電気業界の仕事とは?
自衛隊での経験は電気工事業界では「最強の武器」になる ~笹嶋工業㈱ 伊藤班長インタビュー~
自衛官時代に培ってきたチームワーク、徹底された体調管理、実践的な技能、現場での経験…。電気業界において、これらのスキルを備えた自衛官は即戦力になります。笹嶋工業株式会社で現在、班長を務める伊藤右哲(いとう・すみあき)さんは、元自衛官として活躍し、現在は電気工事業界で働きながら、予備自衛官として年に数回、訓練に参加しています。「自衛隊で身についた習慣やスキルが現在の仕事にも活きている」と語る伊藤さんに、これまでのご経歴や現在のお仕事、印象に残っていることなどを伺いました。
社会から必要とされる仕事という観点で、再び電気工事業へ
――伊藤様の現在のお仕事内容と、これまでのご経歴を教えてください。
工業高校の電気科を卒業後、富山県高岡市にある内線設備の会社で働いていました。しかし、以前から「災害が起きた際に困っている人を助ける仕事に就きたい」という気持ちがあったため、消防士への転職を考えました。その時、知人から自衛隊の方が向いているんじゃないかと薦められ、任期制自衛官として陸上自衛隊へ入隊を決意。金沢の14普通科連隊に配属され、衛生小隊として主にケガの処置などを行っていました。

任期は2年と決まっていたので、この先のキャリアについてどうしようかと考えていたところ、「もう
一度、電気工事のスキルを生かした仕事ができないかな」と思い、私の地元近くにあった笹嶋工業株式会社へ入社しました。入社から14年が経ち、現在は班長として、現場の指示出しやフォローを行いながら、会社から許可をいただいたうえで、年に5回ほど予備自衛官として訓練に参加しています。
――資格取得(電気工事士など)に向けた勉強はどのように取り組まれましたか?
当時は、在学中に資格取得をとる機会がなかったため、働きながら勉強を続け、第二種電気工事士資格を取得したんです。現場で仕事をしながら資格取得に向けて勉強もコツコツと続け、わからないことはすぐに先輩へ聞くようにして、その時その時ですぐ理解できるようにしていました。工業高校の電気科ですでに土台となる電気の知識や技術を学んでいたこともあったので、素早く吸収できたのかもしれません。

――自衛隊時代と比べて、生活リズムや待遇、ワークライフバランスに大きな変化はありましたか。
自衛隊の教育を受けていた時期は、朝6時に起床し、3分以内に点呼という生活でしたので、そういう観点では大きく変わりましたね。今の職場は休みもしっかり取れますから、仕事もプライベートも充実しています。自宅が停電した時など、家族から頼ってもらえるのはとても嬉しいですし、日常生活の中でも必要とされていることを強く実感できるので、すごく誇りに思いますね。社会でも必要とされ、役に立てる仕事という点では、自衛隊時代と同じかもしれません。
意外と多い…?! 自衛隊と電気工事業の共通点

――現在は再び電気工事業で班長として活躍されていらっしゃいますが、戻ってきた際に活きた“自衛官時代に培ってきたスキル”はございますか。
自衛隊は、幹部が指揮したことに従って行動します。そうしたリーダーシップ像を目の前で見て、一人ひとりがテキパキと動き、チームが協力して作業する点は現在の仕事にも反映されていますね。あとは、まず自分の身は自分で守るといった徹底した安全管理や健康管理、悪天候でも任務を完遂する精神力でしょうか。

――現場に入って気づいた、自衛隊と電気工事現場の「共通点」は何でしょうか?
いくつかありますが、共通点として1つ目にあげられるのは体力面です。陸上自衛隊でしたので、外で長時間待機もありましたし、冬の山に泊まることもありました。どのような天候、どのようなシーンでも指示に従って行動する必要があったため、体力が必要でしたが、現在でも、体力配分を考慮し、どんなシーンに直面しても迅速かつ確実に作業を行うことができています。

また、安全管理という観点でも、自衛隊と電気工事業は似ているところがありますね。全体を俯瞰して
見ながら安全かつスムーズに作業ができるように指揮を取るのが私の役割ですが、チームのみんなを守り、安全に業務が進められるよう、常にリスクを考え、安全に配慮した現場づくりを心がけています。自衛隊では災害復旧時など、危険が伴う場所で作業を行いますから、自然と野生的な感性が養われたと言いますか…。「こういう時はこんな危険の恐れがある」「ここにいると電柱が倒れるかもしれない」など、常に「危機管理意識」を持ち、先回りして危険を予測しながら現場に立っています。

