電気予報士・伊藤菜々さんにきく!今すぐできる節電対策を知ろう

更新日:2022.09.06投稿日:2022.09.06

夏に入り、「電力ひっ迫につき節電をお願いします」というお知らせや、節電中という表示を見ること増えました。ロシアウクライナ情勢で電力が足りていない中、少しでも節電に協力して乗り切りたいところです。この記事では、電気予報士・伊藤菜々さんが本当に必要な節電と、ちょっとした工夫でできる節電を解説してくれます。

今、節電がなぜ必要なの?

節電が必要な理由は、「カーボンニュートラル」「化石燃料の枯渇」「電気代高騰」など、個別にみるとたくさんありますが、これらは大きな物語として考えることができます。その背景にある大きなキーワードは、世界的なカーボンニュートラルの動き。これは脱炭素とも言われ、CO2などの温室効果ガスの排出量を減らそうという動きです。日本でも温対法という法律で、企業の温室効果ガス排出量を監視しています。 世界的に見ると、火力発電は電力供給の6割以上を支えており、さらに日本に眼を向けると約7割が火力発電です。火力発電は燃料で、化石燃料である石油、石炭、LNGを使いますが、温室効果ガスの排出がもっとも少ない燃料はLNGです。そのLNGを世界的に奪い合っている状態が今であり、「化石燃料の枯渇」につながっているのです。

LNGの価格はカーボンニュートラルの流れからの品薄に加え、ロシアウクライナ問題による輸出の制限に伴い、供給量が少なく、価格が高騰しています。また、ロシアウクライナ問題により原油価格も上昇することで、石油の価格も上昇。つまり、日本の大部分を占める火力発電の燃料が高騰しているため、当然ながら発電コストもあがり、電気代高騰につながっているのです。 この一連の流れ(物語)を知っていただければわかる通り、電気代の高騰は一時的でなく、今後も続く可能性が高いということです。カーボンニュートラルの目標は2050年に向けて設定されており、化石燃料は地球上の埋蔵量があるため、掘れば掘るほど希少価値が増します。そのため、今、節電が必要であり、電気代対策に向けた節電スキルが必要になっていきます。 こちらの動画も参考にしてくださいね!

節電は必要な時間帯以外はしなくもいい?

節電は、一日の間でいつでも必要なわけではありません。節電は、必要な時間帯に電気の使用量を減らし、逆に余っている時間には使うことでバランスをとるものです。電気の使用量を減らすことも大事ですが、蓄電池やEV、エコキュートなど、エネルギーを蓄える機器があれば、電気の余っている時間にエネルギーを作ることができます。これをDR(デマンドレスポンス)といい、電力の余っている時間に使い足りない時間に節電をするという取り組みです。 電気は貯めることができないため、発電と同時に使わなくてはなりません。そのため、需要と供給のバランスを保つ必要があります。需要と供給のバランスは、JEPXという日本で唯一の電力取引市場で確認できます。JEPX価格は需要と供給のバランスで決まり、価格が高い時には電気が足りないことになります。 傾向としては、春~秋にかけては夕方から夜の時間帯が足りず、冬はそれに加えて早朝も足りないことがほとんど。節電は足りない時間に実施することが大事ですから、むしろ余っている時間は、電気を使わなくてはなりません。余っている時間にエコキュートを沸き増しする、蓄電池やEVに蓄電する、家事を終わらせるなどの工夫ができると良いですね。

節電するともらえるポイントでお得に節電対策

最近では、節電をすることでpaypayなどのポイントがもらえるなど、利用者がお得になる仕組みも構築されています。国が節電を推進しているため、節電に協力してくれた家庭には小売電気事業者を通してポイントの付与が行われる節電ポイントも最近では話題になりましたね。国からの補助内容は、家庭に2,000円分のポイント、企業には20万円分のポイントが支給されますので、ぜひ、取り組んでみてください。

節電はいつ、どうやってすればいいの?

ここからは具体的な節電方法について解説します。 節電のDR(デマンドレスポンス)サービスを提供している小売電気事業者と契約をすると、前日に「明日の〇時~〇時の間に節電お願いします!」という内容のメッセージがメールやアプリに届きます。 各電力会社によりサービスに多少の違いはありますが、指定の時間に指定の節電量を達成すれば節電成功となります。たとえば小売電気事業者より、「明日の16時~22:00の使用量を前年比で10%減らしてほしい」という通知が来た場合に、それ以上の節電をできれば成功という具合です。 ただし、失敗したからと言ってペナルティがあるわけではないので、積極的にチャレンジしてみましょう。 ただし、節電をしなくては!と、暑いのにエアコンを切るのは体調を悪くするのでNG。無理のない範囲で、電気の使用する時間をシフトするイメージが大事です。 節電の方法は、挙げればたくさんありますし、一軒家かマンションかでできる対策も変わってきます。一軒家の場合は、節電プラス自宅で発電する、蓄電することも有効です。初期費用無料で太陽光発電システムや蓄電池を設置できるPPAというサービスもあり、すぐに建て替える予定がない場合は検討してみてはいかがでしょうか。 もっと詳しく知りたい!という方は次の動画も参考にしてくださいね。

マンションの場合は、自宅で使う電気の一部をオフにしたり、月間使用量は同じでも使う時間を変えたりすることで電力危機の助けにもなります。たとえば、照明をLEDに変える、夕方の時間帯にエアコンの設定温度を1℃上げる、冷凍庫を満タンにしておく、洗濯乾燥機を夜中にセットしておくなど、ちょっとした工夫でも節電可能です。

プロフィール

伊藤菜々(いとう・なな)

電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。


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