現場インタビュー
資格を得て知った仕事の楽しさ。電気保安業務と資格の関係
電気を守る仕事に就きたい! しかし電気の仕事をするには国家資格が必要です。今回は電気保安業務にはどのような資格が必要かについて、九州電気保安協会の梅林良行さんに教えていただきました。梅林さん自身は試験に落ちた経験があるとのことで、不合格という経験を糧に合格を獲得、次のステージへと飛躍してきた梅林さん。資格取得までに苦労したこと、資格を取ったことで得た仕事の楽しさとは?
――はじめまして、WattMagazine編集部です。まずは自己紹介をお願いします。
「はじめまして、九州電気保安協会・北九州支部に所属する梅林良行です。本日は宜しくお願いします。私は工業高校の電気科を卒業した後、2002年に入社し、今年で19年目(2020年5月時点)を迎えます。入社してからは、高圧受変電設備(=自家用電気工作物)の保安業務に従事していましたが、現在は主に試験技術業務を担当しています」
――試験技術業務とはどのような業務をなされるのでしょうか。
「自家用電気工作物を設置するお客さまの要請を受け、点検・測定・試験などを行うのが主な業務です。具体的には、自家用電気工作物の精密点検や太陽光発電設備の保守点検、安全用具の点検、防災などに関する点検として消防用設備点検を実施しています」
――色々な種類の設備点検をされているんですね。
「そうですね。電気設備点検や消防用設備点検を実施するためには、必ず設備の種類に応じた点検資格が必要です。色々な点検業務をするためには資格を増やす必要があります」
難関の「第三種電気主任技術者」。なかなか突破できなかった合格への道
――現在はどのような資格をお持ちなのでしょう。
「工業高校に在籍した時に、学校のカリキュラムとして『第二種電気工事士』や『危険物取扱者』などの資格を取得しました。危険物取扱者は、一定数量以上の危険物を貯蔵し、取り扱う際に必要な資格です。入社してからは、500kW未満の自家用電気工作物の電気工事をするのに必要な資格である『第一種電気工事士』を取得しました。その後、『第3種電気主任技術者』を取得しました」
――「第三種電気主任技術者」は電気の資格において合格するのが難しいと言われる資格ですよね。
「そうですね。この資格の取得方法は2種類あります。1つは毎年9月にある筆記試験に合格する方法。もう1つが、経済産業省が定めた認定校を卒業し、実務経験を積んだうえで取得する方法です。私は工業高校の認定校を卒業していましたので、後者の方法で取得しました」
――「第三種電気主任技術者」の資格を取得したことで、業務の幅はどのように広がりましたか。
「多くの電気を必要とする商業施設や店舗、工場、オフィスビルなど様々な施設には高圧受電変設備(=自家用電気工作物)が設置されています。この資格があれば、高圧受変電設備の点検や管理といった電気主任技術者ができるようになります。業務の幅は大きく広がりました。その他には試験技術業務があります。防災などに関する点検として、消防用設備点検を実施していますが『消防設備士』の資格が必要となります。この資格は甲種と乙種の2種類があり、甲種は工事・整備・点検、乙種は整備・点検ができます。建物の用途、規模、収容人員に応じた消防用設備の設置が法律で義務づけられています。スプリンクラー設備やガス消火設備、自動火災報知設備、消火器などの点検には特類・1類から7類の資格が必要です」
――そんなにたくさんあるんですね!
「そうなんです。将来的には取得していない残りの甲種や特類を取得したいです」
試験に落ちた後に自分を振り返ることが次の合格に繋がる
――その他に、今後取得したい資格はありますか?
「『第二種電気主任技術者』の試験にも興味があります。この資格は、電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者としての知識が必要です。『第三種電気主任技術者』は、電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者としての知識が必要とされているので、『第二種電気主任技術者』を取得することで業務の幅が大きく広がります。この資格は非常に難しいので、しっかりと勉強をしなくてはいけません」
――梅林さんはどのように試験勉強をされているのでしょう。
「仕事や家事・育児をしながらの試験勉強は、朝5時には起床し、1時間ほど勉強します。また、昼休みなどの休憩時間や就寝前の時間を有効活用して取り組みます。また、勉強に集中する日と勉強を休む日をスケジュールで決め、メリハリを作ることにも気を付けています」
――資格を取ることで仕事にどんな影響がありましたか。
「多くの資格があれば業務の幅が広がるので、任せてもらえる仕事が増えます。また、資格の取得後は経験を積むことが必要なことです。」
――試験勉強は苦になりませんか?
「仕事と家事・育児をしながら取り組んでいますので大変ですが、頑張って勉強しています。働くうえで必要な資格試験なので、自分がなりたい姿をイメージして自己啓発に努めています」
――試験に落ちた時は落ち込みますよね。
「そうですね、落ち込みますね」
――そんな時、どのようにして気持ちを切り替えていますか。
「あと少しで合格できそうだったので、もうひと踏ん張り頑張ろうと自分を鼓舞して気持ちを上げます。また、試験結果を自己採点し、不足しているところを復習し、再チャレンジしています」
――そこまで頑張れる、この仕事の楽しさとは?
「電気設備に不具合が起き、停電で困っているお客さまがいる。お客さまのために対応し、電気が通った時に感謝された時は喜びを感じます。また弊社のECOねっとシステム(デマンド監視装置)を導入されたお客さまから、電気料金の削減効果が出たと言われた時は達成感がありました。
そうやってお客さまのお役に立てた時は、この仕事で良かったと心から思います。現在は副長として、業務の遂行や後輩の育成にやりがいを感じて頑張っています」
――仕事が好きだなんて素敵ですね。そんな梅林さんにとって“デンキ”とは?
「社会を支える大切なエネルギーだと思っています。停電して電気が使えない状態から通電して再び電気が使用できるようになった時に、電気の大切さとありがたさを感じています。私たちが生活を送るうえで必要不可欠な存在だと思います」
<梅林良行さんプロフィール>
九州電気保安協会の北九州支部の所属。2002年に入社して以降、電気保安技術者として、主に自家用電気工作物の点検業務や防災点検などを行う。現在は、北九州支部の技術グループにおいて、一般管理職として多岐に渡る業務を遂行。
<取材・執筆>
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