地球上に太陽を作る?核融合発電の仕組みを解説!

地球上に太陽を作る?核融合発電の仕組みを解説!

資源の少ない日本では、原子力発電は電力の安定供給に欠かせない発電です。原子力発電は事故が起きた際の影響や、発電に伴い発生する放射性廃棄物などの問題が未だに解決されずに残っていますが、おなじ原子力発電の一種で、水素を用いた核融合発電の開発が進んでいます。核融合発電とは、どのような発電方法なのでしょうか。


地球上に太陽を作る

原子力発電はウランなどの原子量が大きな物質に、中性子と呼ばれる原子のもとをぶつけることで、原子核が崩壊した際に発生する熱エネルギーを使ってお湯を沸かす形で発電機を回しています。

原子力発電で気を付けることは、中性子がウランからたくさん飛び出すと、あちこちで原子核の崩壊が起き、想定以上の熱エネルギーが発生し大爆発をしてしまうことです。これが核の連鎖反応による熱暴走です。原子力発電所では熱暴走が起きないように反応を制御しています。これに対して、核融合発電は同じように核反応を起こさせるのですが、原子量が最も少ない水素を使って熱エネルギーを取り出します。

水素の中には中性子を一つしか持っていない重水素と、中性子を二つ持っている三重水素があります。この二つの水素を高温、高圧の状態となった核融合炉に投入すると次々と反応して水素がヘリウムとなって、中性子が他の水素の反応を促すのです。
水素がヘリウムになる際に熱エネルギーを発生させるため、原子力発電と同様にお湯を沸かして発電機を回すことができます。核融合は、太陽が熱エネルギーを発生させる際に同様の反応を行っていると言われていることから、地球上に太陽を作るとも言われています。

連鎖反応や放射性廃棄物が出ない理想的なエネルギー源

地球上に水素は無尽蔵に存在しますし、反応後のヘリウムも無害な物質です。反応中に出る中性子は、人の細胞を破壊する危険な物質ですが、原子力発電のように放射性廃棄物が放射線を出し続けるということはなく、反応を止めればすぐに害はなくなります。

核融合発電は、水素を用いた廃棄物を発生させないカーボンフリーのエネルギー源として、脱炭素社会に向けた原子力発電に変わる切り札として研究が進められています。

高温高圧状態をどう維持するか?が課題

核融合発電では、高温高圧状態の融合炉に水素を投入することで、水素の原子核がバラバラになる状態(プラズマ状態)にして反応させなくてはなりません。この融合炉を高温高圧状態にすることが非常に難しく、反応を維持するためにどのように行うのかという研究が日夜行われています。
高温高圧状態にするのに多くのエネルギーを要してしまうと、発電時に多くのエネルギーを得られても、炉の起動に多くのエネルギーを使うことになります。より省エネを実現した融合炉の開発もあわせて開発が進められているのです。

プロフィール

西海登

本業の技術職の傍ら、webライターとして活動。小説家になりたかった過去を引きずりながらも、本業でも関わりのある技術分野の解説と経済分野を結び付ける記事を得意とする。

本業では、ビルメンテナンス業界から産業用機器の電気設計職へ移り、設備関連の保守点検から構築に関する職業を一通り経験、近年ではIoT関連の仕事にも携わり、ライターとしてもIoT分野の記事執筆の実績も増えている。2015年頃から、小説家になりたかった過去を生かせるのでは?と考え、ライティング業務をスタート。朝4時に起きて執筆活動をする日々を送っています。

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この記事のWriter

WattMagazine編集部 編集長

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