電気代をチェックしてみよう!

① まずは契約している電力会社を確認しよう

あなたは、自宅の電気がどの会社と契約しているかご存じですか? 実は電気を販売している小売電気事業者は700社ほどあります。戸建て住宅で切替手続きをしたことがない方は、地域の電力会社(例えば東京電力など)のことが多いと思いますが、ガス会社や携帯電話会社、ケーブルテレビやコープも電気を販売しており、何かをきっかけにご家族が新電力に切り替えている場合もあります。まずは毎月届く電気の明細、もしくはWEB明細を確認してみましょう。

② 電気料金明細の見方

電気料金は通常、基本料金、従量料金、燃料費調整額、再生可能エネルギー促進賦課金と4つの区分に分かれています(新電力の場合は独自の区分の場合もあります)。

東京電力エリアの例

①基本料金

自宅の電気設備の容量に応じて決まります。毎月、電気を使っても使わなくてもかかる固定費。契約電力によって変わる。(単位:kW)

例)東京電力の従量電灯Bの場合、契約電力40Aの場合は1,144円。
一度にいろんな電気を使ってしまいブレーカーが落ちてしまった!という声を耳にします。通常、家やマンションを建てる際にどれくらいの電気機器を同時に使うかを想定して、上限値である契約電力を設定しますが、その上限値よりも多く、そして同時に電気機器を使用することで、安全装置が働き、電気を遮断するブレーカーが落ちる設定になっているためです。

②従量料金

使った分だけかかるもので、携帯電話でいう通話料金。(単位:kWh)
電気代を削減したい場合は、ここの使用量を減らすことになります。
例)消費電力1600Wのエアコンを6時間使用すると、1600W×6時間ですので、(h)=9600Wh=9.6kWh。
9.6kW掛ける従量料金単価が課金されます。

③燃料費調整額

日本の大部分を占める火力発電の燃料である原油、石炭、LNGの輸入価格により変動するもの。毎月、毎エリアで異なり、従量料金と同じく使った分にかかります。
例)22年7月の東京エリアの燃料費調整額:4.15円/kWh
7月の電力使用量が350kWhだった時は、350kWh×4.15円=1,452円が加算されます。

④再生可能エネルギー促進賦課金

再生可能エネルギー発電で発電された電気に対する補助金を、電力の使用者から徴収している仕組み。従量料金と同じく使った分にかかります。毎年5月に料金改定があり、22年度は3.45円/kWhです。この制度は2012年に始まり年々値上がりしており、今後も向こう5年ほどは値上がりする見込みです。

③ 電気代だけでなく使用量と単価をチェックしてみよう

現在は電気代明細もWEBでチェックできるようになっており、過去の電気代や使用量も見ることができます。電気代だけでなく、使用料(kWh)の推移にも目を通してみましょう。
昨年の同じ月と比べて、おそらく電気代は上がっていますが、使用量が減っていたら上手く節電できているかもしれませんね。

以上が、ご家庭の電気代明細の見方です。どれくらい電気を使っているか、過去からどれくらい値上がりしているか、ぜひ確認してみてくださいね。私のyoutubeでも解説していますのでぜひ、こちらもご視聴ください!

電気料金って何に影響されるの?

電気の価格は、発電の単価に大きく影響されます。私たちの電気代には、発電にかかった単価、電気を送る費用、販売諸経費に分かれますが、一番大きな比率を占めるのは発電単価です。
日本の発電は8割が火力発電であり、その燃料である原油、石炭、LNGの価格に大きく影響を受けています。その調整分である燃料費調整単価は約18カ月も上昇を続けており、昔はマイナス調整つまり電気料金の値引きとなっていたものが、今はプラス調整で大きな課金となっています。燃料費はロシアウクライナ情勢の影響や、地球上に限りがあることから今後も上がると予測されています。もっと詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

電気の使用で気を付けたいこと

まずは自分の電気の使用状況を知ることが大事です。それによって、適切な電力プランや家電などが見つかるかもしれません。ぜひ、電気代明細をチェックしてみてくださいね。

プロフィール

伊藤菜々(いとう・なな)

電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。


有限会社スタジオガルホームページ

Twitter

facebook 

Youtube

節電をしなければいけない理由とは!?詳しく知りたい方はこちら↓をクリック!

電気予報士・伊藤菜々さんにきく!今すぐできる節電対策を知ろう

https://www.watt-mag.jp/articles/379

夏に入り、「電力ひっ迫につき節電をお願いします」というお知らせや、節電中という表示を見ること増えました。ロシアウクライナ情勢で電力が足りていない中、少しでも節電に協力して乗り切りたいところです。この記事では、電気予報士・伊藤菜々さんが本当に必要な節電と、ちょっとした工夫でできる節電を解説してくれます。

電気代はこれから上がっていく!?詳しく知りたい方はこちら↓をクリック!

