EV車やハイブリッド車はなぜブレーキでバッテリーが充電できるの?

EV車やハイブリッド車はなぜブレーキでバッテリーが充電できるの?

EV車やハイブリッド車の電気自動車は、バッテリーに充電した電気を使ってモータを動かすことで自動車が動きます。ガソリンを使ったエンジンによる自動車とは全く構造が異なる自動車ですので、ブレーキのかけ方にもガソリン車とは異なる部分が存在します。 「ブレーキをかけるとモータから発電された電気でバッテリーが充電できる」ということを聞いたことがある人もいると思いますが、それはどのような原理で充電されるのでしょうか。


モータの回生動作を利用したブレーキ

モータと発電機は、実は構造がほとんど同じです。モータは「電気を供給して回転させる」のに対して、発電機は「回転されることで発電する」という電気の方向が違うだけで同一のものを使うことが可能です。

モータを発電機として動作させることを回生動作と言い、モータに電気を供給して自動車を動かす場合、モーターはモーターとして機能します。しかし、回りきってしまったものを止める際に、ブレーキをかけることになります。この場合、モーターへ電気の供給を止めると、モータは惰性で回された状態に。モータは回されて回転されている状態のため、発電機として利用することができるようになるのです。

発電機から電気を取り出すと、電気を取り出す量によって回転しづらくなることが知られています。これは、モータから電気を取り出して、回転しづらくすることでより強力なブレーキをかけることができるということができます。
これによって、モータがブレーキ動作する際に、モータの回生動作によって、ブレーキをかけながらバッテリーに充電することが可能となります。

実際にはブレーキ協調制御も併せて動作

実際のEV車やハイブリッド車はモータの回生動作だけでブレーキをかけているわけではありません。従来のディスクブレーキとなる電動ブレーキブースターとモータの回生ブレーキの併用によって、より強力なブレーキをかけているのです。電動ブレーキブースターも、あまり強くかけすぎてしまうと回生ブレーキによる発電動作が阻害されてしまいます。ブレーキがかかり、より回生ブレーキによる発電が多い点を自動車に搭載されているコンピュータにより高速演算されて制御しています。

自動車の開発にはコンピュータの発達が不可欠

自動車の開発と言えば、衝突の安全実験や、機械構造の設計を思い浮かべる方も多いと思いますが、それはもう過去の話です。昨今の自動車開発はコンピュータによる複雑制御への挑戦とも言えます。電気自動車の回転ブレーキの他にも、自動運転や安全運転制御などコンピュータによる複雑な計算を求められる場面が自動車開発でも増えているのです。

プロフィール

西海登

本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。

本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。

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WattMagazine編集部 編集長

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