電気業界の仕事とは?
「電気工事士はやめとけ」と言われる理由|「電気工事士が向いている人」を解説

電気工事士は、電気設備の工事や取り扱いを行う、国家資格を持った専門技術者です。
電気工事の仕事は今後も無くなることはなく、売り手市場であるため、将来性もあり安定した職業と言えます。
しかし、一部ネットでは「やめとけ」と、ネガティブなワードが飛び交う場合があります。一部でそういう声が上がるのは、肉体労働で高所や狭い場所での配線作業、繁忙期の激務などが原因と思われます。
特に未経験者にとっては、厳しい環境に適応できるかどうかが重要なポイントとなります。
今回の記事では、「電気工事士はやめとけ」と言われる理由や、会社選びの重要性について解説していきます。
目次
【結論】電気工事士は会社選びが重要
電気工事士に限らないですが、仕事を続けるには会社選びが重要です。どんな仕事でも、環境次第で居心地が左右される部分があります。
こちらでは、Watt Magazineが取材した体験談を元に、会社選びの重要性について解説していきます。
電気工事士歴20年以上|前中由希恵さんの場合

前中由希恵さんは、電気工事士の仕事について次のように断言しています。
「万が一、はじめに入った会社と相性が合わなくても、電気工事士の仕事を諦めないでください。私も何社か経験していますが、必ず学びがあって、自分にピッタリの場所が見つかるはずです。」
前中さんは電気工事士歴20年以上で、現在では「一般社団法人女性技能者協会」の代表理事をされている方です。
前中さん自身、電気工事士として何社か経験する中で、現場の労働環境の課題を感じました。また、建設業界における女性が働きやすい制度が不十分であることに気が付きます。
そして、女性にとって電気工事士は働きづらい環境があること、仲間との横のつながりの必要性を感じ、女性技能者のリアルな声を届けて、定着しやすい環境を作るために「一般社団法人 女性技能者協会」を設立しました。
世の中では働き方改革が進んでいるものの、会社によっては残念ながらブラックな職場環境もまだ存在しているのが現状です。
しかし、前中さんのように改善に努めている人もいて、電気業界でもホワイトで自分が働きやすい環境が見つかるはずです。

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SNSで積極的に会社情報を発信している会社もある
現在では、SNSを通じて電気工事士の情報を発信している会社も存在するので、会社選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
「建設社長のあやか」さんは、TikTokやInstagram、YouTubeを通じて、電気工事の仕事の魅力を積極的に発信しています。
これは、人手不足という業界の課題に対し、若い人や業界外へ電気工事の仕事を知ってもらい、興味を持ってもらうために始めたことです。
SNSでの発信は大きな反響を呼び、「こんな会社で働いてみたい」といった声や、全国・異業種からの応募者が増えており、一定数の効果をもたらしています。
あやかさんはSNSを、女性技術者や若手を増やし業界全体の働きやすい環境整備を進めるための、重要なツールと考えています。

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電気工事士自体は「売り手市場」なので何社か経験してみるのもあり
電気工事士は「売り手市場」と言われているので、何社か経験してみて、自分に合う会社や職場環境を見つけてみるのもおすすめです。
電気工事士が「売り手市場」である理由は、需要の高さと人材不足にあります。現代社会では、電気設備の維持管理や新規設置、更新は必要不可欠です。
そのような中で新築やリフォーム、再生可能エネルギーの導入など、電気工事の需要は増加の一途を辿っています。
その反面で電気工事士の高齢化が進み、若手の担い手が不足しているため、企業は積極的に採用を進めています。
こうした背景から、電気工事士は求職者にとって有利な職業のため、職場環境が合わないと感じたら、会社を変えてみるのもおすすめです。
「電気工事士はやめとけ」と言われる理由

「電気工事士はやめとけ」と言われる理由は、肉体労働で高所や狭い場所での配線作業により、感電や落下といったリスクが伴う業務であり、繁忙期が激務ということも挙げられます。
肉体労働である
電気工事士の仕事は、日々の業務において身体的負担が伴う職業です。
重量のある工具や資材の運搬が必要となり、長時間の立ち作業やしゃがみながらの細かい作業も求められます。
また、屋外作業では天候の影響を受け、炎天下や寒冷地での業務が続くこともあります。特に体力に自信がない人にとっては、厳しい環境が負担となる可能性があります。
この職業を続けることで自然と体力が鍛えられ、作業に慣れると効率的に動けるようになるため、適応力と持久力が重要な要素となります。
高所や狭い場所での危険が伴う業務
電気工事士の業務には、高所や狭い場所での作業が伴うため、危険がつきものです。
例えば、電柱や建物の屋上での作業では、足場の不安定さや強風の影響を受けることがあり、転落のリスクが常に存在します。
また、天井裏や配電盤の裏側などの狭い空間では、体勢を維持しながらの作業が求められ、感電や怪我の危険性が高まります。
安全対策として、適切な保護具の着用や慎重な動作が必要ですが、長時間の緊張状態が続くため、精神的な負担も大きいです。
こうした環境に適応できるかどうかが、電気工事士としての適性を左右する要素の一つとなります。
繁忙期が激務である
電気工事士は夏場や年度末が繫忙期で、激務となることが多いです。
例えば、エアコンの設置や修理が増える夏季は、連日長時間の作業が続き、休日返上で対応することもあります。
また、建設業界の年度末は工期の締め切りが重なり、現場の作業が立て込むため、残業や早朝作業が増える傾向にあります。
人手不足の影響もあり、一人あたりの業務負担が大きくなることも少なくありません。こうした状況に適応するには、体力と効率的な作業スキルが求められます。
一方で「電気工事士は勝ち組」とも言われている

