磁石はなぜくっつく?どこまで切り離したらN(S)だけになる?磁石の性質や特徴を解説!

更新日:2025.10.30投稿日:2020.11.27

磁石は、不思議な特性がいくつもあり、奥が深いものです。この記事では、磁石の性質についてわかりやすく解説します。

磁石の基本を知ろう

磁石とは、鉄やニッケル、コバルトなどを引きつける力(磁力)をもった物質のことです。磁石は大きく分けて永久磁石と電磁石の2種類が存在します。永久磁石はそのままの状態で長期間、常に磁性を保つ磁石のことです。電磁石は電流が流れることで磁性が起きる磁石で、電流が止まると磁性がなくなります。本稿では主に永久磁石について説明します。

磁石の3つの特徴を表したイラスト

磁石の性質

引き合う力(吸引力):異なる種類の極(N極とS極)は引き合う。

反発し合う力(斥力:せきりょく):同じ種類の極(N極とN極、S極とS極)は反発し合う。

磁力線:磁石の周りには「磁力線」と呼ばれる目に見えない線が出ています。これはN極から出てS極に入り、磁石の内部を通って再びN極に戻る閉じたループを描いています。磁力線が狭くなるほど磁力が強く、粗な場所ほど磁力が弱くなります。

磁力とは、磁石が物体を引きつけたり、同じ極同士で反発したりする力のことです。磁石のまわりには磁場と呼ばれる空間があり、その中には磁力線と呼ばれる目に見えない線が、N極からS極へ向かって伸びています。この磁力は、物質を構成する原子の内にある電子の動きによって生まれます。電子はとても小さな粒子ですが、スピンと呼ばれる回転のような性質を持ち、それが小さな磁石のように磁場を生み出しているのです。

◆ポイント◆

磁力とは、磁石や電流によって生じる力で、物体を引きつけたり(吸引力)、反発させたり(斥力)する力のこと。
磁場とは、磁力がはたらく空間のことで、磁石や電流のまわりにできる。磁場には、磁力線と呼ばれる目に見えない線があり、N極からS極に向かって伸びます。磁力線が密なほど磁場が強く、線の向きが磁場の方向を示しています。

**永久磁石の種類**

永久磁石は、使用されている原料によっていくつかの種類に分類されます。

フェライト磁石

フェライト磁石は酸化鉄を主原料としており、炭酸バリウムや炭酸ストロンチウムなどを加えて粉末にして、プレス成形後、高温で焼結して作られます。コストパフォーマンスが高く、化学的安定性に優れた磁石で、最も多く使用されている磁石の一つです。日用品から産業用の製品に至るまで、非常に幅広く使用されています。

ネオジム磁石

ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とした人工磁石で、現在実用化されている永久磁石の中で最も強力な磁力を持っています。ハードディスクドライブやスマートフォン、スピーカー、電気自動車のモーターなど、幅広い分野で利用されています。

アルニコ磁石

アルミニウム、ニッケル、コバルトを主成分とした金属磁石で、高温に強く、強度があるため、計測器、モーター、スピーカーなどに利用されています。

サマリウムコバルト磁石

サマリウムとコバルトを主成分とした希土類磁石で、ネオジム磁石のように高い磁力を持ち、錆びにくく、熱に強いのが特徴です。ただし、ネオジム磁石よりやや脆く、割れやすいという欠点を持っています。

磁石はどこまで切りはなすとS極またはN極だけになるの?

磁石が青と赤で塗り分けられているのは、見た目的に赤が北を指す(N極)、青が南を指す(S極)としているのが一般的で、視覚的にわかりやすくするためです。
そして、結論から述べると、棒磁石はどんなに切り離してもN極またはS極だけにはなりません。真ん中で切り離した場合、小さな2つのN極とS極の磁石が生まれます。なお、磁石をどんなに切断しても断面には磁力が存在し続けます。

なぜ、鉄は磁石に引き付けられるの?

鉄に磁石を近づけるとはりつきます。これは、鉄の内部にある磁区と呼ばれる微小な磁石のような領域が、磁石の影響で同じ方向に整列し、鉄自体が磁石のような性質を持つためです。鉄のように、磁石を近づけることで磁気を帯びる物質を「磁性体」といいます。一方で、磁石を近づけなければ磁区の向きはバラバラのままで、鉄は磁性を示しません。

鉄と磁石の関係性を表したもの

鉄以外で磁石にくっつく代表的な金属

ニッケル

耐酸性、耐熱性、耐食性を持っており、アイロンやオーブントースター、グリル、はんだごてなどの電化製品の加熱コイルやエレメントなどにも使用されています。50円玉、100円玉、500円玉といった硬貨に使わるニッケル合金は、磁石にくっつかないように設計されています。これはニッケルの含有率だけでなく、合金の構造や加工方法によるものです。

コバルト

コバルトは、強磁性を持つ銀白色の金属で、高い硬度、耐摩耗性、耐熱性が特徴です。酸や塩基にも強い性質を持ち、携帯電話に使われているリチウムイオン電池の電極材料ほか、合金やバッテリー、顔料、磁石といった幅広い分野で利用されています。

磁石につくステンレスもあるってほんと?

結論から述べると、ステンレスには種類によって磁石にくっつくものとくっつかないものがあります。そもそも、ステンレスとは鉄を主成分としながら、クロムやニッケルなどを加えて作られる合金で、名前の通り、さびにくいのが特徴です。しかし、このクロムやニッケルの含有量によって、磁石にくっつくステンレスとくっつかないステンレスに分かれます。

磁石につくステンレス

フェライト系ステンレス

鉄とクロムを主成分とし、磁性を持っています。身近なものだと、IH調理器、冷蔵庫の外装、洗濯機のドラム、電子レンジ部品などに使用されています。

マルテンサイト系ステンレス

炭素を多く含み、熱処理によって磁性を持ちます。強度と硬度があるのが強み。身近なものだと、包丁、ナイフ、はさみ、ドリル、レンチなどの刃物や工具などに使われています。

磁石につかないステンレス

オーステナイト系ステンレス

鉄、クロム、ニッケルを多く含み、磁性を持っていません。3つの中でもっとも錆びにくいのがこのオーステナイト系です。ニッケルには、鉄が磁石とくっつくのを阻害する性質があり、ニッケルを含むステンレスは磁性を持たないようになっています。

磁石を捨てるには?

磁石は各自治体のルールに従い、燃えないゴミまたは金属ゴミとして処分します。

ただし、磁力が強い磁石をそのまま処分してしまうと、他の金属や危険物とくっつき、事故につながる可能性も考えられますので、新聞紙などで包むなど、磁気を弱めた状態にして処分しましょう。また、磁石単体ではなく、磁石とその他の素材が組み合わせられた複合物の場合なるべく分解をして磁石は燃えないゴミとして、それ以外は素材に合わせた分別方法で処分をしましょう。

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プロフィール

どわーふ

私立大学大学院(博士前期課程)卒業後、大手メーカーで電気部品の開発業務に従事。現在はとある施設にて電気主任技術者として高圧電気保安業務を担当している。また、フリーライターとして「電気主任技術者が運営する就活転職応援サイト」を運営中。」Twitterのアカウントはこちら

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