事務員から現場監督へ。職種を変えて分かった、電気の現場で働く楽しさ

事務員から現場監督へ。職種を変えて分かった、電気の現場で働く楽しさ

会社で働く人にとって人事異動は付き物ですが、今まで経験したことがない業務に就くのは、期待と同時に不安を抱えるもの。甲信電気で働く宗岡いずみさんもそうでした。事務員として働いていたある日、現場へ出ないかと言われ、気づけば電気工事の現場監督に。急な打診にもかかわらず楽しめたと語る宗岡さんに、現場で働く魅力を教えていただきました。


社長からある日言われた「現場に出てみない?」という言葉

――宗岡さんの現在のお仕事内容について教えてください。

 

「電気工事や受変電設備工事などを請負う甲信電気に所属し、現場監督(現場代理人)として安全に工事が進むよう管理しています。ただ、現場を希望して入社したわけではなく、最初は事務員として働いていたんです。母がこの会社の事務員として勤務していたことがきっかけで、母が退職した後後任者として私が入社。もともと事務員として働いた経験があったのでなんとなく同社に受け入れてもらいました。当時は電気に携わりたいという気持ちは全く持っていませんでした。なのに、今は現場代理人として電気工事の仕事を楽しんでいる。人生って、いつ、何がきっかけでその人が変わるのか分かりませんね」

――内勤業務の事務から外の工事現場へ異動。職場環境に大きな変化がありましたが、事務員だった宗岡さんが現場監督になった経緯を教えていただけますか。

 

「ある日、社長から『人手が足りないから工事現場へ行って、サポートしてくれない?』と打診され、言われるままに現場を訪れたことがきっかけです。もともと外に出ることが好きな性分なので、いろんな場所で作業ができ、行く先々でいろんなと出会えるこの仕事がどんどん楽しくなってしまって。事務よりこっちが合っているなと思い、現場代理人をするようになりました」

 

――現場代理人として具体的にどんな業務をしているんでしょうか?

 

「私が担当する現場は3人体制で担当することが多く、構成員は電気工事士と施工管理技士、そして現場代理人(請負者代理)。電気工事士と施工管理技士は電気設備の設置や修理業務を担当し、現場代理人は彼らがスケジュール通り安全に業務を進められるよう、作業を進行管理し、かつ安全に進むよう見守ります。昔、屋上で作業をしていた時、作業員が工事作業に気を取られ、工具を落としそうになったことがありました。そうした事故が起こらないように注意を払うのも現場代理人としての大切な仕事です」

 

女性だからという意識は捨てて現場へ。

――現場代理人は、未経験でもすぐに始められる仕事なのでしょうか。

 

「大規模な工事現場はある程度の経験や知識が求められますが、1日で終わる程度の工事現場では可能だと思います。もちろん最初は経験者から作業についてあれこれ教わりますが、いくつかの現場をまわりながら実際の業務で必要なことを覚えていきました。大切なことは現場のみんながスムーズに仕事を進められるよう、気配りをすること。そこを押さえることができれば未経験でも始められる仕事です。しかも私が現場代理人をはじめたのは30代後半から。性別や年齢に関係なくできるのもメリットです」

 

――資格は必要ですか?

 

「基本的に必要ありませんが、持っていた方がいいと思います。私自身もはじめは資格を持たないまま現場へ行きましたが、工事現場へ行くとわからないことばかりで。さすがに、このままではちゃんと監督ができないなと痛感しました。そう思ってから勉強を重ね、600V以下で受電する電気設備の配線や電気工事の作業ができる第二種電気工事士の資格を取得。ただ資格を取ったとしても、実務経験がないため工事はできません。現場を知るために資格を取りました

――この仕事の楽しさとは?

 

「いろんな現場でいろんな方たちと出会えることですね。小学校へ行くと子供たちがこちらに気づいて、挨拶してくれる。当たり前のことではありますが、小さな子が大きな声でしっかり挨拶してくれる姿にほっこりとします。消防署へ出向いたら、隣のスーパーからパンの香りがして、消防士さんとパンの香ばしい匂いで盛り上がったことも。そういう些細な会話を年齢や職種関係なくできることが本当に楽しいんです。また、自分が担当した仕事を褒められ、『私は必要とされているんだ』と実感できることもモチベーションにつながっていますね」

 

――3人のお子さんがいらっしゃるそうで、子育てと仕事の両立で悩むことはありましたか?

 

「それがないんですよ。3人とも大きくなってからこの仕事に就いた事もあって、協力的でしたし育児に支障はありませんでしたね。心がけていることは、なるべく毎日のサイクルを変えないこと、ちょっとした工夫で時短できることを見つけることです。そうする事で仕事もスムーズに進み、家事に時間が割けない、なんてことが起きません」

――素晴らしいですね!ちなみに、女性が工事現場で働くうえで苦労したことはありますか?

 

「ありませんね。私は男だからとか女だからと区別することが嫌いなので、男性トイレも平気で使います。ただ、男性トイレから女性が出てきたことで驚かれたことはありますね(笑)」

 

――なるほど。宗岡さんの意見として伺いますが、女性が働きやすい環境にするのは、どんな工夫が必要だと思いますか?

