東大病院の大規模電気設備の点検現場に潜入!停電ができない設備の点検ってどうやって安全に作業してるの?

東大病院の大規模電気設備の点検現場に潜入!停電ができない設備の点検ってどうやって安全に作業してるの?

今回、訪れたのは東京都文京区本郷にある東京大学医学部附属病院です。患者さんの命を守るためにも病院の電気設備は安全に使用できる状態を維持しなくてはなりません。今回、年に一度実施される試験業務の点検作業に携わる関東電気保安協会の人たちを密着取材しました。


大規模な設備と沢山の作業員

東大病院の外観。歴史を感じる立派な建物です。

停電作業には、関東電気保安協会以外にも次のようにさまざまな企業が連携を取りながら作業を行います。
(敬省略)
・東京大学医学部附属病院管理課 施設管理室
・電気設備の保守を請け負っている会社
・電気設備の点検業務を実施した関東電気保安協会
・エレベータ会社
・無停電電源の製造会社
など、大規模な病院の点検では多くの作業者が必要です。

ぞくぞくと関東電気保安協会の作業員の皆さんが集まって来ました。本日、作業に携わる人数は総勢62名。作業会開始前に総括責任者で、東京北事業本部 城北事業所の田口課長代理にお話を伺ったところ、「この現場の責任者を担当するのは初めて」と、少し緊張されていました。しかし、事前に作業員全員へ作業計画を共有しているので準備は万全とのこと。堂々とした立ち姿が頼もしいです…!

そもそも、病院は施設の規模自体が大きいので、点検項目が多くありそうですが、停電可能な時間は非常に限られています。そこで一人当たりの作業箇所を減らし、人数を増やすためにこれだけ多くの作業員が集まっているのです。
東大病院の点検は、延べ365名の協会職員が5日間にわたり実施。今回は、そのうちの1病棟の点検に立ち合いました。

集合の後は15階の点検班と地下2階点検班に分かれて移動。今回は地下班を取材させていただきました。

地下班全体30名でTBM

さらに各作業班に別れてTBMを行います。
※TBM(Tool Box Meeting)その日の作業の確認や注意点を全員で共有するために作業前に行われるミーティングのこと

停電開始まで待ち時間があったため、東大病院で電気設備管理を担当している森井係長様に「停電作業で大変なことは何ですか?」と質問したところ、「停電よりも、復電時に電源から遠い末端の設備が正常に起動するかがいつも心配ですね。また、停電時間を確保するために関係各所との調整を行わなくてなりませんし、停電時間は厳守しなければなりません」と限られた時間内で作業を確実に行うことの大変さについてお話くださいました。

いよいよ停電作業の開始

停電開始予定時刻となり、いよいよ停電作業が始まります。一時的に暗くなって電源系統が切り替わり、復電する、という流れです。

指さし呼称で「開放よし!」

保護継電器の動作試験

高圧電路の真空遮断器(VCB)の点検の様子です。

高圧真空遮断器(VCB)の点検・掃除

目視点検を行いながら丁寧に拭き掃除をしています。細かい作業も多いので、人の目と手で丁寧にこなしていく必要があります。
※真空遮断器(VCB)とは、短絡(ショート)、過電流、漏電などが発生した時に高圧の主回路を遮断する機器をいいます。電気回路や機器設備に何らかの異常電流が流れると、そのままでは電気機器の破損や電気火災などの大きな事故や健全回路への事故波及に進展することになります。これを回避するため、検知された異常電流を遮断し、事故回路を電源から切り離す装置が遮断器です。

停電後、検電して高圧交流負荷開閉器(LBS)開放(高圧から低圧電気に変圧する変圧器を電気回路から切り離す)作業。

LBS開放作業後、別の作業者は作業に入る前に必ず問題がないことを自分で再度検電します。「自分の安全は自分で確保する」がこの業界の掟。

低圧幹線の絶縁抵抗測定。絶縁抵抗測定で不良個所があれば、作業班長→総括責任者→施設管理室職員に情報共有がされていく。

作業の安全確保

停電していない箇所に誤って立ち入らないよう次の対策をしていました。
・作業範囲と作業範囲外を色分けした図で明示
・作業者の方が誤って停電していないエリアには物理的に立ち入らないよう、テープを貼って入れないように対策

作業範囲と作業範囲外を色分けした図で明示

停電していないエリアには物理的に立ち入らないように、テープを貼って対策

今回訪れた東大病院は、設備の規模が大きいため電源系統が数多くあります。ビルや工場などの設備であれば、1つ入切操作をすれば作業が行えますが、それが10個あるイメージです。停電時間を1時間確保していても、実際に点検・清掃作業ができるのはたったの50分。停電時間は絶対的に延長が許されないため、集まった作業員が一つのチームとなって連携し、それぞれの作業に集中し、時間内に完了させます。限られた時間内での見事な連携プレー、作業員を守るために徹底した安全対策、そして手際良く自分の作業を実行する一人ひとりの勇姿。大規模施設の電気と安全は、このようにして守られているのですね。

まとめ

今回は、病院の点検現場では、作業責任者をはじめ、作業員の方々全員が細心の注意を払いながら、テキパキと電気設備の安全点検を行う姿を見せていただくことができました。作業員のみなさんは、電気設備の劣化や不具合を早期に発見し、事故を未然に防ぐために、日々努力を重ねています。

電気の安全を守る人々によって、私たちは安心して病院で治療を受けることができることを忘れてはならないと思いました。しかしいま、私たちが日常的に利用する施設を支える人材が不足している実態があります。電気は生活するうえで非常に重要なインフラです。働く姿を目にする機会は少ないものの、私たちの生活を支えている人たちがいることを、私たちが発信する情報を通して少しでも多くの人に知っていただければ幸いです。

この記事のWriter

電気保安・電気工事業界の認知度向上・入職促進に向けた協議会
の事務局を担当しています。
電験三種の免状は取得しておりますが、実務経験がありません。
電気業界に係る電気人として、電気業界を盛り上げていきたいです。
よろしくお願いいたします。

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