――自衛隊時代に培った習慣は今の仕事に活かされていますか。
自衛隊では穴を掘って隠れる場所を作る作業があり、一度すべて道具を並べ、点検を行ったうえで不備はないか、体調はどうかなど、正確に状況を把握するまで確認を行います。いわゆる「KY活動(危険予知活動)」です。自衛隊ではさまざまな危険がある現場に向かうことがありますが、電気工事の現場でも感電、火災、落下事故などのリスクがありますので、安全を守るためのルール徹底は欠かせません。「自分の身は自分で守る」ことが大前提ですが、自衛隊当時も密にコミュニケーションをとり、互いの状況把握を徹底していたので、電気工事業の今でもなるべく声を掛け合うようにして、変化にいち早く気づけるようにしています。
自衛隊は営利目的で活動しているわけではありませんし、何か一つ成し遂げたら業務が終了するものではないのです。作業中は50分に1回の休憩がありますが、長期的な目標で体力を伴う行動をするときには、体力を温存しておく必要があります。電気工事業は休みもしっかり取れますし、ゴールもありますが、天候も踏まえ、さまざまな現場で動くことになります。集中する時と休む時のバランスを考えて体力をうまく配分ができるのは、自衛隊時代の経験があったからかもしれません。

――現在は班長として現場の指揮をとっている伊藤さん。班長になって一番印象に残っていることは
ございますか。
能登へ災害復旧に行ったときのことです。現地へ向かいながら「被災者の方々の不安な気持ちが少しでも小さくなるように、早急に復旧作業をしなくては」という使命感を胸に、停電した地域で必死に復旧作業を行いました。集中して作業を行って電気が点いた瞬間、近所に住んでいる方々が出てきて、「ありがとう」とご挨拶してくださって。この仕事をやっていて本当に良かったと心から思いました。現地に到着するまで、「どうすれば5人1班のチームで1分1秒でも早く復旧できるか」「効率よく復旧作業を行うには何が必要か」を考え、それを実行できたうえで灯りが点いたので、達成感が大きかったですね。
当時は道が封鎖されているところも多く、荷物を詰めたリュックを担いで遠回りしながら歩いている方を何人もお見かけしました。「力になりたい」「手伝いたい」という思いはありつつも、私たちは電気工事で人々を助けることが一番の目的。葛藤しながら、とにかく今、目の前のやるべきことに集中しました。電気の復旧作業は私たちにしかできないこと。一刻も早く、日常を取り戻していただくために、安心をお届けできるように、使命感を持ちながら作業を進めました。
「何も心配いらんよ」電気業界には安心して飛び込める環境がある!
――もし入社前の自分に声をかけられるとしたら、何と言いますか?
「何にも心配いらんよ!」と言いたいですね(笑)
電気は目に見えないので扱うのが怖いと思われることもありますが、ちゃんと規則とルールを守れば安心してお仕事できますから。体育会系の人、社会貢献をしたい人は特に向いているかもしれません。あと、私は高所恐怖症なのですが、今では電柱上での作業もしっかりこなせるようになりました。安全に作業を行うための工夫や道具が備わっているので、安心して作業に集中できるのです。
――伊藤さんがこの先やっていきたいことはありますか。
そうですね、今後は後輩の育成に注力したいと思っています。

――最後に、後輩の退職予定自衛官や転職を考えている人たちに向けてメッセージをお願いします。
私は電気工事士の資格を持った状態で電気工事業界へ入職しましたが、電気工事業界は資格を持っていなくても、未経験であっても「ここで頑張りたい」という意思さえあれば飛び込むことができます。元自衛官の方であれば、今までの経験が必ず活きるので、すぐに活躍いただけますよ。私が証明していますから。
電気工事業は技術職なので、将来定年を迎えても個人で仕事ができますし、さらに勉強を重ねて、内線工事もできるようになれば、もう、無敵ですよね。資格は入社した後、現場で学びながら勉強ができますし、会社がしっかりフォローしてくれるので安心してください。
それに、自分で工事ができれば、自宅のコンセント付け替えや照明器具の取り替えも、業者に頼まず自分の手でサクッと対応できますし、暮らしの上でもメリットばかりです。自衛官時代のチームワークや安全に対する意識があれば、本当に幅広くどこの職場でも活躍できますよ。手に職があるので長期的に社会で活躍できる。そういう点では、電気工事業界での就職を心からおすすめしたいですね!


プロフィール
笹嶋工業株式会社
伊藤 右哲(いとう・すみあき)さま
配電工事担当。入社から14年目、現在は班長として現場の指揮をとっている。
会社公式ホームページ:https://www.sasajima.net/

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