 

「私自身はあまり意識していませんが、力仕事も少なくはないので、工事現場の仕事はどうしても男性が活躍するイメージが強くなってしまう。そのぶん、女性は女性ならではの気配りや視点、コミュニケーションでサポートしていくことができますから、あまり構えることなく、自身の強みを活かしてどんどん女性も活躍していって欲しいですね。現在では女性に合わせた作業服、安全靴が出てきていてとても助かります。」

 

――ありがとうございました。それでは最後の質問になります。宗岡さんにとってデンキとは?

 

「この仕事に就く前は、家の電気が点く事など当たり前だと思っていましたが、電気が供給されるよう守っている方たちのおかげで明かりが点くと知りました。当たり前だと思っていたことが当たり前ではない。そして感電など見えない危険な一面も持つ。危険だけど人々の生活になくてはならないもの。それが電気だと思います」

<宗岡いずみさんプロフィール>

高校卒業後に就職。その後、結婚し3人のお子さんを育てる専業主婦に。子育てが落ち着いた後、運送会社の事務員を経て、甲信電気の事務員に転職。その後、電気工事の現場監督として数々の工事現場に携わる。役所関係の仕事が多い中、東京ヘリポートなど神奈川県以外の現場に行くことも。

 

<取材・執筆>

野田綾子

関連するキーワード


電気工事 現場監督

関連する投稿


【体育祭より熱狂する!?】電気にも競技大会があるって知ってた?「電気工事技能競技全国大会」とは

【体育祭より熱狂する!?】電気にも競技大会があるって知ってた?「電気工事技能競技全国大会」とは

私たちの暮らしに欠かせない電気。そして日々、電気の安全を守り、各家庭や施設などに安定した電気を供給しているのが、電気工事業に携わる人々です。そんな電気のプロ達が、自分の技術を競いあう大会があることをご存知でしょうか?それが「電気工事技能競技全国大会」なのです。


男性ばかりの現場で女性が働くのは大変ですか? 電気工事業界で奮闘する20代女子のリアルトーク(前編)

男性ばかりの現場で女性が働くのは大変ですか? 電気工事業界で奮闘する20代女子のリアルトーク(前編)

空に向かって、力強く、まっすぐと伸びる「鉄塔」。みなさんは、電気を運ぶ送電線を支えるこの建造物を“守る”お仕事があることをご存じでしょうか。その現場で今、活躍している20代の女性たち、それが岳南建設で働く松山由夏さんと亀田紫野さんです。2人は若き女性技術員として日々、鉄塔を見つめ続けています。男性ばかりで、なおかつ体力が必要な現場。この仕事を選んだ理由を伺いました。


知られざる技術者の世界 ー 日本のインフラを守る電気工事士の仕事

知られざる技術者の世界 ー 日本のインフラを守る電気工事士の仕事

一般家庭から商業施設まで、電気工事を一気に担う電気工事士。現場での電気設備の竣工だけじゃない、彼らの仕事の魅力を公開。


最新の投稿


暑い夏はなぜイライラしやすいの?気温が心理に与える影響を知ろう

暑い夏はなぜイライラしやすいの?気温が心理に与える影響を知ろう

梅雨を乗り越えると気温がぐっと高まり、多くの人が待ち望む夏休みがやってきます。「今までできなかったことに挑戦したい」「少し遠出をしたい」など、気持ちが前向きになるイメージが強い夏ですが、一方でやる気が出なかったり、イライラしたりすることも増えるようです。今回は、夏の気温が心理に与える影響について解説します。


電験三種の勉強の始め方 独学や通信教育などについて検討してみました

電験三種の勉強の始め方 独学や通信教育などについて検討してみました

「電験三種の受験に向けて勉強を始めたいけど何から勉強すればいいのかな」「そもそも、電験三種の勉強って、一人でできるものなのかな」そんな方のために、この記事では、具体的にどのような勉強スタイルがあるのかをまとめました。自分に合う勉強方法を模索してみませんか。


チェックリスト付き!正しい深呼吸で体の中心からリラックスする方法

チェックリスト付き!正しい深呼吸で体の中心からリラックスする方法

呼吸とは、酸素を取り入れ、二酸化炭素を出すだけではありません。 ・人間は呼吸によって動いている生き物である。 ・息を吸えば、体幹に膨らむ力が生まれる。 ・息を吐けば、体幹にしぼむ力が働く。 じつはこの膨らむ、しぼむという呼吸の力による体の圧力の変化が、体調や体質の大きなカギを握っているのです。それを理解するためには、深呼吸を修得して自分の呼吸状態を知り、呼吸のメカニズムを掴むことが必要です。


発酵食品は“毎日”食べよう!効果的に善玉菌を増やす食べ方とは?

発酵食品は“毎日”食べよう!効果的に善玉菌を増やす食べ方とは?

乳酸菌やビフィズス菌は毎日摂らないと意味がない、って知っていましたか?この記事では、発酵食品から腸内環境を整える方法を紹介していきます。


試験前のメンタル術!自己成就的予言で力を発揮する方法

試験前のメンタル術!自己成就的予言で力を発揮する方法

期末テストや受験、就職・資格試験など、日常生活に試験は多くありますが、多くの人が試験前後に不安や緊張を感じやすいものです。試験前の気持ちは本番に影響しやすく、中には本来の実力を発揮できないという人も。 そこで今回は、現役心理カウンセラーが試験前に注意すべきこと、そしてメンタルマネジメントを行う方法について解説します。


最近話題のキーワード

Watt Magazineで話題のキーワード


筋トレ 筋トレ 効果 睡眠 関東電気保安協会 電験二種 ストレッチ