「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由|電気主任技術者のメリットも紹介

更新日:2025.07.22投稿日:2025.07.22

「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由|電気主任技術者のメリットも紹介

電気主任技術者は、需要が高く将来性もあり、年齢を重ねても働きやすいため「安定した職種」と言われています。

しかし、資格取得の難易度が高いことや、想像以上に重い責任に悩む声も少なくありません。

そのため、インターネットの一部では「電気主任技術者はやめとけ」と、言われる場合があります。

今回の記事では、「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由や、電気主任技術者のメリットについて解説していきます。

実際に就業している電気主任技術者の声も掲載しているので、ぜひ参考にしてください。

電気主任技術者とは?

電気主任技術者仕事風景

電気主任技術者は、主に建物や工場などの電気設備を管理する仕事です

主な業務は、電気を使っている機械や照明、コンセントなどの設備を安全に使えるように点検を行ったり、トラブルがあった場合に修理を行ったりすることです。

資格は第一種〜第三種に分かれ、業務は事業用電気工作物の電圧によって異なります。上位の資格を取得することで、大型の施設や工場、鉄道などの電気施設の保安・監督を担当することができます。

大規模な電力を使用する施設では、電気主任技術者による管理・監督が法律で義務づけられているため、社会的ニーズの高い国家資格となっています。

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電気主任技術者とは

「電気主任技術者」の説明

電気主任技術者は独立開業も夢じゃない

電気主任技術者として独立開業した織田さんの仕事風景

電気主任技術者は個人の取り組み方次第で、独立開業の夢を実現できる職種です。織田秀彦さんは、理容師や塾講師を経て、40歳で電気主任技術者になりました。

地元の大型スーパーで、業務経験を5年間積んだ後に45歳で独立。九州電気管理技術者協会に所属して、仕事を紹介してもらいながら、高圧電気設備の点検・保守管理を行っています。

66歳で年間売上1,000万円を達成し、88歳まで現役で働くことを目標にするほど「仕事が楽しい」と語っています。

また、電気という「未来の動力」を守る仕事に、大きな幸福を感じているとのことです。

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年間売上1000万も夢じゃない!? 転職2回で“電気ドリーム”を掴んだ電気主任技術者のハナシ

転職で、まったく異なる業種に就いて、そこから活躍するのは簡単なことではありません。しかし、異業種から電気の世界に転職し、現在では年間売上1000万円を達成…

「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由

電気主任技術者のイメージ画像

「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由は、専門的知識と責任感が求められ資格取得の難易度が高いとされている点が挙げられます。

さらに、企業によっては労働時間が不規則であったり、転勤が多かったりすることも、要因となっています。

①専門的知識と責任感が求められる

電気主任技術者には、電気設備の保安監督という極めて重要な役割が課されています。そのため、高度な専門知識強い責任感が不可欠です。

日常点検や年次点検を通じて設備の異常を早期に発見し、事故を未然に防ぐことが求められます。

また、万が一トラブルが発生した際には、即座に原因を特定し、適切な対応を取る判断力と行動力も必要です。

さらに法令遵守や安全基準の維持、関係者との調整など、技術だけでなくマネジメント能力も問われるため、精神的な負荷も大きい職種といえます。

②「資格取得の難易度が高い」と言われている

「電気主任技術者はやめとけ」と言われる一因に、資格取得の難易度の高さがあります。第三種でも、合格率は15〜20%前後です。

参考①:令和 6 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター
参考②:令和6年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター

出題範囲が広く、計算問題も多いためハードルが高いとされます。しかし、偏差値50未満から電気主任技術者になった人も存在します。

どわーふさんは、施設管理の仕事で電験三種の取得を促され、1850時間の勉強を経て合格しました。

この資格勉強を通じて、既存の高いレベルの技術が体系的に身につき、電気への興味が広がり、社会的なニーズが高いことを実感したとおっしゃっています。

現在は高圧保安担当として、電気インフラを守る重責に使命感を感じながら活躍しています。

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偏差値50未満だった僕が電気主任技術者となるまでの話 前編

将来あなたは何になりたいですか?
パイロット? サッカー選手? ユーチューバー?
憧れる職業はたくさんあると思いますが、なりたい職…

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偏差値50未満だった僕が電気主任技術者になるまでの話 後編

高校、大学と電気と向き合ってきた僕。それから社会人になり、さらに電気の魅力に気づいたのです。

③労働時間が不規則だったり転勤が多かったりする

「電気主任技術者はやめとけ」と言われる理由の一つに、勤務時間の不規則さ転勤の多さが挙げられます。

たとえば、設備を複数所有する企業では巡回業務に伴う移動が多く、トラブル対応のために深夜や休日に呼び出されることもあります。

また、企業によっては全国転勤が前提となるケースもあり、ライフスタイルによっては負担に感じる場面もあるかもしれません。

とはいえ、こうした働き方がすべての職場に当てはまるわけではなく、自分に合った働き方ができる環境を選ぶことが大切です。

電気主任技術者のメリット

電気主任技術者のメリットは、AIに取って代わられる心配が少なく需要が高いため将来性があることです。また年齢制限がなく、年齢を重ねても働きやすいのが、電気主任技術者のメリットです。

