半導体を理解せよ!種類・原料・製造方法をわかりやすく解説します

半導体を理解せよ!種類・原料・製造方法をわかりやすく解説します

電子部品として産業分野に欠かせない半導体。最近では半導体不足が話題を集めましたね。そもそも、半導体はどのような物質であり、どんな種類や機能があるのか、基本的な部分を分かりやすく解説していきます。


半導体とは導体と絶縁体の中間の特性を持つ物質のこと

半導体とは、電気を通したり通さなかったりする性質を持つ物質の総称で、電気的な用語を使えば導体と絶縁体の中間的な特性を持つと言われます。まず導体とは、銀や銅、アルミ、金などの金属に代表される、電気を容易に流す物質の総称です。これに対し絶縁体とは、木やゴム、ガラス、陶器など、基本的に電気を流さない物質の総称です。そしてこれらの中間的な特性を持ち、状況に応じて電気を通したり通さなかったりする物質が半導体で、絶縁体物質にわずかな不純物を添加して作られます。具体的な素子の例としてはダイオードやトランジスタ、サイリスタなどがあり、導体や絶縁体に比べて様々な付加機能を持たせられるのが特徴的です。

半導体にはいくつかの種類がある

半導体は、素子の特徴や規模に応じていくつかの種類に分けられます。まず電気的な特徴に注目すると、電気を運ぶもの(通称キャリア)が電子であるか正孔であるかの違いによって分類され、前者をn型半導体、後者をp型半導体と言います。詳しい説明は省きますが、製造過程で生まれる違いがあることを覚えておきましょう。

実用目線で言えば素子の規模による違いもあります。具体的には、ダイオードやトランジスタなどの機能を1つだけしか持たない素子をディスクリート半導体、複数の素子や機能を1つにまとめたものをIC(集積回路)、ICよりも更に大規模に集積化したものをLSI(大規模集積回路)と呼んで分類されます。ICとLSIの使い分けに悩むかもしれませんが、現代では集積技術の向上に伴いほとんど同義で使われることも多く、あまり厳密に違いを理解せずとも困ることはないでしょう。

半導体が実現する機能

半導体により実現できる機能は多岐に渡り、電気信号の流れを一方通行にする整流機能、電気信号を通すか通さないか切り替えるスイッチング機能、電気信号の増幅機能、光信号と電気信号の相互変換機能などが代表的です。素子で言えば、整流機能はダイオード素子、スイッチング機能はトランジスタやサイリスタ、光信号と電気信号の変換はLEDやフォトトランジスタなどが各機能を実現します。また、スイッチング機能はプログラミングや論理演算における真偽値の考え方に応用できるうえ、信号の変換機能は様々なセンサに活用できるため、組み合わせ次第で多くの機能が実現できるのです。

半導体の原料と製造工程

多くの半導体素子はシリコンを原料に製造されます。純粋なシリコンは絶縁体として振る舞うものの、不純物を添加することで容易にn型半導体やp型半導体としての性質を示すようになります。他にもシリコンと同じような性質のゲルマニウムやセレンなども原料に使用できますが、資源の豊富さや加工の容易さから、シリコンが最も一般的な原料です。

半導体はシリコンウェハーと呼ばれる薄いシリコンに回路を転写して作られます。まず、シリコンを液状に溶かしてシリコンインゴットと呼ばれる塊を形成し、それを薄く輪切りにしてシリコンウェハーを形成します。シリコンウェハーの表面を研磨・清掃して微細な汚れや凹凸を限りなく除去したら、予め設計していた回路を転写していきます。具体的にはウェハー上に形成した酸化膜と薄膜に対し、設計した回路が描かれたフォトマスクパターンを通して紫外線を照射し、不要部分を取り除くことで転写していきます。

回路が転写されたシリコンウェハーは素子単位で切り分けられ、セラミックなどのパッケージに封入・固定されます。最終的な試験や検査にて絶縁性能や導通性能、素子としての機能に問題がなければ半導体素子の完成です。

半導体の代表的な用途

現在、半導体は身の回りのあらゆる電気/電子製品に使用されています。代表的な例を挙げると、パソコンやスマホなどのCPUやメモリ、家電などで温度や圧力などを測定するセンサ、照明器具や機器のランプに使われるLEDなどがあります。更には自動車から医療用機械まで、世の中に存在する様々な機械の制御にも使用されており、現在では電源を入れて使う機器には何かしらの半導体部品が搭載されているといっても過言ではないでしょう。

まとめ

今回はセンシングや制御動作に欠かすことの出来ない半導体について、意味や種類、製造方法、用途など基本的な内容を解説してきました。昨今の半導体不足からも分かるように世界的に需要が著しく拡大しており、まさに現代の生活を支える重要部品であると言えるでしょう。半導体は今後も更なる発展が期待されるので、今回の記事の内容をしっかりと理解して今後に活かしていきましょう。

プロフィール

佐藤竜騎

2017年4月に某大手石油化学工場へ就職し、現在まで電気・計装設備の保全・更新計画の検討/立案から工事の実行まで一貫した業務に従事。携わった機器/システムは、分散制御システム(DCS)、流量/液面/圧力/温度の検出/制御機器類、ガス漏洩検知システム、プロセスガスクロマトグラフィーやpH計を始めとする各種オンライン分析計、など多岐にわたる。現在は副業として電気/電子分野の専門知識に特化したウェブライター活動にも精を出している。
保有資格:第3種電気主任技術者、第二種電気工事士、認定電気工事従事者、高圧ガス製造保安責任者(甲種機械)、工事担任者(AI/DD総合種)、2級ボイラー技士、危険物取扱者乙種4類など

この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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