Q1:どの程度リソースをかければ仕事を好きになるの?
「仕事への情熱は自分が注いだリソースの量に比例する」(『科学的な適職』P46)とのことですが、どの程度リソースをかければ仕事を好きになれるのでしょうか?
[ 回答 ]
このくらいまでリソースをかけなさい、という明確なデータは今のところ出ていません。
ただ、そもそも「仕事を好きになる必要があるのか?」と思いますね。
本書でも、研究データに基づき、『好きなことを仕事にしていた人ほど、「本当はこの仕事が好きではないのかも・向いていないのかも」との疑念にとりつかれ、モチベーションが上下し、スキルも身につかない』と書きました。同じく、「いまは好きではないけど、好きになろう」と努力しても、「いつまでやっても好きになれない……」などのギャップに苦しみ、幸福度が下がってしまう可能性はあります。
「好き」とか「情熱」って厄介なもので、求めれば求めるほど、かえって湧いてこなくなるんですよ。じゃあどうしたらいいんだという話ですが、コントロール下に置けないものはいったん無視するしかない。
「仕事を好きか」「情熱を持てるか」などはいったん忘れて、目の前の仕事をコツコツやることですね。そうしているうちに自然と湧いてくるはずです。
Q2:情熱を求めず、割り切って仕事をするには?
仕事に「好き」や「情熱」を求めるより、『「仕事は仕事」と割り切ったほうが作業の上達が速く、すぐに仕事を辞めない傾向があった』(P45)とありました。仕事に情熱を求めてしまうタイプの人が、割り切って仕事をするには、思考をどのように変えていくとスムーズでしょうか?
[ 回答 ]
仕事に情熱を求める、やっぱりありがちな問題なんですね。この場合は、
「自分の価値観の”大きな方向性”だけ設定し、それに沿って明確なプランニングをする」
のがおすすめです。情熱を求めるタイプの人って、細かいプランニングが苦手なことが多い。すると、目の前のタスクがクリアにならないから、情熱みたいなあやふやなものに意識を持っていかれがち。情熱に惑わされて、目の前のことに集中できていない状態になるんですね。
自分なりのプランを明確にしておけば、いらぬ幻想にすがりつく必要がなくなります。理想と現実のギャップに苦しむことが減り、ストレスのスルースキルが上がるので、幸福感も下がりにくくなりますよ。
価値観の設定とプランニングの詳しいやり方は、『最高の体調』第6章を参照していただければ。
あとは、「自分はなぜ情熱を求めるのか掘り下げる」のも有用ですね。目の前のことから逃げたいのか、単純に作業のテンションを高めたいのか。
「情熱を持っている人が羨ましい」「周囲はみんな活き活きして見える」などの理由なら、みんなそういう自分を演じているだけ、アピールしているだけ、ということもよくありますよ。他人の虚栄心に感化され、振り回されている状態ですね。こういう症状は、大体歳を取ると治ってきたりします。笑
Q3:夢を追い続けた人は幸福になれるのか?
「子供のころの夢を追い続けている人」(P66)の幸福度は、最終的にどうなっているのでしょうか?
[ 回答 ]
各論文のデータを見ていると、「まちまち」としか言いようがないですね。いずれも明確なデータがあるわけではないですが。
夢が叶っても叶わなくても、どっちにしろ幸福になっている人もいます。が、夢って大体叶わない傾向にあり、夢に執着している人ほど破れたときのダメージは大きいので、不幸を感じやすくなるとは言えそうです。
Q4:夢が叶うなら不幸になってもいい?
『科学的な適職』では「適職=あなたの幸福が最大化される仕事」(P31)と定義していますが、「夢が叶うなら不幸になってもいい」という考えもあると思います。どう思われますか?
[ 回答 ]
そういう考えもあると思いますよ。
一つ言えるのは、それは「夢に幸福をジャックされている」状態、ということですね。
人生の目的を「幸福になること」と定義するなら、「手段と目的が逆転している」状態とも言えますが……『最高の体調』にも書いたとおり、そもそも人間は幸福を求めるようにデザインされていません。だからすぐ「夢」とか「お金」とかのわかりやすい欲望にジャックされて、「幸福」を見失うんですよ。
『科学的な適職』ステップ4に書いた「サンクコストバイアス」の問題もありますね。リソースを割いてきた夢や目標ほど、手放し難くなるのは当然です。こういう状態から抜け出そうと思ったら、理屈で詰めていくしかない。ステップ4で紹介しているバイアス解除テクニックなどを定期的に使っていただければ。
まあ、大抵の人は自分がバイアスに陥っていることにすら気づかず、対策を打とうとも思わないので、「あっ、自分はサンクコストにとらわれているかも」と思ったら、その時点でだいぶ抜け出せていると思いますよ。
あとは、「夢を持っている人」って得てして「やりがい搾取されがちな人」でもあります。悪い人たちには利用されないようにお気をつけください。
元記事「夢を追い続けた人は幸福になれるのか?|科学的な適職Q&A『好きを仕事に』編」は2020年1月19日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。
夢を追い続けた人は幸福になれるのか?|科学的な適職Q&A「好きを仕事に」編 | BUSINESS LIFE
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