①AIに取って代わられる心配がない

電気主任技術者の業務は、AIでは代替しにくい特性を持っています。

現場での異常検知や緊急時の判断、関係者との調整など、人間の経験や判断力が求められる場面が多く、単なるデータ処理では対応できません。

また、電気事業法により一定規模以上の電気設備には有資格者の配置が義務づけられており、法的にも人の関与が不可欠です。

こうした背景から、AIが進化しても電気主任技術者の需要は比較的安定しており、将来的にも職を失いにくい職種だと考えられています。

②需要が高く将来性もある

電気主任技術者は、法律で選任が義務づけられているため、常に一定の需要があります。

再生可能エネルギー設備の増加やインフラの老朽化により、保安監督の専門人材としての重要性は今後さらに高まると考えられています。

また、資格保有者の高齢化が進んでおり、若手技術者の確保が急務となっていることから、将来的にも安定した職業といえるでしょう。

③年齢制限がなく、年齢を重ねても働きやすい

電気主任技術者は年齢制限がなく、何歳からでも資格取得に挑戦できる点が大きな魅力です。

年齢を重ねても、現役で活躍している人が一定数存在しており、定年後の再就職や独立も可能です。

再生可能エネルギーの普及などにより需要が高まっており、年齢に関係なく経験や知識を活かして長く働ける環境が整っています。

専門性や責任感が重視されるため、年齢を重ねた人材にも適した職種といえるでしょう。

電気主任技術者のやりがいや達成感

こちらでは、四国電気保安協会の小松摩瑠実さんと、東北電気保安協会の高橋宙さんのインタビューを元に、電気主任技術者のやりがいや達成感について解説していきます。

小松摩瑠実さんの場合

電気主任技術者 小松摩瑠実さんの仕事風景

四国電気保安協会の小松摩瑠実さんは、電気の安定供給を担う、社会的に重要な職務であることに大きなやりがいを感じています。

見習い期間を経て独り立ちし、自分でお客さんを持ち、一対一で密にやり取りをしながらニーズを汲み取り、設備の改修工事を提案できるため、インフラを守っていることを肌で実感できる点も魅力だと語っています。

また、地域最大級の浄水場における大規模改修の副担当として、見積もり作成から竣工検査の打ち合わせ、台帳管理、図面修正までを任された経験は、非常に大きな自信と良い経験につながったとおっしゃっています。

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「技術と事務スキルを磨いてマルチに活躍したい」電気保安協会入社5年目の女性電気主任技術者のいまとこれから(前編)

四国電気保安協会で技術職として入社し、日々、学びながら経験を積んでいる若手職員の小松さん。普段はどのような仕事をしていて、今後、どのようなキャリアを考えて…

高橋宙さんの場合

電気主任技術者 高橋宙さんの仕事風景

東北電気保安協会の高橋宙さんは、お客様から感謝されたときに一番のやりがいを感じています。

電気が使えなくなり困っているお客様の元へ事故出動し、電気を復旧させた際に「ありがとう」という感謝の言葉をもらえることが、この仕事をしていて良かったと感じた瞬間とのことです。

高橋さんにとって電気は「日常生活に欠かせないもの」であり、お客様にとって安全安心に使ってもらえるよう日々点検することに使命感を抱いています。

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誰しもが人生の中で一度は失敗を経験するもの。大事なことは挫折した後に、そのままネガティブな気持ちを引きずるのではなく、そこからどう頭と行動を切り替えるかで…

フリーランスで育児と仕事を両立している電気主任技術者もいる

フリーランスで育児と仕事を両立している電気主任技術者 遠藤智恵子さんの仕事風景

電気主任技術者は、フリーランスという働き方を選択することで、育児と仕事の両立を効果的に実現できる職種です。

一児の母である、フリーランス電気主任技術者の遠藤智恵子さんは、次のようにおっしゃっています。

「個人事業者はワーク・ライフバランスが取りやすく、仕事と家庭の両立がしやすい。」

遠藤さんは、子どもの体調や都合に合わせて仕事のスケジュールを柔軟に組み立てることができたため、育児と仕事の両立で苦労したことはあまりなかったそうです。

例えば、午前中に外回りを終え、子どもの迎えに合わせて自宅で書類作成や家事を行うといった働き方も可能です。

また、近所に両親のサポートがあり、夫も同じく個人事業主の電気主任技術者であるため、夫婦で協力し合い、共に帰宅が遅くなることはほとんどないという環境も大きな助けとなっています。

遠藤さんは、この仕事は長く安定して働くことができ、プライベートとのバランスも取りやすいため、働くママにとって憧れの職業だと感じています。

現在は「公益社団法人東京電気管理技術者協会」に所属し、協会からの紹介で仕事を得ることで、安定した業務量と安心感を確保しています。

遠藤さんは、この業界に女性がもっと参入し、お互いにサポートし合える環境づくりを目指しています。

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この仕事が育児がしやすい環境を与えてくれた–ママさん電気主任技術者に聞く「フリーランスの働き方」

働き方改革が進み、組織に所属せず、自分の持つスキルを活かして個人事業者として働くフリーランスが増えてきました。そして、電気の世界にもフリーランスとして働く…

まとめ

電気主任技術者は、専門的知識と責任感が求められる職業であり、企業によっては労働時間が不規則だったり転勤が多かったりします。

しかし、資格さえ取得して経験を積み重ねることで、年収アップを見込めたり、独立開業も夢ではありません。AIには代替できず、電気自体の需要がなくならないため、将来性もあります。

お客様から感謝されたときにやりがいを感じている人も存在し、インフラを守っていることを肌で実感できる点も魅力的な職業です。

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