電気予報士・伊藤菜々さんにきく!「電気料金の現状とこれから」

電気予報士・伊藤菜々さんにきく!「電気料金の現状とこれから」

7月の後半から電気代値上げのニュースがよく流れるようになりました。電力自由化後の電気料金を自由に決めていい新電力だけでなく、みなし小売電気事業者という地域の電力会社も値上げを発表しています。今の状況、今後使い続けるとどうなるかを解説していきたいと思います。


日本の電気の発電構成は?

まず、日本の電気がどのようにできているかを見てみましょう。日本の電気は約70%強が火力発電に頼っています。そのため、火力発電の原料である石油、石炭、LNGの価格によって大きく電気代が左右されるのです。しかし、日本国内ではこれらの化石燃料が取れないため、99%を輸入に頼っています。

近年、再生可能エネルギーという言葉をよく聞くようになりましたが、導入容量ではまだ、たった10%程度。さらに再生可能エネルギーの太陽光は日射のある昼間の時間しか発電しない、風力は丁度よい風量があるときにしか発電しないといった気まぐれな部分があり、不安定です。さらには、急に再生可能エネルギーが発電しなくなったときを考慮し、つねにバックアップ電源も用意しておく必要がありますが、現在、その役割を火力発電が担っています。

出典:電気事業連合会「日本の発電種類別割合」

電気代の現状

2022年度に入り、電気代は電力自由化した2016年以降、もっとも高く推移しています。電気代は大きく、「基本料金、従量料金、燃料費調整額、再生可能エネルギー促進賦課金」という4つの項目に分かれますが、基本料金と従量料金は会社で決められた単価があり、料金改定を行わない限り変更はありません。しかし、燃料費調整額は毎月、再生可能エネルギー促進賦課金は毎年変動します。最近の電気代が上がっている理由は、それぞれの項目が値上げとなっていることにつながりますが、その仕組みについて詳しく見ていきましょう。

燃料費調整額

燃料費調整額は毎月毎エリアごとに変動します。火力発電に使う石油、石炭、LNGといった燃料の輸入価格によって、電気代に調整を行う費用です。燃料代が世界的に安い時は燃料費調整額がマイナス調整されるため、電気代が下がりますが、逆に今のように高い場合は電気代が値上がりします。飛行機に乗る際の「燃料サーチャージ」を想像していただけると、ピンとくる人も多いのではないでしょうか。

昨今は、ロシアウクライナ問題の関係でロシアからヨーロッパへの石油やLNGの輸出が制限されました。ヨーロッパではそれらの価格が高騰し、足りなくなっています。日本はヨーロッパからLNGを輸入していた影響で価格高騰のみならず、必要な燃料の確保が非常に難しくなっています。また世界的な脱炭素化の流れにより、石油や石炭よりも環境負荷が低いとしてLNGが注目されるようになりました。そのため、今までLNGを使用していなかった中国などが積極的に活用を始め、世界的に価格が上がっているのです。

出典:各社データをもとに当社にて作成

再生可能エネルギー促進賦課金

再生可能エネルギー発電を進めるために、再生可能エネルギーで発電された電気を国が固定価格で10~20年買い取る、固定価格買取制度(FIT制度)というものがあります。国は再生可能エネルギーの電気を平均的な電気代単価よりも割高な価格で買い取ってくれますが、その費用は電気を使う人みんなで分担する仕組みになっています。

そのおかげで再生可能エネルギー発電所は年々増えていますが、国民の負担額もそれに比例し、増えているのです。今後もあと5年くらいは負担額が増加し、再生可能エネルギー発電促進賦課金の単価は今の倍くらいにまでなると試算されています。

これからの電気代はどうなっていくの?

引き続き、今後も電気代は上昇すると見込まれています。発電、送配電など、さまざまな方面から新たな仕組みや設備の維持にお金がかかるため、国民の電気代に上乗せされる形で転嫁されることになりそうです。すでに予定されている制度についてみてみましょう。

燃料費調整額の上限撤廃

先ほどでもご紹介した燃料費調整額には上限値が設定されています。電気は生活に欠かせないものであるため、青天井に値上がりし、生活をひっ迫するのを防ぐためです。しかし、ここ最近の燃料費の急激な上昇に電力会社も収益を圧迫されており、経営を維持するためにも燃料費調整額の上限値を廃止すると動きが出てきています。今後も燃料費が上がり続ければ、電気代も値上がりします。

ただ先ほどのグラフを見ていただくと、21年の前半では、燃料費調整額はマイナス調整であることがわかります。燃料の輸入価格が安い場合はみなさんの電気代から値引かれる制度になっているため、世界情勢によって電気代も大きく影響を受けているのです。

詳しくは動画でチェック!

レベニューキャプ制度

みなさんの電気代に含まれる託送費という電気を送る費用も、23年度から見直されます。電気を家庭に送る際には、送電線や鉄塔、変電所、配電線、電柱、変圧器などたくさんの設備が使われています。それらは多くが昭和時代につくられたものであり、当然改修や点検、また再生可能エネルギーの増加により新たな増設が必要となっています。

送配電会社が今後の計画と必要な費用を計算し、国の承認を得て改訂が行われると、23年度から託送料金が上がることになります。それはみなさんのご家庭の電気代にも反映されることになるため、電気代も値上がりすることが予想されます。

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容量市場

再生可能エネルギーの増加により、気象による変動を受けやすくなったため、最近は発電予測が難しくなりました。そのため、前述したように。予定していた電源が発電しないときを考慮して、バックアップの待機電源を用意する必要があります。

しかし、過去の制度では、発電所は電気を発電した分しか対価を受け取れなかったため、待機のために人員を導入し、発電所を温めていた発電所は大きな赤字になっていました。そこで、待機分の稼働にも対価を与えるために誕生したのが容量市場制度です。こちらは24年度からみなさんの電気代に反映されます。

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電気代上昇を回避するには?

さまざまな値上がり要因がありますが、共通していえることは、電力会社から電線を通じて購入する電気代が高くなるということです。つまり、裏を返せば、自宅から太陽光で発電や蓄電をして使った電気は、燃料費高騰や制度変更の影響を受けません。太陽光を検討したり、省エネ家電を購入したり省エネすることで使う電気を減らせれば、電気代上昇を回避できるでしょう。
今回の内容はyoutubeでも解説していますので、もっと知りたい!という方はこちらをご参照ください!

プロフィール

伊藤菜々(いとう・なな)

電力系ユーチューバー(電気予報士) 上智大学経済学部経営学科卒業。電力全面自由化に伴い新電力の立上げに関わった後2019 年から独立し、現在の有限会社スタジオガルを開業。電力事業の立ち上げ・運営支援、企業PRや商品広報、ZEH住宅やマイクログリッド等の地域脱炭素活動を行う。実績として大手新電力 での研修や営業企画、国立大学での講義、展示会やセミナー 等での講師を行う。 電気業界をたのしく!わかりやすく!解説した Youtube チャンネル「電気予報士なな子のおでんき予報」を 2020 年 4 月開設し情報発信中。 第二種電気工事士試験を独学で合格。現在電験三種の一発合格に向けて勉強中。


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