生活と電気
「鉄塔」や「送電線」の役割と機能|電力インフラを支える仕組みや作業の裏側
鉄塔や送電線は、私たちの生活に欠かせない電気を遠くまで届けるために働く重要なインフラであり、その役割や仕組みには多くの技術が詰まっています。
高い鉄塔に張られた電線は、発電所から変電所へ電気を送電するための通り道です。
地域全体の電力供給を支える機能を担っており、鉄塔の構造や送電線の仕組みには、安全性を確保する工夫や、効率よく電気を運ぶ技術が数多く盛り込まれています。
今回の記事では、鉄塔の役割や送電線の特徴、さらに現場で働くラインマンの仕事まで、初心者にも分かりやすく解説していきます。
目次
鉄塔の役割とは?電気を安全・確実に運ぶための仕組み
こちらでは、鉄塔の役割と疑問・質問について解説していきます。
基礎・本体・がいしが一体となった構造

鉄塔は送電線を高い位置で支え、電気を安全かつ効率よく運ぶための重要な構造物です。
鉄塔の「基礎」は荷重を受け止める大事な役目があり、その上に組まれた鉄塔本体が送電線を確実に保持します。
送電線と鉄塔の間には「がいし」が取り付けられ、電気を絶縁しながら送電線を機械的に固定する役割を果たします。
これらの設備が一体となることで、強風や地震などの外力に耐えつつ、長距離の送電を安定して行える仕組みが成り立っているのです。
鉄塔は地域全体へ電力を届ける送電網の要であり、電気の流れを途切れさせないために精密な設計と維持管理が求められています。
【疑問】赤白の鉄塔があるのは何故?航空法による安全対策

赤白に塗られた鉄塔は、航空法によって高さ60mを超える構造物に義務付けられた昼間障害標識色であり、航空機から視認しやすくするための安全対策です。
ちなみに現在では、2000年の航空法改正により、昼間航空灯のライトを取り付けることで、中間標識塗装を行なわずに60m以上の鉄塔を建てることも可能になりました。
航空法・第五十一条の2(中間障害標識)
昼間において航空機からの視認が困難であると認められる煙突、鉄塔その他の国土交通省令で定める物件で地表又は水面から六十メートル以上の高さのものの設置者は、国土交通省令で定めるところにより、当該物件に昼間障害標識を設置しなければならない。
引用:航空法 | e-Gov 法令検索
赤と白を交互に配置することで遠くからでも形状が判別しやすくなり、夜間は航空障害灯と組み合わせて位置を知らせます。
送電鉄塔は広い地域に建つため、航空ルートとの安全確保が欠かせず、この色分けが重要な役割を果たします。
鉄塔と電波塔の違いは?目的と構造による見分け方
鉄塔と電波塔はどちらも高い構造物ですが、目的と構造が大きく異なります。
送電鉄塔は電気を運ぶ送電線を支えるために建てられ、強い張力を受ける電線を安定して保持できるように設計されています。
一方、電波塔はテレビや携帯電話などの電波を遠くへ届けるためのアンテナ設備であり、上部に通信機器を設置する構造が中心です。
送電鉄塔はがいしを介して電線を絶縁しながら支える点が特徴で、電波塔にはこのような絶縁装置は必要ありません。
用途の違いが構造や形状に反映されている点が両者の大きな違いです。
送電線の役割と特徴|電柱の「電線」とは何が違う?

こちらでは、送電線の役割と疑問・質問について解説していきます。
発電所から変電所へ!特別高圧の電気を運ぶ「電力の通り道」
送電線は、発電所と変電所、あるいは変電所同士を結ぶ電線であり、電気を遠くまで安定して届けるための重要な設備です。
送電線には、鉄塔に張られた架空送電線と、地中に埋設された地中送電線があり,両方合わせて電力網を支えています。発電所でつくられた特別高圧の電気は、送電線を通って効率よく運ばれ、地域の変電所で家庭や工場向けの電圧に調整されます。
電気は貯めにくいため、送電線が常に電力を運び続けることで、私たちの生活に必要な電気が途切れず届く仕組みが成り立っています。
知っておきたい「送電線」と街中の「配電線」の違い
「送電線」は発電所から変電所へ電気を運ぶ特別高圧専用の線であり、街中にある「配電線」とは役割が大きく異なります。
変電所から家庭へ電気を配るための電線が配電線で、一般的に「電柱」を使用しているのが配電線です。送電線は長距離を効率よく送るため特別高圧で運用され、鉄塔や地中管路等の設備を使って広域の電力供給を支えています。
送電線は何故3本1セットなの?効率よく送電する「三相交流」の仕組み
鉄塔に張られた送電線が3本で1セットになっているのは、電気を安定して送るために三相交流という方式が使われているためです。
三相交流は3つの電流が位相をずらして流れる仕組みで、電力を効率よく運べる特徴があります。3本の線が揃うことで電圧が均等に保たれ、長距離でも損失を抑えて電気を送ることが可能です。
大容量の電力を扱う送電線では、この三相方式が最も信頼性の高い方法として採用されています。

