GPSは地図上になぜ正確な位置を表示できるの?

GPSは地図上になぜ正確な位置を表示できるの?

地図を表示して、自分の現在値を表示するGPSはカーナビやスマホなどでは当たり前の機能として搭載されています。非常に便利でいろんなアプリにも応用されていますが、よくよく考えてみると、どうやって自分の位置を探し出しているのかわからないことだらけになると思います。GPSはどのようにして自分の正確な位置をカーナビやスマホに表示しているのでしょうか?


GPS用の衛星が自分の位置を検出している

GPSでは衛星が位置を検出している、という話を聞いたことがある人もいるかもしれません、もっと詳しく説明すると、上空2万キロの宇宙空間に24個のGPS用の衛星が地球の周りをまわっています。衛星放送の放送用衛星は上空3万6千キロとなりますので、それよりも近い距離でたくさんの衛星が回っています。そんなたくさんの衛星によって、位置の検出を要求された端末の位置を探しています。

具体的に1点の位置を検出したい場合、たまたま近くを回っていた3つの衛星からの電波によって自分の正確な位置を割り出します。もっと詳しく説明すると、一つの衛星電波の検知では、誤差が大きくなるため、3つの衛星電波からの位置情報を勘案して最も正確な位置として精度を高める、という方法がとられています。

以前は一つの衛星からの位置を割り出していたのですが、非常に誤差が大きく、今のような正確な位置を出すことができませんでした。このシステムを完成させるために、GPS用の衛星の打ち上げを行い、24個もの衛星を使って現在の正確なGPSシステムが完成したのです。

位置と時間を検出して、移動していても正確な位置を出すことができる

位置がわかっていても、誤差が出る場合があります。それは移動しながら位置を検出する場合です。この時間にはこの位置にいたのに、1秒後には違うところに行っている場合があります。自動車で移動しながら位置を検出するカーナビなどがその一つです。

GPSでは位置検出衛星の他に時間を紐づけるための衛星も地球上空を回っています。近くを回っていた3つのGPS衛星の位置情報と、その位置にいた時間を紐づけて、この時間にはここにいた、つぎのときにはここにいるので、どの程度の速度で動いている、といったこともGPSでは認識することが可能です。位置情報と時間を紐づけることで、移動しているものの位置も正確に表示することができるのです。

便利なGPSは、実は軍事利用が発端

GPSは便利な反面、自分の位置が他人にも知られる可能性があるというリスクがあります。実は他人に自分の位置を知られることが目的の軍事利用が、GPSのもともとの開発の発端でした。
科学技術は、その仕組みを知れば悪い方面にも使うことができてしまう、ということは、それを使う人のモラルが問われることだと思います。
技術者教育の中での道徳面を教える技術者倫理はそういった意味では非常に重要です。

プロフィール

西海登

本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。

本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。

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この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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