電気予報士・伊藤菜々さんにきく!「電気料金の現状とこれから」

https://www.watt-mag.jp/articles/377

7月の後半から電気代値上げのニュースがよく流れるようになりました。電力自由化後の電気料金を自由に決めていい新電力だけでなく、みなし小売電気事業者という地域の電力会社も値上げを発表しています。今の状況、今後使い続けるとどうなるかを解説していきたいと思います。

この記事のWriter

電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業後、金融業界に入社。その後、再生可能エネルギーファンドに転職し、電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わる。2019年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。事業内容としては、①会社・サービス紹介youtubeの作成 ②電力事業の立ち上げ支援 ③電力についての研修・困った時の質問窓口 などの支援をする。実績として大手新電力での新入社員・営業部員向けの短期研修や定期研修や国立大学(広島大学)での講義、電力系の展示会やセミナー等での講師を行う。

関連するキーワード


電気 伊藤菜々 電気の料金

関連する投稿


電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

原子力発電をした後に発生する燃料の燃えカスを高レベル放射性廃棄物と言いますが、放射線を発することから、人が生活する場所から離れた場所へ保管することが決められています。地下深くに埋めることを決めており、そのことを地層処分といいます。発電後の廃棄物処理は電気を使う私たちにとっても重要な問題なのです。


電気の正体とは?言葉の意味や電気エネルギーも分かりやすく解説!

電気の正体とは?言葉の意味や電気エネルギーも分かりやすく解説!

私たちの生活において必要不可欠な電気。身近な存在でありながら、その特徴については詳しく知らない方も多いのでは。今回は電気とは何かというテーマで基本的な内容を解説していきます。


電気予報士・伊藤菜々さんレポート!周波数変換所に行ってきたよ!日本の電力を東と西で融通する場所

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!周波数変換所に行ってきたよ!日本の電力を東と西で融通する場所

電力には周波数があり、停電を防止するために常時、基準の周波数に合わせられています。日本の電力は、東は50Hz、西は60Hzと周波数がそれぞれ異なり、東西で電気を送りあうには周波数を変えなければなりません。災害時や、エリア内で需要と供給のバランスが合わないときに東西で電力を融通しあうことで、日本全体の電力を効率的に使うことができます。今回は、東西で電力を融通しあう為の周波数を変換する設備の見学とそこで働く方のお話を聞いてきました。


交流回路の位相や力率とは?進みや遅れについても分かりやすく解説!

交流回路の位相や力率とは?進みや遅れについても分かりやすく解説!

直流回路にない概念である位相と力率。交流回路を学ぶ上で避けて通れない概念でありながら、なかなか腑に落ちない方も多いハズ。そこで今回は交流回路における位相と力率について、言葉の意味や計算方法、改善する方法などについて網羅的に解説していきます。


次世代電池として注目されている全固体電池って何?

次世代電池として注目されている全固体電池って何?

スマートフォンのバッテリなどに使われているリチウムイオン電池は、電気自動車などにも使われ始めています。しかし、使い方を間違えると発火や爆発などの危険性があり、注意が必要です。 一方で、大容量電池として活用が期待されている「全固体電池」の研究が進んでいることをご存知でしょうか?2035年には、現在もっとも高性能とされているリチウムイオン電池にとって代わると言われているのです。


最新の投稿


【電気の世界はおもしろい!】電気工事士の資格を取るとこんなことができる

【電気の世界はおもしろい!】電気工事士の資格を取るとこんなことができる

「電気工事士の資格を取ると、どんなことができるんだろう?」 私たちの生活には、家電が多く使われています。実際にどこからどこまでを対応できるのか、写真つきでわかりやすくご紹介します。


コーヒー好き必見!コーヒーメーカーの構造と仕組みを解説します。

コーヒー好き必見!コーヒーメーカーの構造と仕組みを解説します。

コーヒー豆を入れれば美味しいコーヒーを作ってくれるコーヒーメーカー。今回はコーヒーメーカーがどのようにコーヒーを作るのか、特徴的な部品に注目しながら解説します。あまり専門的なことを知らなくても理解できる内容ですので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。


電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

原子力発電をした後に発生する燃料の燃えカスを高レベル放射性廃棄物と言いますが、放射線を発することから、人が生活する場所から離れた場所へ保管することが決められています。地下深くに埋めることを決めており、そのことを地層処分といいます。発電後の廃棄物処理は電気を使う私たちにとっても重要な問題なのです。


現場で役立つ!私の自作道具たちをご紹介します

現場で役立つ!私の自作道具たちをご紹介します

アイデアと工夫で作業の効率化、時間短縮をしてみませんか?私が工事で使用している、手製道具の一部をご紹介致します。


電気工事士マンガ「転電虫」 第三十三回「技能実習生のお名前」

電気工事士マンガ「転電虫」 第三十三回「技能実習生のお名前」

最近では女性躍進、海外の実習生さんなど、多様な方が電気業界で大活躍しています!


人気記事ランキング


>>総合人気ランキング