ラインマン(送電線作業員)は鉄塔に登り、送電線の建設や保守を専門に行う技術職です。
高所での精密な作業を通じて電力の安定供給を支えており、既設設備の点検では錆・摩耗や雷撃による損傷の有無を細かく確認し、必要に応じて部材の交換や電線を補修します。
新しい送電線を張る工事では、鉄塔上でワイヤを通し、適切な張力に調整しながら電線を固定します。
災害の際には、被災した鉄塔や電線の復旧に携わり、地域の停電を最短で解消する役割も担う、電力インフラを支える「縁の下の力持ち」です。
高電圧を扱うため、専門的な知識と安全管理が欠かせず、チームで連携しながら確実な作業を行うことが求められます。

電気を届ける仕事・ラインマン(送電線作業員)とは?仕事の魅力や給料などを解説
ラインマン(送電線作業員)とは、電気を安全に届けるために、送電線や鉄塔の建設・保守を担う専門技術者のことです。
高所での作業は、悪天候との戦い…

鉄塔での送電線工事はどのように行われている?
ラインマンの作業は、高所で送電線を扱う専門技術と安全管理を組み合わせた高度な仕事であり、鉄塔の建設から点検、電線の張替えや補修まで多岐にわたります。
初心者にもイメージしやすいよう、代表的な作業工程を順序立てて紹介します。
1:鉄塔へ登り作業位置を確保する
送電線工事の基本となる高所作業の準備工程です。
- 墜落制止用器具や昇降器具を使い鉄塔を上昇する
- 作業足場を確認し、工具を固定する
- 周囲の風や天候を確認し安全を確保する
2:ワイヤを通し送電線を張る
新設工事で最も重要となる送電線の設置工程です。
- 地上から引き上げたワイヤを滑車に通す
- 張力装置で電線のたるみを調整する
- 所定の位置で電線を固定し、がいしに接続する
3:設備点検と部材交換を行う
送電線の健全性を維持するための定期作業です。
- ボルトの緩みや腐食を確認する
- がいしの割れや汚れ、電線の傷をチェックする
- 必要に応じて部品を交換し機能を回復させる
4:災害復旧で送電を早期に回復する(緊急対応)
停電を最短で解消するための緊急作業です。
- 被災した鉄塔や損傷した電線状況を確認する
- 仮の設備を作り応急送電を確保する
- 本復旧に向けて新たな鉄塔や電線を設置する

【ドローン撮影】鉄塔で働くラインマン
鉄塔で働くラインマンのリアルな現場をドローンで撮影。動画と画像で紹介。
この動画で働くラインマンは古い鉄塔から新しい鉄塔に電線を移動させる作…

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「ラインマンって何?お仕事現場に一日密着!」
ラインマンとは送電線の工事を行う人達のことで、鉄塔の上に登って作業をしたり、電線の張り替え工事をしたりします。上空50メートルを超える場所で作業をすること…
まとめ|鉄塔と送電線が支える私たちの当たり前な暮らし
鉄塔や送電線が担う役割を知ることで、電気が当たり前に届く仕組みがどれほど多くの技術に支えられているかが見えてきます。
電線を支える鉄塔の構造、安全を守る仕組み、送電を維持するラインマンの作業など、電力インフラは多くの工程が連携して成り立っていることを、ご理解していただけたのではないでしょうか。
普段は意識しない設備ですが、その確かな機能が私たちの暮らしを静かに支え続けています。