電気工事士については、ネガティブな情報ばかりではありません。年収・給与が高く転職にも有利なことから、「電気工事士は勝ち組」とも言われています。
こちらでは、「電気工事士は勝ち組」とも言われている理由について解説していきます。
年収・給与が高い
厚生労働省が発表している「令和5年度賃金構造基本統計調査」によると、2024年最新の電気工事士の平均年収は550.9万円です。また、平均月収は36.7万円、平均年間賞与は110.1万円となっています。
電気工事士の年収が高い理由は、専門性の高さと需要の安定性にあります。電気設備の設置や保守は社会に不可欠であり、景気の影響を受けにくい職業です。
経験を積むことで収入はさらに向上し、独立すれば高収入を得るチャンスも広がります。
また、技術者不足の影響で企業は優秀な人材を求めており、待遇の改善が進んでいる点も魅力的です。
こうした背景から、電気工事士は安定した収入を得やすく、「勝ち組」と言われることが多い職業の一つとなっています。

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ライフワークバランスも進んでいる
電気工事士の仕事は、近年ライフワークバランスの改善が進んでいる職種の一つです。
従来は長時間労働が課題とされていましたが、業界全体で働き方改革が進み、休日の確保や残業の削減に取り組む企業が増えています。
また、現場作業の効率化やデジタル技術の導入により、業務負担が軽減されつつあります。
さらに、第一種の資格を取得することでキャリアの選択肢が広がり、安定した収入を得ながら柔軟な働き方を実現できる点も魅力的です。
需要があり転職にも有利
電気工事士は、社会のインフラを支える重要な職業であり、常に高い需要があります。
建設業界や設備保守の分野では、電気工事の専門技術が不可欠であり、景気の影響を受けにくいのが特徴です。
特に第一種の資格があれば転職市場でも有利に働き、経験を積めばより条件の良い職場への移動が可能になります。
技術者不足が続く中、企業は即戦力となる人材を求めており、待遇の改善やキャリアアップの機会も増えています。
実際に電気工事士とは関係ない職業から、転職してくる人も珍しくありません。

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会社によっては資格支援制度がある
電気工事士の資格取得支援制度は、キャリアアップを目指す人にとって大きなメリットです。
現在では、社員が資格を取得する際の受験費や教材費を負担し、講習の受講をサポートする制度を導入する企業も増えています。
資格支援制度により、金銭的な負担を軽減しながら専門知識を深めることができ、資格を取得することで給与の向上や昇進のチャンスも広がります。
電気工事士が向いている人

電気工事士が向いているのは、手に職をつけたいと考えている人や、努力や作業をコツコツと継続できる人です。また、将来的に独立して働きたい人も、電気工事士に向いているでしょう。
手に職をつけたいと考えている人
電気工事士は、確かな技術を身につけたい人にとって理想的な職業です。
電気設備の工事・取扱は専門性が求められ、国家資格を取得することで一生使えるスキルを得られます。
電気は社会のインフラとして不可欠であり、景気の影響を受けにくいため、安定した職業と言えます。
努力や作業をコツコツと継続できる人
電気工事士の仕事は、細かい作業を積み重ねることが求められるため、コツコツと努力を続けられる人に向いています。
配線の施工や設備の設置は、一つ一つの工程を丁寧にこなすことが重要であり、慎重な作業が欠かせません。
また、資格取得や技術向上のためには、継続的な学習が必要であり、地道な努力が報われる職業です。
経験を積むことで作業の精度が向上し、より高度な業務に挑戦できるようになります。こうした積み重ねが、電気工事士としての成長につながるのです。
将来独立したい人
電気工事士は、将来独立を考えている人にとって魅力的な職業です。スキルアップをして実務経験を積むことで、独立の道が開けます。
電気設備の設置や保守は社会に不可欠な業務であり、安定した需要があるため、独立後も仕事を得やすいのが特徴です。
また、技術力を磨けば高単価の案件を受注できる可能性があり、収入の向上も期待できます。さらに、独立すれば働き方の自由度が増して、自分のペースで仕事を進めることが可能です。
こうした理由から、電気工事士は独立志向の人に向いている職業と言えるでしょう。
電気工事士のやりがいや達成感とは?

電気工事士の仕事には、技術の習得と社会貢献の両面で大きなやりがいがあります。
例えば、長期間の工事を終えて照明が点灯した瞬間は、努力が形となる達成感を味わえます。また、専門スキルを磨くことで仕事の幅が広がり、成長を実感できるのも魅力の一つです。
さらに、電気は社会の基盤を支える重要なインフラであり、その工事を担うことで人々の生活を支えているという誇りを持てます。
現場では仲間と協力しながら作業を進めるため、チームワークの大切さを学び、人間関係の充実も感じられます。
お客様から感謝の言葉をもらえることも、仕事の励みの一つです。

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その他、営業職から電気工事士になった方や、アパレル販売員からビル管理に転職した方など、多様なバックグラウンドを持つ人々が活躍しています。
電気工事の仕事は、自分で手がけたものに灯りがついた時の達成感や、お客様から直接感謝されることが、大きなやりがいの一つです。
また、近年の電気業界ではSNSを活用したPR活動なども行われており、誰もが挑戦しやすい環境が作られています。
電気工事士の資格や経験は人生を豊かにするツールとなり、キャリアチェンジの可能性も開けるでしょう。

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まとめ
電気工事士の仕事は、肉体労働であり、高所や狭い場所での配線作業により感電や落下といったリスクが伴う、繁忙期が激務などの理由により、ネットの一部では「やめとけ」といったワードを目にします。
しかし、こうした課題を乗り越えれば、手に職をつけて安定した収入を得ることができます。給与も高く安定性のある職業のため、会社選びが重要と言えるでしょう。
職業環境を慎重に判断することが重要で、何社か経験しながら自分に合う会社、職場を見つけることが大切です。